第7話 このスマホはチートです
面倒な輩に絡まれてしまった。
「おいおい、俺たちが悪いって言うのか?」
男の1人がグレイプを睨む。
「その通りよ」
「生意気な嬢ちゃんだなぁ」
男が一歩近づく。グレイプは杖を構えようとするが、俺は手で制した。
「こういうのは俺に任せてくれ」
俺はスマホを取り出した。すると、画面に新しい通知が表示された。
『新しい機能が解放されました』
通知をタップする。
『機能解放:翻訳』
『異世界の言語を自動的に翻訳します』
「翻訳?」
画面を見つめていると、男が怒鳴った。
「おい! 何を無視してやがる!」
「いや、ちょっと新機能が……」
「知るか!」
男が拳を振り上げる。
「危ない!」
レモンが叫ぶ。俺は反射的にスマホを男へ向けた。
『対象を解析します』
【名前:???】
【職業:冒険者】
【魔力:E】
【剣術:D】
【状態:正常】
「……あ、うん。なるほど」
大したことない。
「何をブツブツ言ってやがる!」
「え? 何って……大したことないなって」
「何だとこの野郎! 舐めやがって!!」
男の拳が迫ってくる。俺は避けようとした――その瞬間、スマホが震えた。
『身体強化魔法を付与します』
「スマホが!?」
思わずツッコんでしまった。
「さっきから何ごちゃごちゃ言ってんだ!」
男がさらに怒って拳を握りしめる。俺はその拳を避け、男の腕を掴んだ。
「ぐあっ!」
そのまま軽く捻る。男は地面に転がった。
「なっ……!」
もう1人の男が驚いている。
「えっ……!?」
俺も驚いている。今まで出たことのないほど強い力——腕力? が出た気がする。俺こんなに強くなかったぞ。これがスマホによる身体強化魔法なのか……!?
「スマホ凄え……!」
「お、お前!」
「えっと、うん。俺だけど?」
「ふざけるな!」
もう1人の男が腰の剣を抜いて振り上げる。
「死ね!」
振り下ろされた剣を、俺は横に避けた。
——ガキィン!
剣が石畳に叩きつけられる。
「なっ……」
「スローモーション?」
相手の動きがまるでスローモーションのように見えた。これがスマホによる(以下略)。
「クソっ……くたばれ!」
男が何度も剣を振り回す。しかしどれも当たらない。スマホの画面には男の動きが表示されていた。
『対象の攻撃パターンを解析します』
『攻撃予測を開始します』
次にどこから攻撃が来るのか、画面上に矢印が表示される。
「これ、凄く便利だな」
右、左、上。俺は表示された方向を避け続ける。
「な、何で当たらねえんだ!」
「さあ? 何でだろ」
俺自身にもよくわからない。
「だったらこれでどうだ!」
男が力任せに剣を振り下ろした。俺は一歩踏み込み、男の手首を掴んだ。
「ぐっ……!」
そのまま手を捻る。
「うわあああっ!」
男の手から剣が落ちた。
「やったか」
スマホに新しい表示が出た。
『攻撃対象を選択してください』
「……ん?」
画面に新しい表示が出ていた。
『非殺傷モード』
『対象を無力化します』
「おお。よくある強技じゃん」
迷わずタップした。
『実行します』
次の瞬間、男の体が突然動かなくなった。
「な……何だこれ……」
男はその場に膝をつく。
「力が……入らねえ……」
「す、凄いです!」
レモンが目を輝かせる。
「これもスマホの力ですか?」
「そうみたいだな」
俺自身も驚いている。
「この天才魔術師より目立ってない?」
グレイプが不満そうに頬を膨らませる。
「君が魔法を使ってるところ、まだ見てないけど」
「そ、そうだけど!」
そのとき、最初に倒した男が立ち上がった。
「ク、クソ……!」
そして俺に向かって走ってくる。
「まだ動くのかよ……あの黒くてキモい虫みたいだ。名前も呼びたくないくらいキモい虫」
俺はスマホを向けた。
『非殺傷モード』
「うわあああっ!」
男もその場に倒れた。
「やったか」
俺はスマホをポケットにしまう。周囲がざわざわと騒ぎ始めた。どうやら一部始終を見ていた人たちがいるようだ。
「何だ今の?」
「魔法か?」
「見たことないぞ……」
「あの板は何だ?」
「さあ……」
「凄えや。ありゃ只者じゃねぇよ」
スマホがね。
「タローさん」
レモンが笑みを浮かべて近づいてくる。
「お見事でした!」
「スマホがね」
「はい! あっという間でした!」
「私も少しは活躍したかったわ……」
グレイプが肩を落とす。
「次は頼むよ、天才魔術師さん」
「任せなさい!」
グレイプが胸を張る。
「次こそ私の凄さを見せてあげるわ!」
モモは倒れた男たちを眺めていた。
「……ほんと、変な道具ね」
モモが俺を見る。
「やっぱり面白いわ」
「凄いよな、スマホって」
俺はスマホを確認する。
『新しいクエストが発生しました』
『王立図書館へ向かえ』
『達成条件:王立図書館へ到着する』
『報酬:新機能解放』
「げっ」
画面を二度見した。
「まだ機能を隠してやがったか」
王立図書館に行けばさらにスマホが進化するらしい。進化するスマホ——スマホモンスター? スマートフォンモンスター?
「今度こそ私が活躍するわ!」
グレイプが意気込む。今度こそ活躍できるといいね。
そういうわけで、俺たちは王立図書館へ向かうことになった。




