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【連作短編043】 国有 全12話 ―AIが国を動かし、国が人を動かす―  作者: マチャオ (Machao)


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第六話 川:何も決まらなかった。何かが、少しだけ動いた。

今回は父と息子が初めて同じ場所に立つ話です。

全十二話完結。最初からお読みでない方は第一話からどうぞ。

 凌が来たのは、昼過ぎだった。


 航はいつものベンチにいた。凌はその隣に座った。どちらも何も言わなかった。川が流れていた。


 しばらくして、凌が缶コーヒーを二本出した。一本を航の隣に置いた。航は少し間を置いてから、手に取った。


 「寒くなったな」と航が言った。


 「うん」と凌が言った。


 それだけだった。


 鳩が一羽来て、二人の足元を歩いた。凌がそれを見た。航も見た。鳩はしばらくうろついてから、飛んでいった。


 「仕事は」と航が聞いた。


 「やってる」と凌が言った。


 「そうか」


 また黙った。川の向こうで、無人のバスが橋を渡っていった。二人ともそれを見た。見送った。


 「ハル、元気か」と凌が言った。


 航は少し考えた。「太った」


 凌が小さく笑った。航は笑わなかったが、缶コーヒーを一口飲んだ。


 「あの電話」と凌が言った。「三か月前の」


 「ああ」


 「出られなかったのか、出なかったのか、どっちでもいいけど」


 航は川を見たまま言った。「出なかった」


 凌は何も言わなかった。


 「お前に心配させたくなかった」と航が続けた。「それだけだ」


 「心配してる」と凌が言った。「今も」


 航は返事をしなかった。缶コーヒーを両手で持った。冷たくなっていた。


 「親父」と凌が言った。「AIの使い方、教えてくれって言っただろ、昔」


 「言った」


 「あれ、まだ有効か」


 航はしばらく黙っていた。川が流れていた。風が南から来ていた。


 「お前が教えてくれ」と航が言った。「俺が聞く」


 凌は何も言わなかった。ただ、川を見た。


 二人はしばらくそこにいた。何も決まらなかった。何かが、少しだけ動いた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

缶コーヒーを渡さずに置いた、その一動作だけで書きたかった話です。

第七話に続きます。

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