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エドガーの回顧録  作者: 紡里


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7/9

再び野宿

 その日は一生懸命に歩いたが、目標の空き地まで到達することはできなかった。

「これ以上歩くのは危ないな」

 エドガーはそう判断した。


 息が上がって話せない者も、足を引きずって苦しそうな者もいる。

「え、ここで泊まるの?」

 沼が近く、少し湿った場所だ。

 あまり横になりたい場所ではないだろう。


「ここなら火を焚いても大丈夫だろう。

 沼の水は煮沸して漉すしかない。最低限の水分補給に留めた方がいい。

 だけど、水がないよりはましだ」

 何と言っても水を確保できないと、話にならない。


 目的地まで行けば、近くに川があったんだが。

 文句を言いたくても、他にいい案はない。

 それぞれが荷物を下ろして、野宿の準備を始めた。

 湿った場所を避けると、石や固い草が邪魔になる。体を休めることはできても、体力が回復するのは難しそうだ。


 初日のようにみんなで煮炊きをすることなく、それぞれが持参した保存食を食べる。

 どうしても、たくさん持って来た者とそうでない者の差が出てしまう。

 中央には、沼の水を沸かすための焚き火がある。枯れ木を探しても若干しっとりとしていて、煙が多く出てしまう。

 食べようと口を開けたところに煙が入り、むせることもあった。


 正直、あまり、いい雰囲気ではなかった。


 旅立つ前は、あんなに楽しみにしていたのにな。


 食後に、一人の少女が歌を歌い出した。

 誰かがそれに手拍子を合わせる。一緒に口ずさむ者も出てきた。

 ああ、焚き火を囲んで、笑い合えたらそれでいいじゃないか。


 がさりと草が揺れ、心臓が飛び跳ねる。

 アーデンが剣を構え、それぞれが棒やナイフを構えた。

 全員で草むらを見つめ、息を潜めた。

 アーデンが「後ろも警戒」と短く命じる。

 僕はみんなと逆方向を向いた。


 張り詰めた空気の中、喉が乾いてきた。

 相手にもこの緊張は伝わってしまうのではないか?

 しばらくするとがささっと遠ざかる音がして、みんながほっとした瞬間に笑いが起きる。


「び、びっくりした」

 素直な子がそう漏らす。

「あはは。気が弱いな」

 と、先ほどまで震えていた子が、偉そうに言う。


 不意に今朝の光景が脳裏に浮かび、今、生きているということを噛みしめた。



「さて、見張りの順番を決めよう」

 初日はうっかりみんなで寝てしまったが、モンスターが出ることを想定しておかなければならない。

 見張りの時間帯を三つに分けた。

「線香が一本燃え尽きたら、交代の合図だ。これなら、みんな平等に眠れるだろう」


「なんで線香なんか持ってるんだよ」

 眠たそうな少年が、あくびをかみ殺した。

「日が沈むと時間を測る手段がないだろ。村祭りでもこれで時間を計ってるんだよ」

 時計なんて高級品は持ち歩けない。


「なるほどねぇ。じゃあ、お先に」

 見張りの順番ではない者たちは、寝る準備に入った。


 アーデンは剣を抱えたまま、立て膝に腕を乗せ「お前がいると便利だな」と笑っている。

 もしかしたら、初日、アーデンが警戒してくれていたのかもしれないと気付いた。


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