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エドガーの回顧録  作者: 紡里


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6/9

公平ということ

 草むらに散らばった遺品を集め、分担して運ぶことにした。

「水場があったら、洗おう。できるだけ血には触るなよ。病気が移ることもあるからな」

 アーデンがてきぱきと指示を出す。


 本当なら、もっと先まで進んでいるはずだった。予定が狂った。

 あいつらが余計なことをせずに大人しくしていれば……。

 額の汗を拭いながら、そんなことを考えてしまった。

 いけない。生死不明の人たちに向ける言葉じゃないだろ。


「おい、エドガー!」

 アーデンに背中を叩かれた。

「びっくりするじゃないか」

「この先の予定を組み立て直せるのはお前だけだろ。頼りにしてるんだから、しっかりしてくれ」


 ちらっと、アーデンがいれば僕は要らないじゃないかと思ったことは、内緒だ。

「そうだな」

 僕は自分の太ももを軽く叩いて、こっそり気合いを入れた。


「今日は野宿の予定なんだ。一昨日のように、他の人が野営する空き地を使うためには、昨日より少し早く歩いてほしい」

 三日目ともなれば、誰だって足が重くなる。無理を言っているのはわかっている。


「間に合わなかったら、火が炊けないくらいだろ。気楽に行こうぜ」

 アーデンは気楽に言った。

 これが、弱音を吐いていた子たちのやる気に、火をつけた。

「固い保存食だけじゃ、嫌だわ」


 僕が先頭に立ち、アーデンが最後尾についてくれた。打ち合わせしたわけじゃないんだけど……ありがたい。


 途中に川があったので、昼休憩を取ることにした。

 足にできたマメが潰れてしまった子がいる。傷薬になる草を見つけ、アーデンが応急処置を教えてやった。

 ここで、準備の差が現れた。

 ハンカチやちょうどいい布を持っている子はそれを巻いたが、そのようなものが荷物に入っていない子もいるのだ。


 どうするか。自己責任ということで手を出さないか、これ以上進む速さを落とさないために自分の持ち物を分けるか。


「誰か、予備の布を持っていないか?」

 僕はみんなを見回した。厳選された荷物の中から、人に譲ってあげるのは簡単なことじゃない。

「こいつ、たくさん持ってるぜ」

「持ってるけど、なんで用意してきたあたしが損しなきゃなのよ」


「それも一理ある。

 でも今は、歩く速度が遅くなると、皆の安全が脅かされるかもしれないんだ」

 布を持っている子に説明すると、唇を噛んで小さくうなずいてくれた。


「街に着いたら、洗って返すか新品を返すという約束ができるか?」

 使える布を持っていない子に質問する。


「ええ? そこは、くれてもいいんじゃない?」

 肩をすくめて、甘えるような仕草をする。


 そういうことを言うのかと、正直、がっかりした。

「返す気がないなら、誰も貸してくれない。当たり前だろ」


 そういえば、父がこの子の親のもめ事を仲裁していたことがあったな。あれも、「貸しただけだ」、「もらったものだ」と双方の言い分が違って、大変だった。


「じゃあ、この話は終わりだ。出発するぞ」

 これから街で、親のいない生活を始めるんだ。甘えれば何とかしてくれるという考えは、もう通じない。


「え、ちょっと、なんで……」

 そう言いながら、慌てて靴を履きだした。マメに当てていた薬草が落ちる。

「あっ」

 靴の中に草の汁がつき、顔をしかめている。


 だけど、よかった。

 座り込んで泣き出したりしないだけ、安心できる。


 一度話し合いの場を設けた。そこで折り合えないなら、無理強いはしない。


 できるだけ公平にしたいとは思っている。

 だけど、色んな考えの人がいるんだ。

 強引に自分の思い通りにしようとする者に、引きずられたくない。

 僕は、そこで線を引くことにした。


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