第四十四話 稀な力・・・導かれる未来
私はシンジに力なく笑った後
自分に防御の術をかけながら渦へと近づいた。
渦の中心で浮かび上がって力を放出させるリュウ君がいる。
このままじゃ・・リュウ君が・・ウィーミア、力を貸して。
私はウィーミアのリングにささやいた。
すると、ウィーミアが現れた。
「お呼びですか?」
「うん。お願い力を貸して、ウィーミア。」
「はい。」
私の言葉にウィーミアは頷いた。
「ウィーミア、鎮まりの旋律」
私はウィーミアに命じた。
そして私はリュウ君の目の前まで近づいていった。
風を操り、天寿の力を使って。
ウィーミアの旋律は渦の力を薄れさせていったが大きな効力は発揮されていない。
それはリュウ君が暴走しているからだ。
心が何もかも拒絶しているからだ。
私は渦の中に思い切って入った。
ズウォォオオオオ!!
耳元で渦の巻く音が鳴る。
私は頭の中で、
「リュウ君、聞こえる?
ルミルだよ。
私はリュウ君の気持ちが分かる。
だから、リュウ君、怒りを静めて。
力を制御して。」
と、リュウ君に伝えた。
リュウ君を私は抱きしめた。
私の体には圧迫感があった。
とてつもなく大きい力が私までをも飲み込もうとしているのが分かる。
でも・・私は天寿の力の継承者。
「・・ルミルなの?
・・ルミル、僕どうなったの?
僕自分で力を止められないよっ。
どうしたらいい?どうしたらっぼくはっ・・・」
リュウ君の叫びが私の頭に響いてくる。
リュウ君は混乱していた。
「リュウ君、落ち着いて?
落ち着いて、私の精霊が奏でる旋律を聴いて。
きっと、リュウ君の力は鎮まるから、ね?
大丈夫。
リュウ君は遊びたかっただけなんでしょう?
こんな力を持って、親に蔑まされて・・
何も相手にされなくて・・理解してもらえなくて・・
だから他とは違う私を見つけて頼ってくれたのでしょう?」
私は落ち着いた物腰でゆっくりと伝えた。
「うん。
僕、ルミルなら分かってくれるって思ってた。
ルミルは僕を裏切らなかった。
ありがとう。
僕聞くよ。
・・・すごくきれいな曲・・聞いていて気持ちいい・・」
リュウ君は頷いて旋律に聞き入っていた。
そして私はリュウ君の渦を私は風と天寿の力を使って消し去った。
そしてリュウ君を抱えて、地に降り立つ。
「リュウ君、大丈夫?」
私は聞いてみた。
「うん。
ルミルは・・分かってたんだね。
お母さんと離れたのは口実でほんとは遊びたかっただけなんだって。」
リュウ君は言った。
なんとなくそうだろうなと感づいていた。
幼い男の子にしては割と落ち着いてたし口調こそ子供らしかったけど
どこかしら賢いなぁと思ったから。
「うーん、なんとなくね。
私もリュウ君と同じ目にあったから分かっただけだよ。
リュウ君、目指すなら、術士と精霊使いが良いんじゃないかな?」
私はリュウ君に勧めてみた。
「おいっ、何があったんだ?」
リュウ君が何かを言おうとしたとき、シンジが割って入ってきた。
「さっき言ったでしょ、暴走を止めるって。
その文字通り止めただけ。
リュウ君は何も悪くないよ。」
私はそうシンジに告げた。
「・・そうか」
シンジはほっとしたかのように呟いた。
よほど心配してたのかもしれない。
私はそう思った。
そしてゲーセンの周りはなにやら騒がしくなった。
「あ、リュウ君、さっき言った術士のことね、
いまから、術士が使う術の一つを見せてあげるよ。」
「ほんと?」
「もちろん。」
リュウ君の言葉に私は頷いて呪文を唱えだした。
範囲が広いからその分、詠唱は長い。
私は詠唱し終わってそれを解き放った。
光がゲーセン全体を包んだ。
ゲーセンに沸き起こった野次馬ともども今、リュウ君が起こした渦の記憶全てを消し去り爆発事故という記憶を植えつけた。
そしてゲーセンから光は失った。
私はウィーミアをリングに戻した。
「いまのはね、記憶を自由自在に操る術なの。
リュウ君の能力はきっと、自分のものにできるよ。」
私の言葉に
「ルミルはすごいや。
僕も頑張るよ。」
と、リュウ君は笑顔で頷いた。
「リュウー!!」
すると、どこからか私たちのところに一人の女性が叫び、この場に来た。
「おかあさん・・」
リュウ君の顔が一気に曇った。
「リュウ!どこに行ってたのよ。まったく心配させないで頂戴。
あなたがいないとこっちだって迷惑なんだから」
その女性はリュウ君の母親だった。
わぁー昔の母親とそっくり。嫌だーこんな人。
私は心の中でドン引きした。
「リュウ君の母親ですね?
リュウ君は不思議な力をお持ちのようです。
そして今起こったこの事故もリュウ君の巻き起こしたものです。
ですが、これはあなたのせいでもあるんです。」
私は淡々と母親に告げた。
この際だ、はっきり言ってあげよう。
自分が母にいえなかった分と、リュウ君の未来のためにも。
「なんですって!?私のせいといいましたか??」
リュウ君の母親は私とキッと睨んだ
「はい、いいました。
リュウ君はまだ幼いです。
幼い子が冷たくあしらわれるとどう思いになられるかご存知ですか?
幼い子は純粋なんです。
いわれた言葉を直球に受け取ってしまいます。
だから、迷惑と言われれば、悲しみますし、辛い思いもするんです。」
私はまっすぐ、母親を見つめて言った。
「あなたは何が言いたいの?」
母親は私に問う。
「私がいいたいのはそのせいだといっているんですよ。
幼い子が悲しい思いや辛い思いは幼い子はどこにしまうと思っていますか?
幼い子は我慢なんてできません。
ですが、リュウ君は年に似合わない理解力があります。
だからその思いを心にためてしまうんです。
その結果、このような大惨事になってしまったのです。
少しはリュウ君のことに気配ってください。」
私はリュウ君の母親を責めた。
「なぜ、あなたにそんなことを言われなければならないの?
確かにあなたもリュウと同じような力を持っているようだけれど。」
母親は不思議そうに聞く。
「私もリュウ君と同じような心境に立たされました。
私の母親は私を好んでいないと思います。
もっとも、私もそんな母親を好むことなんてなかったけれど。
でも、あることがきっかけでそういう関係は断ち切れて
一応、もうこういうことで辛い目にはあわなかったけれど。」
私は息せき切って話を続けた。
「私は自分以外でそういうことが起こるのが嫌いなんです。
子供は親からの影響をとても受けるんです。
親に子供は導かれているんですよ。
あなたはもし、
このまま、リュウ君に辛い思いをさせ続けてうらまれたらどうしますか?」
私は聞いた。
これが、この人が一番悩むものだと思ったから。
「そ、それは・・」
母親は押し黙った。
「リュウ君が人間が持つ不思議で稀な力をあなたは忌み嫌っていますよね。
だから八つ当たりしているんでしょう?
そんな風に八つ当たりされたら、リュウ君だってあなたを恨みますよ?
恨まれたらどうなると思います?
あなた、リュウ君のその力によって殺されかねませんよ?」
「!!」
私の言葉に目を見開く母親。
それはシンジやリュウ君も同じだった。
「それで殺されたら文句なんていえませんよねぇ?
そしたらその後どうなると思います?
その力で世界中混乱しますよ?
そしたら全部あなたのせいになっちゃいますよ。
今の事件ですむ問題じゃありません。
まぁ、今のは最も悪い未来への導かれた過程でしたけど。」
「・・・」
母親は押し黙った。
「ですから、さっき言ったように子供は親に導かれているんです。
だからその導かれた未来がいい未来であってほしいんです。
道を誤ったらそれでこそ、ごめんなさい、ですむ問題じゃないです。
だから、子供にもっと愛情を注いでください。
子供に正しい道を歩かせてください。」
そこまで話した後、私は一拍おいて話し出した。
「それと、不思議な力は受け継がれるものです。
自分の両親、
もしくは祖父母にその力がなかったら先祖の家系にあったと思います。
こういう力は数多くの人が
使用していますから気味悪がらなくてもいいと思います。
それにあったものにもなれると思いますし。
私のお勧めは術士に精霊使いがいいと思います。」
私はなんとか、ここまで話し終えた。
「術士?精霊使い?」
母親は一気にしゃべった私にぽかんとしていて鸚鵡返しに聞いてきた。
「はい。
リュウ君に合ったものだと思います。」
私は言った。
とたん、私はめまいがして体がふらついた。
シンジは一瞬、はっとしてその体を支えてくれた。
どうやら興奮してたくさんしゃべったから体が限界なことに気づかなかった。
「おいっ」
シンジは私に問いかけた。
「大丈夫。
とにかく、そういうことなんで。
リュウ君、母親にひどいことされても私のこと思い出してね?」
私はシンジに向かって言い、リュウ君に聞いた。
リュウ君の母にすごい今ひどいこと言った気がするが
今までのリュウ君の仕打ちや私が受けた仕打ちとは程遠いだろう。
「うん。
僕、ぜったい、術士と精霊使いになる。
ぜったいわすれない」
リュウ君は私の服をつかんで言った。
「うん、ありがとう。
そういうことで、
リュウ君の母親さん、子供は親に導かれていることを忘れないでください。
もし、リュウ君が道を誤っても私はもう助けれないかもしれませんから。
今からなら間に合いますよ。
じゃあ、またどこかで。
リュウ君、じゃあ、またどこか出会おうね。」
私はシンジの手を振り解いて立ち上がった。
「うん、ルミル、またね。」
リュウ君がバイバイって手を振った。
「シンジ・・もう大丈夫だって。」
私はシンジに呟きながらもその場を去っていった。
「・・お前、無茶をしすぎだ。
明日、サトルとのバトルがあることを忘れてるのか?」
シンジは私に淡々と言う。
「忘れてないよ。
だから、これから寝るんだよ。
そういうことなんで今から瞬間移動しますっ」
「お、おいっ」
私はむっと言い返してシンジを無理やりつかんで瞬間移動した。
シュッ・・・スパーン
瞬時に部屋へと到着したとたん、私の視界は歪んだ。
そして体が床に崩れ落ちた。
シンジも無理やりだったためかめまいがしたのか
私を支えてはくれなかった。
普段なら受け止めてくれるはずなのに。
私はそこで意識が薄れていき始めた。
シンジははっとして私を抱き起こした。
「お、おいっ、しっかりしろっ」
シンジの焦った?心配そうな?・・声が聞こえた。
私はシンジの焦った表情を最後に視界は途絶え、意識を失った。
意識を取り戻したのは夜、シンジはもう寝る準備をしていた。
「オマエ・・今起きたのか。」
シンジがうんざりしたような口調で聞いてきた。
「ん・・。また寝るよ。
疲れてるし・・眠いから。
シンジ、今日はいろいろありがとね・・
おやすみ・・・」
私は布団にもぐって寝た。
今回、ちょっとルミルさん怖いです。
特にリュウ君の母親を責めているシーンが。
でも普段優しいルミルさんなので大目に見てあげてください。
優しい人ほど怒ると怖いってよく言いますからね。
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