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平日だから、エレベーターの中は割とスカスカ。だから上がっていく箱の中では二人きりだった。壁に寄りかかり、階数パネルの前に立っている狸塚の背中を見つめた。
慈鳥とは違い、自分と少し一線を引いているな、とは思っていた。たぶん狸塚も一線を引いていることに気がつかせるようにわざと行動している。当たり前に慈鳥も狸塚の態度には気が付いている。けど、何も言わない、言った様子もない。これが大人なんだろうか。表面だけ取り繕って仲良くするふりをしている。
なんか嫌だ。慈鳥は好きだし、狸塚も好きだ。怒られたりすることは多いけど、見放されることはない。なんだかんだ言いつつも手を差し伸べてくれる。
でも、狸塚はよく分からない。時々、慈鳥を怖い顔で見ている。今日の駐車場みたいに。すぐに顔も態度もいつものように戻るから深くは聞けない。でも、何か気づかせようとしてくる。それが何なのか教えてはくれない。
狸塚と慈鳥は長い付き合いだと言っていたし、フランクにやりとりをしていたから仲良しだと思っていた。二人の間に自分の知らない何かがある?仲間外れにされているようで、寂しかった。
「降りますよ。」
こちらを僅かに振り向いた狸塚の横顔。いつも通りの狸塚。だから自分もいつも通りにする。
「はーい。」
間延びした返事をすると狸塚の後に続いてエレベーターを降りる。たぶん、狸塚はこうやってぐるぐる考えていることも分かっているんだろう、自分が思った以上に顔に出てるらしいから。でも、なるべく長くこの三人でいたい。いや、なるべくじゃない。ずっと三人でいたい。いるためには聞いちゃいけないこともあるんだ。
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車に戻ると慈鳥はガラス窓にまだ頭を預けていた。ロックはしていなかったのか、狸塚はカギも取り出さずにドアを開けた。
「戻ったか。」
ドアを開けた音で起きたのか、目を開けてそう声をかけてきた。
「お目覚めですか?」
どこかニヤニヤした顔で運転席に腰掛けた狸塚は身を乗り出し慈鳥を見た。慈鳥は狸塚の言葉に鼻で笑った。
「おかげさまで。」
このやりとりにギスギスした嫌な雰囲気はない。軽口を叩ける、どこかお互いを信頼している口ぶりだ。助手席に乗り込むとシートベルトを締める。
「本当に、気をつけてくださいよ。」
その声に動きを止めてしまった。自分にもわかる、心底心配している声だ。
「わかっている。」
聞き飽きたと言わんばかりにため息を吐く慈鳥の口角は上がっていた。あんなに冷たい目で狸塚は慈鳥を見ていたのに、慈鳥もたぶん気が付いているはずなのに。
狸塚がハンドルを切る。ゆっくりと慎重に進む車。窓の外には白と黒ばかりの車。それを見つめながら思った。本当に大人はよく分からない。




