現実
残酷な臭わせ描写があります。
朝日が昇った。
村の広場で小さな焚き火をさせてもらい、お湯を沸かす。
簡単な食事を済ませ、それぞれが自分の荷物を背負う。
村長にお礼を言って、入り口から出た。
あの三人は起きているだろうか。少しは反省したかな。まだ寝ているとしたら、今度こそ、迷わずに置いていくぞ。
そんな気持ちで周囲を見回すが、それらしき人影がない。
「あいつら、先に進んだのかな?」
例年だと、数人で集団を作って街へ向かう。僕たちと気が合わなければ、別行動で先に行っても問題はないのだ。
「え、ちょっと、何あれ?」
仲間の一人が、道から外れた草むらを指差した。
その先に、散らばった荷物が見える。赤茶色の血痕のようなものが、地面と草についていた。
踏まれた下草に、引きずられたような跡。それが森の方へ続いている。
これは……モンスターにやられたのか?
思いもしなかった光景に、僕は立ちすくんでしまった。
アーデンはそんな僕をちらりと見てから、荷物を一つ拾い上げた。
「拾っていくか。最初に里帰りする奴が、村に持って帰ってやろうぜ」
「あ、ああ……。そうだな」
アーデンに倣って、何人かが拾い始めた。服や食器、ナイフや薬草など新生活のための品々だ。
「あたしは嫌。触りたくもない。――天罰だよ」
昨日、襲われかけた女の子は、村の高い塀のそばまで下がって座り込んだ。
「ごめん。僕、血を見るの駄目……」
自警団に入りたくないから街に出ると言っていた男の子も、塀へ向かった。
そんな。死んでしまったのか……?
追い出した僕のせいなのか?
僕は拾うこともできず、塀で待機する女の子を慰めることもできず、呆然としていた。
「なんだよ。あいつらが自分で選んだ結果だぞ」
アーデンは左腕に拾った物を抱えたまま、僕に話しかけてきた。
「自警団でも、自分の実力を過大評価する奴を見捨てることがある。
強いやつがそいつを庇って死んじまったら、村にいる戦えない奴らの命を危険に晒す。
――俺は、自警団で一番最初にそれを教わった」
そう言うアーデンの眉間にはしわが寄っている。それでいいと納得しているわけではないが、必要なことだと飲み込んでいる顔だ。
いつの間にか、こいつは大人になっていた。
ああ、そうか。アーデンはただ強いだけじゃない。
もう、覚悟が決まっているんだ。
「村の出身証明書がねぇな」
アーデンがぽつりとこぼす。
「これでモンスターか野盗かわからなくなったぞ」
僕たちの間を、風が通り抜けた。
昨日の自分の決断の重さが、改めて肩にずしりと乗った気がする。
「ハロルの街に着いたら、門番に説明するよ」
彼らの出身証明書を使って罪人が街に入り込んだら、村長の責任問題になりかねない。
それは、村長の跡継ぎとしての僕の役目だろう。




