公平ということ
草むらに散らばった遺品を集め、分担して運ぶことにした。
「水場があったら、洗おう。できるだけ血には触るなよ。病気が移ることもあるからな」
アーデンがてきぱきと指示を出す。
本当なら、もっと先まで進んでいるはずだった。予定が狂った。
あいつらが余計なことをせずに大人しくしていれば……。
額の汗を拭いながら、そんなことを考えてしまった。
いけない。生死不明の人たちに向ける言葉じゃないだろ。
「おい、エドガー!」
アーデンに背中を叩かれた。
「びっくりするじゃないか」
「この先の予定を組み立て直せるのはお前だけだろ。頼りにしてるんだから、しっかりしてくれ」
ちらっと、アーデンがいれば僕は要らないじゃないかと思ったことは、内緒だ。
「そうだな」
僕は自分の太ももを軽く叩いて、こっそり気合いを入れた。
「今日は野宿の予定なんだ。一昨日のように、他の人が野営する空き地を使うためには、昨日より少し早く歩いてほしい」
三日目ともなれば、誰だって足が重くなる。無理を言っているのはわかっている。
「間に合わなかったら、火が炊けないくらいだろ。気楽に行こうぜ」
アーデンは気楽に言った。
これが、弱音を吐いていた子たちのやる気に、火をつけた。
「固い保存食だけじゃ、嫌だわ」
僕が先頭に立ち、アーデンが最後尾についてくれた。打ち合わせしたわけじゃないんだけど……ありがたい。
途中に川があったので、昼休憩を取ることにした。
足にできたマメが潰れてしまった子がいる。傷薬になる草を見つけ、アーデンが応急処置を教えてやった。
ここで、準備の差が現れた。
ハンカチやちょうどいい布を持っている子はそれを巻いたが、そのようなものが荷物に入っていない子もいるのだ。
どうするか。自己責任ということで手を出さないか、これ以上進む速さを落とさないために自分の持ち物を分けるか。
「誰か、予備の布を持っていないか?」
僕はみんなを見回した。厳選された荷物の中から、人に譲ってあげるのは簡単なことじゃない。
「こいつ、たくさん持ってるぜ」
「持ってるけど、なんで用意してきたあたしが損しなきゃなのよ」
「それも一理ある。
でも今は、歩く速度が遅くなると、皆の安全が脅かされるかもしれないんだ」
布を持っている子に説明すると、唇を噛んで小さくうなずいてくれた。
「街に着いたら、洗って返すか新品を返すという約束ができるか?」
使える布を持っていない子に質問する。
「ええ? そこは、くれてもいいんじゃない?」
肩をすくめて、甘えるような仕草をする。
そういうことを言うのかと、正直、がっかりした。
「返す気がないなら、誰も貸してくれない。当たり前だろ」
そういえば、父がこの子の親のもめ事を仲裁していたことがあったな。あれも、「貸しただけだ」、「もらったものだ」と双方の言い分が違って、大変だった。
「じゃあ、この話は終わりだ。出発するぞ」
これから街で、親のいない生活を始めるんだ。甘えれば何とかしてくれるという考えは、もう通じない。
「え、ちょっと、なんで……」
そう言いながら、慌てて靴を履きだした。マメに当てていた薬草が落ちる。
「あっ」
靴の中に草の汁がつき、顔をしかめている。
だけど、よかった。
座り込んで泣き出したりしないだけ、安心できる。
一度話し合いの場を設けた。そこで折り合えないなら、無理強いはしない。
できるだけ公平にしたいとは思っている。
だけど、色んな考えの人がいるんだ。
強引に自分の思い通りにしようとする者に、引きずられたくない。
僕は、そこで線を引くことにした。




