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都心のデパートだから人も車もうじゃうじゃいるし、見上げなければてっぺんが見えない建物ばかり。最初に見た時はお祭りみたいだとはしゃいでいたが慣れてしまえば人が多いな、くらいにしか思わなくなった。流れていく景色がビルばかりから、しばらくすると民家ばかりになり、時々木々が生い茂り坂を登っていく。都心の住宅街に比べたら緑が多く一軒一軒の家の敷地が広い。坂を登り切り、車を少し走らせると目的地に着いたのか停まった。車から降りると教会を見上げた。
「ここっすか?」
なかなかに広い敷地らしい。木が所々に生えていて正面から見ると森の中にあるみたいだ。木の外壁は年季がはいっているのか茶色く重厚感がある。特徴的な三角屋根の中央にはステンドグラスが光の角度によって、色を変えて輝いている。正面から見ると三角屋根から煙突のようなものがあり少し背伸びしてみると鐘があった。
住宅街も静かだったが、ここは良い意味で静まり返っている。
「カトリック道守教会です。」
狸塚の言葉に振り返り二人を見てから、教会に視線を戻す。木漏れ日が教会に降り注いでいる。なぜか漂ってくる甘い匂いがなんだか懐かしい気がする。すごくいい。
「なんか、なんか!すごくいいっす!」
温もりがある教会。陽だまりのような温もりがある場所。少し興奮して二人に言うと、狸塚は呆れた顔をした。
「語彙力死んでますねぇ。」
「だってすごくいいんすもん!」
意味が分からずとも嫌味を言われたことは分かったので、良さを伝えるためにほら!と指を差した。
「何回も訪れているところなんて良いもクソもありません。」
いつもより口調が荒い感じがする。教会がそんなに嫌なのか?こんなに良い場所なのに?やっぱり神様に拒否られている?色んな疑問が頭の中に浮かんでくる。
「別に教会が嫌なんて一言も言ってませんよ。」
車の屋根に顔を伏せた狸塚は盛大に息を吐いた。本当に今日はため息が多い。車の中でも十分に一度は吐いていた。教会が嫌じゃないなら何が嫌なんだろう。
「やはり私は車の中で待ってます。」
「ここまできて往生際が悪いぞ。」
未だ屋根から顔を上げない狸塚に慈鳥は頭をくしゃりと撫でた。
「合う合わないは分かるが源のためだ。」
慈鳥の言葉に狸塚は顔を上げると源の顔をじろりと睨んだ。
「恨みますからね、源くん。」
「えぇー。」
逆恨み、ではないか。確かに自分のせいではあるがそれでも恨まれたら不満の声も出てしまう。
「行くぞ、先方がお待ちだ。」
慈鳥は狸塚が持っていたワインが入った紙袋を持ってやると正面の重厚な扉から、ではなく教会の裏手に向かい歩き出す。古紙を力を入れず、でも大切に腕に抱くと小走りで慈鳥を追いかける。時々後ろを振り返りながら狸塚が付いてきていることを確認するのも忘れない。
教会の裏手は思っていたより開けていてなぜか畝があり、支柱には蔦が這い、緑が生い茂っていた。桑の木が数本と、よくよく見てみれば木苺も生えている。たぶん、あれは柿の木だ。
「源、よそ見をするな。」
慈鳥の声に我に返ると誤魔化すように笑い、表とは違う簡素な造りの扉に近づいた。慈鳥は横にあるチャイムを鳴らす。ジーっ!という音が鳴る。もう一度鳴らすが誰かが出てくる気配がない。
「お留守っすかね?」
慈鳥と顔を見合わせた。その時。
「待ってたぜ!お前ら!」
後ろから聞こえた野太い大きな声に振り返ると嫌そうに顔を歪める狸塚の肩に腕を回している熊がいた。




