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エドガーの回顧録  作者: 紡里


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8/9

街へ到着

 夕方になって、街の門に到着した。

 本当なら余裕を持って昼頃に着きたかったが、仕方ない。


 僕たちは出身証明書を見せて、すんなりと門を通ることができた。

「はは、村長の息子か、すごいな」

 そう肩を叩かれたが、わざわざ口に出して言わなくてもよくないか?


 商業ギルドのタグや冒険者ギルドを持っている人たちは、すぐに通される。すいすいと僕たちを追い抜いて入っていく。

 けれど、そういうものを持っていない人たちは、門に留め置かれている。どうするのかと見ていたら、門の外へ追い出されていた。


 さっきちらっと見たが、門の外にはそういう人たち向けの商売もあるみたいだ。

 旅をしてきた僕たちよりも汚い格好で、口に入れて大丈夫か不安になる食べ物を、汚れたままの手でやり取りしている。


 最後の一人が門を潜り、僕たちの方へ歩いてきた。

 見るからに気が弱そうな子で、門番にイチャモンをつけられていたらしい。

「なんか、賄賂を出せって言ってたみたい。言い回しが理解できなくて、困っちゃった。

 他の門番さんが、『村長の息子の連れだ』って耳打ちしたら、通してくれたよ」


 ニコニコしてるけど、それ、駄目だろう。足元を見られて、自力で解決できていないってことだぞ。

 だけど、この先は自分で対処する方法を編み出していくことだろう。

 ……きっと、大丈夫だ。


「ここで解散だな。みんなに輝かしい未来がありますように」

 僕はそう締めくくった。


 すぐに宿を探しに動ける子と、おろおろしている子がいる。

 手を貸すかどうか迷ったが、僕も自分の宿を決めなければならない。

 心の中で「頑張れ」と応援しながら、一歩を踏み出した。


 僕はまず、領都への乗合馬車の時間を確認しようと思った。

 それによって、朝何時に起きるかが変わってくる。


 時間に余裕があったら宿を決めて、そこに荷物を置いていけるんだけどな。

 急がないと、馬車の切符売り場が閉まってしまう。

 早足で向かったが、遅かった。


 軽く息が上がっているので、息を整える。

 仕方ない。この後の流れは、宿探し、それから夕飯。

 気持ちを入れ換えて、宿屋街の方へ向かった。


 夕食を取りながら、みんなは大丈夫だろうかとふと考えた。

 自分に余裕ができて、ようやく――だ。

 温かいスープとパン。

 それが体に染みて、緊張が解けていく。


 僕は父に連れられて何度か街に来ていたが、初めて来る子もいるんだっけ。

 これ、十二歳の子どもだけ街へ送り出すのは、無理なんじゃないか?

 多くの親が子どもを街に出したがらないのは、こういう心配があるからなのかもしれない。


 街へ出て村に一度も戻ってこない人たちの中には、街へ辿り着けていない人もいるんじゃないかな。

 冒険者になった人はともかく、職人や商人は護衛をつけないとあの道のりを歩けないだろう。


 ということは、僕も身を守る術を磨いておかないと、一年後に村に帰るのが大変だぞ。

 アーデンの剣を見てから、実力が違いすぎてやる気が失せていたんだけど。


 そうだ。明日は紛失した三人分の出身証明書のことを報告しないと。

 どこに言いに行けばいいんだろう?


 スプーンが手から滑り落ちて、カランと音を立てた。

 いけない。眠気に襲われている。

 昨日は交代で見張り番をしていたから、睡眠時間が短かったな。


 僕は急いで残りの食事を片付けた。


 その後四日ぶりに風呂に入り、ベッドで眠れることに感謝した。


余談ですが、この時の反省を得て、後年エドガーは引率を始めます。

https://ncode.syosetu.com/n1605le/3

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