第四十二話 迷子の子・・母はどこ?
私とシンジはテーブルに向かい合わせに並んで座った。
手元にはメニューが載っているファイルがある。
「んー、どれにしようかな?」
私はぺらぺらめくりながら呟いた。
朝から洋食でスパゲッティとかサンドイッチ?
それとも、和食で普通のセット?
んーパン食にしようかな~
それプラスにパフェかな?
「私、この、サンドイッチセットと食後にパフェ頼むけどいい?」
「あぁ。俺は・・これ。」
私の言葉にシンジは頷き、自分の注文を指し示す。
それは・・チャーハンセットだった。
わぁー、そんなに好きなんだ~餃子系がぁ~
ふーむ、意外。
私はそう思いながらも定員さんを呼んだ。
シンジが言ってくれそうにないので自分で頼む。
「えーと、このサンドイッチセットと食後にパフェとチャーハンセットで
お願いします。」
「ふふふぅ。はい、かしこまりました。ふふふぅ」
定員さんがそう言って小さく笑った。
定員さん・・なんか笑ってる・・?
「?」
「??」
どこがおかしいんだ?
「あのぉ~?定員さん??何故笑っているんですか??」
思わず聞いてみる。
「ふふっ。・・あ、いや、あの、すいません。
この店に来る方たちはほとんどカップルばかりなんで
その人たちの言動がどうも ツボ にはまるようでして・・すいませんね。ふふっ」
定員さんはいまだに笑いながら答えた。
カップル??・・・!!
私の頭には?と!がよぎりまくっていた。
シンジはそれがどうしたと言うような顔をしている。
シンジはそのカップルの相手が私でもいいの??
そう聞きたくなるのを抑えて、でもそれは止まらなくて
「カップル、ですか・・。
うーん、そういう関係かなぁ私たち・・?」
私はシンジに聞いてみた。
「・・・」
シンジは何も言わない。
きくな、と言う表情をしている。
だが、シンジの表情は肯定、否定の両方を指し示せるような曖昧な表情だ。
どっちって受け取ればいいのかな??
私は・・・肯定の方がうれしいなぁ・・・
「まぁ、とにかく、注文よろしくお願いします。」
私は話をそらして定員さんに頼んだ。
「?・・・はい、かしこまりました。・・??」
定員さんはそう言って厨房へかけていった。
シンジは・・カップルとかそういうの言われるの平気なんだなぁ。
私は心の中で呟きながら窓から景色を見た。
「・・・」
「んー、ねむい・・・」
私は窓から入り込む日差しに少しうとうとしかけていた。
「・・また寝る気か?」
シンジの言葉に一瞬はっとした。
「寝たいんだけど・・やっぱりだめだよねぇ」
そう言って目をこすって意識をしっかり保った。
しばらくすると料理は運ばれてきた。
パクパク、もぐもぐ・・・・おいっしぃ~~
私はサンドイッチをほおばりながら心の中で言う。
シンジも早速食事に手をつけるが表情はさっきと変わらない。
だが、微妙に変化している。
だが、それがどういうことを示しているかはよくわからない。
やがて食べ終わり、パフェがやってきた。
私はスプーンで一口ほおばった。
「ん~、おいしい~~」
「・・・」
私は思わず口にした。
シンジは何も言わない。
「おいしー^このパフェ。
シンジは甘いもの平気?」
私は聞いてみた。
一種の好奇心って奴だ。
「・・嫌いじゃない」
シンジはそう言って視線を私からはずした。
嫌いじゃない・・かぁ。
じゃあ・・好きってこと??
「じゃあ・・あげるよ。
甘くてすごくおいしいから。
ほら、・・はい、あーん」
私はパフェからクリームとアイスをすくいとってシンジに向けた。
「・・・」
シンジは何も言わずに目を見開いてこちらを見る。
そんな目で見られたら今こうやっている勇気が・・・
私は内心動揺しながら
「ほらっ早く、溶けちゃうよ。」
私はシンジの口に近づけた。
「~~~」
シンジは戸惑いながらもそれを食べてくれた。
上手い具合にシンジの口の中にパフェのかけらは入り込んでいった。
「どう?おいしー?」
私が聞くと
「・・・。・・きらいじゃない」
シンジが目線をそらしてそう言うのだった。
私はそのあとスプーンでパフェをほおばった。
やがてパフェも食べ終わり支払いを済ませて店を出た。
そのあと、街をシンジと一緒に見てまわった。
人がにぎわい大きな通路でも脇に並ぶ露店が人を呼び寄せ狭くしていた。
そんな中、私は一人の男の子にぶつかってしまった。
どん!
私はすぐにバランスを崩れた男の子を両腕で抱き寄せた。
もし、抱き寄せなかったら
この男の子は人ごみにさらわれてしまったかもしれなかったからだ。
よかった・・。
私はそのことに安堵した。
「君、大丈夫?ごめんね?
私の不注意で・・。」
私はそう言って男の子から手を離そうとしたら
ぎゅぅう
と、男の子は私の服をつかんだ。
そのとき、私はこの男の子から何かを感じた。
「!・・どうしたの?」
私は男の子にささやいてみた。
「・・迷子になったの。
お母さんどこかにいなくなっちゃった。
ひっく・・ひっく・・・」
男の子は俯きながら小さく答えた。
「どうした?」
シンジが私に怪訝な顔をして問う。
「・・この子・・迷子になっちゃったみたいなの。
私、探してあげようと思うんだけど・・シンジはどうする?
先に帰ってもいいけど?」
私はシンジに向かって言った。
この子・・迷子という理由だけじゃない気がするんだよね・・
何かあるかもしれないし・・こういう子、ほっとけない・・
「仕方ない、付き合ってやる」
シンジがあきれながら答えた。
「付き合ってくれるの?」
私は目を見開いて再びきいてみた。
「何度も言わせるな。」
シンジがそっけなく言葉を返した。
やさしい・・
素直に私はそう思った。
普段、見知らぬ人に礼儀を払うが親しみは一切込めないシンジが
私に優しくしてくれるのも不思議とばかりに思っていたが
これほど優しいものだとは思ってもみなかった。
「ありがとう。」
私はシンジに笑いかけた。
「・・・」
シンジは私から視線をそらし、男の子に向けた。
「お姉ちゃんたちが探してあげるよ、君のお母さん。
君、名前は?」
私は男の子の視線に合うようにしゃがんで聞いてみた。
「僕、リュウっていうの。
本当に・・探してくれるの?」
男の子・・リュウは私を怯えた不安な目で見つめてきた。
その目からは孤独と言うだけの感情じゃないことを私は感じた。
「うん。本当だよ。」
私はにっこりリュウに笑いかけた。
シンジはそんな私とリュウを怪訝な顔して見つめていたのであった。
「じゃあ、そうだなぁ・・リュウ君がお母さんとはぐれた場所はどこかな?」
私は立ち上がって聞いてみた。
「僕、分からないの・・。・・・いつの間にかはぐれてて・・
でも、僕、行った場所・・覚えてる。
・・おねえちゃん、名前は?」
リュウ君はそう言って私を見上げた。
「私は、ルミルって言うの。
じゃあ、どこへ行ったのか、指差してみて?」
私は微笑んで聞き返した。
「ルミルおねえちゃん・・。・・・ルミル、って呼んでいい?」
リュウは私の問いより名前を先に聞き返してきた。
「!」
シンジはリュウ君を食い入るように見つめた。
「!・・うん・・?・・いいよ。
じゃあ、リュウ君、指差してみて?」
私はシンジの視線に気づきながらも聞いてみた。
なんでシンジはその異様な視線を私やリュウ君に向けるの??
リュウ君が私の名を言ったから・・?
まさかね・・・
「あっち。」
リュウ君は笑顔で私とシンジが来た真逆の方向を指差した。
果たして無事にリュウ君を母親の元へ送り返せるのか!?




