天使の羽根と、野良猫
俺と森田は、帰り道の途中の公園のベンチに
腰掛けた。
森田がスマホをだし、
「なぁ、これ…」
「ああ、これな…」と俺もスマホをだした。
画面には源次郎の連絡先が。
ジジイ…源次郎の話は俺たちを困惑させた。
話は、去年の今頃の夜に遡る。
その日、源次郎が道を歩いていたら、
向かい側から自転車が走ってきた。
自転車に気付いて、道の端に避けるときに
足を捻って転んだ。
いわば、単独事故とでもいうのか。
「足がいたくてな。羽根にくるまって浮いて
帰ろうとしたら、オマエサン達が来て。」
「えっ?ますますわからないんですが」
森田が聞いたが、俺も同じだ。
ジジイの背中の、羽根の仕組みはこうだ。
羽根を広げてバサバサ飛ぶのはもちろん
羽根にくるまっても浮くそうで、
空を移動できる。
くるまっても、広げて飛んでも
羽根を出せば、人の目からは見えなくなる。
ただし、動物や、鳥などからは姿が
見える。会話もできる。
足を捻って立てなくなった源次郎の元に
俺たち2人がきて、救急病院まで付き添ったらしい。
あぁ、そういえば。そんなことあったな。
あの時の爺さんか。
源次郎は、俺と森田それぞれから受け取った
名刺を大切に保管していた。
月日が経ち、昨日の夜中近く、
源次郎が居間でテレビを見ていたら
近所の野良猫のみぃが窓際にやって来た。
「げんさん、助けてあげて。大志さんと
哲哉さん、路地裏で潰れてるの」
ああ、あの時の。行かねば。
源次郎は、羽根を広げて現場へ行った。
酔いつぶれた俺たちを
羽根でくるんで自宅アパートへ運んだ。
って…まっっったく、理解ができない。
天使は、もっとメルヘンなはずだ。
ミカエルだとか。そんな名前だろ!
源次郎ってなんだよ!渋いじゃねえか!
こんな老人なワケねぇだろ。
俺の知ってる天使は違うんだよ!
が、目の前に見える
背中の羽根はくっつけたものではなかった。
生えていたのは間違いないようだ。
試しに引っ張っても取れなかった。
普段は、何もない背中だが
何かの呪文?みたいなのを唱えたら
羽根がフワッとでてくる
引っ込める時も何か呪文みたいなのを
唱える。
野良猫が知らせにくるって何だ?
近所の野良猫みぃは
天界の神様と、地上の天使達のいわば連絡係兼
サポートをする、橋渡し役。
源次郎の天使のお仕事とは、
人間を、人間の人生を幸せにする
お手伝いを目的としたもの。
ただ、地上にいる天使は
人間と同様に歳を重ねていく。
だから、死はある。
その最期の日までに、天使のお仕事を全うし、
天界で待つ神様の元へ。
神様は、天使を天国へ送るか
地獄の門番にするか、決定する。
人間の人生を幸せに導いた分
天国へ行ける可能性が高くなる。
この話だけでも、はてなが沢山で
もう、頭が沸騰しそうだ。
源次郎は
「おたくら2人。ワシと友達になってくれ。
あいほんで連絡先交換しよう。」
3人でiPhoneを出す。
キャバ嬢でも、ネカフェの子でもない
とにかく得体の知らん
ジジイの連絡先が俺と森田のメモリに追加されたのだった。




