第四十五話 刃、誘惑、幻覚・・バトル
「ん・・・」
私は突然目を覚まして起きた。
上半身を起こし、部屋を見渡す。
まだシンジは寝ていた。
寝顔はあいにく見れなかったが。
私は時計を見た。
6時・・か。
ずいぶん早く起きたなぁー
私はベットから降りてバトルの準備をし始めた。
その前に髪をとかしたりして身だしなみを整えたが・・。
ちょうど7時になるところでシンジが起きた。
「・・・。早いな。」
シンジはベットから降りて私に呟いた。
「あ、シンジ、起きたんだ。おはよう。」
私はシンジに笑いかけた。
魔力も体力もほぼ完全に回復している。
体調も絶好調とまでいかなくても割りといいほうである。
怪我を除けば。
「あぁ」
シンジは早速、身支度を整えだした。
そして、8時になったころ、朝食をとりに食堂へ向かった。
「術士・・なのか?」
向かう途中、珍しくシンジから話しかけてきた。
「あ、そういえば、シンジには言ってなかったね。
そうだよ、私術士なの。
今まで使ってきた能力を制御するためにといろいろ学ばされて・・
それでなったんだよ。」
私はシンジに説明した。
能力を制御もあったけど学ばされたのはそれだけじゃなかった。
自分の身は自分で守る
それが目的でいろいろ学ばされた。
剣技に弓、護身術として体を動かすことをいろいろ。
魔術も学んだが私には向かない。
というかただ単に体が拒絶するだけの話なんだけど。
「・・・」
シンジは何も言わない。
私もそれ以上しゃべることなく食堂へと向かった。
食堂では特に何もなかった。
知り合いに合うことも食べることで支障が起きたことも何一つなかった。
時間は刻々と過ぎていった。
そしてバトルが始まった。
「ユーライ、ステージ、オン!」
「レル、バトルスタンバイ!」
「ムルマ、出番ですわ!」
「ジグル、お前に決めた!」
四人同時に精霊を呼び出した。
私はゴースト属性のユーライを。
シンジは刃属性のレルを。
マリアは夢属性のムルマを。
サトルは雷影属性のジグルを。
属性はさまざまで相性で言えば、互角だろう。
マリア・・バトルもアピールに入れるわけ?
私はマリアにそう聞きたかった。
マリアはたぶん、シンジに気を引かせたいのだと思う、
夢属性のムルマを使って。
文字通り夢を司る精霊だから、
たぶんシンジかレルに技を吹っかけてくるだろう。
でもたぶん大丈夫、シンジはそんなにやわじゃないから。
「ジグル、ボルト!!」
サトルの声がバトルの始まりの合図だった。
ビリ~~!!
小さい雷の光線が襲い掛かってきた。
「ユーライ、よけて」
「刃で返せ。」
私とシンジの声が重なる。
ユーライの方へ来た雷はあっさり避けることが可能だった。
だが、レルのほうはユーライのほうへ来た雷よりも数が多く威力が大きい。
しかし、レルの刃でそれはむなしく消えた。
それで終わったかと思うと、ユーライの避けた雷がまた襲い掛かってきた。
ミサイル式?
「ユーライ、ゴッドソウル!!」
私はユーライに命じた。
ユーライは襲い掛かってきた雷を自らが作り出した泡に入るよう仕向けた。
ビリリ・・・チャポポポン
「ユーライ、そのまま、投げつけて」
私はそのまま、命じた。
ユーライは、精霊二体に向かってそれを投げつけた。
ヒュゥー
「ムルマ、こんなもの、消し去りなさい!」
マリアが唐突に叫んだ。
ムルマは左腕で迷わずそれをなぎ払った。
ズサッー
それは一瞬にして消え去った。
「どうです?私のムルマちゃんはすごいでしょう?」
マリアは言った。
それ私に言ってるの?
それともシンジ?
「レル、ジグルにソードレイル!!」
シンジはそれを無視し、命じた。
ウ”ィン
レルは右腕を刃と化し、攻撃しに行った。
「そうわさせませんわよ、シンジ様っ。
ムルマ、お誘い!!」
マリアがそれを割って入るようにムルマに命じた。
「ユーライ、ゴッドセーブス!」
そこに私が命じた。
レルの行く手を阻むように
立ちふさがったムルマに対してそこに割って入ったユーライ。
ムルマの出した技をユーライは受けた。
その隙にレルはジグルに向かって切り刻みにいった。
(ユーライ、聞こえる!?)
心の中で語りかける私。
(くくっ。聞こえるぜ。こいつ、面白い技を出すぜ。
思わずはまりそうだったが。)
聞こえたのはのんきに笑うユーライ。
「ユーライ、誘い返し!!」
私は思い切って叫んだ。
シンジもそのことに目を見開くが
シンジもそれどころではないことを悟っている。
「レル、風炎だ!サトルをやれ!」
シンジは冷静に指示を飛ばす。
ユーライはムルマに暗示をかけるように手をかざした。
ホワン・・
ムルマの瞳に宿るものが消えた。
どこかを呆然と見るようなうつろな目をしたのだ。
「なんですって!ムルマッ、しっかりして頂戴!!」
マリアが悲痛な叫びを上げた。
もっと・・叫んで、マリア。
くすっ。私にえらそうに言うマリアが悲痛な叫びを・・。
聞いてるともっと嫌がらせをやりたくなっちゃう。
私は心の高ぶりを解放した。
「シンジ、サトルのほうは任せたよ。」
「!・・あぁ」
シンジの声を聞いて私はマリアのほうへ走り出した。
マリアをサトルを打ち負かしたい!
その思いが私の力量を上げた。
洞察力、理解力、身体能力・・・それらが魔力、体力を代償に活性化した。
活性化された力は私の体を輝かせた。
「!!」
マリアが私に気づいた。
でも遅い。
私の振り上げた蹴りがわずかにマリアの脚を直撃しマリアを転ばせた。
ガ”ガッ!!・・グイッ!!
「マリア、私はあなたに負けない」
私は蹴った瞬間マリアに聞こえるように言った。
「っ!?」
マリアは大きく目を見開いて私を見ていた。
マリアが転んで地面につく前に私は風でマリアを吹き飛ばした。
一方その頃、
レルは炎の刃でジグルを圧倒し風でサトルをなぎ払った。
ブォウ”ゥウ”・・・ビュウウゥウ!!!!
サトルはたいした抵抗もできずに吹き飛ばされた。
二人は立ち上がった。
「レル、風雷波!!」
「ユーライ、幻覚!!」
シンジと私の声が同時につむぎだされた。
その二つに二人は襲われた。
ビリッシュシュッ!!ブゥウォゥ””!!
ウ”ォン!!
雷はわざとサトルたちの隣を過ぎ去り、
風で二人は幻覚のせいか抵抗なくバトルゾーン外まで吹き飛ばされた。
「勝者、ルミル選手、シンジ選手ペアです!!」
審判者が声を張り上げて下した。
これで、マリアたちとの試合が終わった。
きっと今もマリアたちは苦しんでいると思う。
幻覚が予想以上にひどいものだと分かっていたから。
ユーライが生み出した幻覚はリングを通して伝わってきた。
おそらくレルの攻撃がなくとも
サトルたちを負かすことなんて楽勝だったかもしれない。
それほどまでにひどいものだった。
私がそう望んだのだから仕方がないけど。
だから私は気絶したマリアが医務室に連れて行かれると同時にひざを突いた。
視界には気にもたれて顔をゆがめるサトルと私に近づくシンジの姿。
サトルはすごいと思う。
リングを共有している私でも幻覚の影響が流れ込んでくるのに
気を失ってすらいない。
サトルはそのまま、スタッフに連れて行かれた。
意識はあったがやはり体はそうもいかなかったらしい。
「おいっ」
耳元でシンジの声が聞こえた。
私は幻覚の影響で視界がかすんでいた。
それと吐き気もあった。
「くくくっ。お前が望んだんだろう。
それで今苦しむなんてお前、自業自得だぞ。くくっ」
ユーライが私の傍で呟く。
「ユーライは・・
私に影響することを躊躇っていなかったからちょうどよかったんだよ・・」
私は吐き気がするのどを押さえながら呟いた。
「くくっ。どこまでも自分を犠牲にする奴だな、お前は。
自分をいたわれよ、少しは。じゃあな」
ユーライは最後にくくッと笑ってからリングに戻った。
「・・・」
シンジは黙ったまま私を見下ろしていた。
やばいな・・
体力も魔力も残ってないや・・
これじゃあ、しばらく動けない・・
私はそう考えながらのどを押さえ、
視界がかすむ中ひざをついて体を支えていた。
「お前・・動けないのか?」
「・・・」
シンジの心配そうな問いに私は何も言えない。
「お前から何も感じない」
シンジはそう言った。
何も感じないと言うことは
魔力と力の源が感じられないってことを言っているんだと思う。
シンジは・・気配や相手の力量を観察できるんだよねぇ・・
「・・・」
私はとりあえず何も言わなかった。
と言うよりいえないのかな。
言いたくても声に出す力がなくなっていた。
長いようですごく短かったバトルだったが、
魔力と体力を代償にした力の反動がそうさせているのだろう。
ううっ
吐き気がして気持ちが悪かった。
視界もよりいっそうかすんで見えた。
そのときだった、ふわりと体が浮いたのは。
「・・・・」
「!」
私は声に出せず、
目を見開いてぼんやりと映るシンジを見上げることしかできなかった。
シンジは私を抱き上げたのだった。
「またお前は無茶をした。
お前、見えていないだろ・・」
シンジが私をにらむように見て言う。
「・・・」
私はなんて言っていいか分からなかった。
ただ、正直言うことだけはしたくなかった。
「・・」
シンジは何も言わず、バトルゾーンから出た。
私はシンジに抱き上げられていることが申し訳なくて瞬間移動したくなった。
「しゅ・・ん・・か・・ん・・い・・ど・・・う・・」
やっとのことで声を絞り出した私。
シンジは目を見開いて私を見た。
瞬間移動!!
私は心の中で呟いて瞬間移動した。
シュパーン
ついたのは部屋の中。
シンジはぐったりしている私をにらんだ。
なぜした?
言葉に出されたわけじゃないけどそういわれた気がした。
シンジの唇がゆっくり動いた。
「ぉ・・ぇ・・・ぃ・・・ぅ・・・・・・・?」
でも私にはさっぱり聞き取れなかった。
あーやばい・・・耳までおかしくなった。
仕方ないから私はシンジの心を読み取ろうとした。
「お前・・今、どうやってした?」
シンジはさっきそういいたかったことだけ分かった。
どうやら私は・・お前の お、え と今の い とどうしての う しか聞き取れていなかったようだ。
せっかくのバトルが短くなってしまいましたが、
何かといい案が浮かばず・・・申し訳ありません。
次回はもっと頑張りますのでよろしくお願いします。




