再び野宿
その日は一生懸命に歩いたが、目標の空き地まで到達することはできなかった。
「これ以上歩くのは危ないな」
エドガーはそう判断した。
息が上がって話せない者も、足を引きずって苦しそうな者もいる。
「え、ここで泊まるの?」
沼が近く、少し湿った場所だ。
あまり横になりたい場所ではないだろう。
「ここなら火を焚いても大丈夫だろう。
沼の水は煮沸して漉すしかない。最低限の水分補給に留めた方がいい。
だけど、水がないよりはましだ」
何と言っても水を確保できないと、話にならない。
目的地まで行けば、近くに川があったんだが。
文句を言いたくても、他にいい案はない。
それぞれが荷物を下ろして、野宿の準備を始めた。
湿った場所を避けると、石や固い草が邪魔になる。体を休めることはできても、体力が回復するのは難しそうだ。
初日のようにみんなで煮炊きをすることなく、それぞれが持参した保存食を食べる。
どうしても、たくさん持って来た者とそうでない者の差が出てしまう。
中央には、沼の水を沸かすための焚き火がある。枯れ木を探しても若干しっとりとしていて、煙が多く出てしまう。
食べようと口を開けたところに煙が入り、むせることもあった。
正直、あまり、いい雰囲気ではなかった。
旅立つ前は、あんなに楽しみにしていたのにな。
食後に、一人の少女が歌を歌い出した。
誰かがそれに手拍子を合わせる。一緒に口ずさむ者も出てきた。
ああ、焚き火を囲んで、笑い合えたらそれでいいじゃないか。
がさりと草が揺れ、心臓が飛び跳ねる。
アーデンが剣を構え、それぞれが棒やナイフを構えた。
全員で草むらを見つめ、息を潜めた。
アーデンが「後ろも警戒」と短く命じる。
僕はみんなと逆方向を向いた。
張り詰めた空気の中、喉が乾いてきた。
相手にもこの緊張は伝わってしまうのではないか?
しばらくするとがささっと遠ざかる音がして、みんながほっとした瞬間に笑いが起きる。
「び、びっくりした」
素直な子がそう漏らす。
「あはは。気が弱いな」
と、先ほどまで震えていた子が、偉そうに言う。
不意に今朝の光景が脳裏に浮かび、今、生きているということを噛みしめた。
「さて、見張りの順番を決めよう」
初日はうっかりみんなで寝てしまったが、モンスターが出ることを想定しておかなければならない。
見張りの時間帯を三つに分けた。
「線香が一本燃え尽きたら、交代の合図だ。これなら、みんな平等に眠れるだろう」
「なんで線香なんか持ってるんだよ」
眠たそうな少年が、あくびをかみ殺した。
「日が沈むと時間を測る手段がないだろ。村祭りでもこれで時間を計ってるんだよ」
時計なんて高級品は持ち歩けない。
「なるほどねぇ。じゃあ、お先に」
見張りの順番ではない者たちは、寝る準備に入った。
アーデンは剣を抱えたまま、立て膝に腕を乗せ「お前がいると便利だな」と笑っている。
もしかしたら、初日、アーデンが警戒してくれていたのかもしれないと気付いた。




