第6話 この世界は謎です
4人目の仲間が加わった。だが、肝心の名前が分からない。
「名前を教えてくれないか?」
「……そうね。まだ名前を言ってなかったわね」
少女は俺たちを順番に見た。
「あたしの名前はモモ。よろしくね」
「よろしくお願いします、モモさん」
レモンが嬉しそうに頭を下げる。
「私はグレイプ、天才魔術師よ」
「へえ。自分で天才って言うんだ」
「本当に天才なんだから問題ないわ!」
「ふふっ。面白い人ね」
「面白いじゃなくて天才!」
早くもグレイプとモモは打ち解け始めている。
「俺はタロー。よろしく、モモ」
「よろしく、タロー」
これで4人。当初の目的だったパーティメンバー集めは、とりあえず達成した。しかし、俺には気になることがある。スマホを確認すると、先ほどと同じ表示が出ていた。
【名前:???】
【職業:剣士】
【魔力:D】
【剣術:A】
【状態:???】
「……やっぱりか」
モモ本人から名前を教えてもらったにもかかわらず、スマホでは名前が表示されない。試しにもう一度カメラを向けてみる。
【名前:???】
【職業:剣士】
【魔力:D】
【剣術:A】
【状態:???】
結果は変わらなかった。レモンと同じだ。レモンは職業すら分からない。そしてモモは名前と状態だけが解析できない。偶然とは思えない。
「さっきから何してるの? そのスマホで」
モモが口を開いた。
「あたしたちのことでも調べてるの?」
「まあ……そんなところかな」
隠しても仕方がない。俺はスマホの機能について簡単に説明した。
「人の能力が分かる道具ってこと?」
「ああ。だけど、モモの情報は一部しか分からない」
「そう」
モモは意外にも驚いてはいないようだ。
「変なの」
「ところで、モモはどうして冒険者を?」
「理由? 特にないわ」
「特にない?」
「そうねぇ。強いて言えば、色々な場所へ行けるから……かしら」
モモはそう言って笑った。
「それに剣を振るのは好きなの」
「なるほど」
俺は改めてモモを見る。ステータスは【剣術:A】——少なくとも剣の腕はかなり高いらしい。
「そういえば、まだモモが戦っているところを見てないわね」
グレイプが言った。
「確かに」
「今度ダンジョンの魔物でも倒しに行きましょうよ。お手並み拝見ってことで」
「いいわね」
モモが頷く。
「あたしもあなたの魔法を見てみたいわ」
「私の魔法は凄いわよ! 天才だもの!」
「そうなのねぇー」
「その言い方、絶対信じてないでしょ!」
グレイプが頬を膨らませる。そんな2人を見ていると笑ってしまった。
「ところで、タローさん」
レモンが俺を見る。
「元の世界には……やっぱり、帰りたいですよね?」
「……そうだね」
その質問に、俺は少しだけ黙った。
「できるなら帰りたい」
「だったら、みんなで方法を探しましょう!」
「みんなで?」
「はい、私たちはもう仲間ですから」
レモンが笑顔で言う。
「あたしも手伝うわ」
モモも続けた。
「本当に?」
「ええ。面白そうだもの」
「面白そうって……」
「魔法を使えば帰る方法だってあるかもしれないし」
その言葉に、俺は少し希望を感じた。すると――スマホが震えた。
『新しいクエストが発生しました』
『帰還方法を探せ』
『達成条件:元の世界へ帰還する方法を発見する』
『報酬:???』
「何か表示されたの?」
グレイプが覗き込む。
「元の世界に帰る方法を探せってさ」
「随分と都合のいい機能ね」
ご都合主義とでも言いたいのか。そうだよ。
「便利なのは確かだけど、勝手にクエストを決められるのはちょっとな……もっと選択肢というものをだな……」
俺が苦笑すると、今度は別の通知が表示された。
『ヒントを獲得しました』
『帰還方法に関する情報は、王都の王立図書館に存在します』
「王立図書館?」
俺は画面を見つめる。王立図書館とやらはここからそう遠くない場所にあるようだ。
「そこへ行けば何かわかるかもしれない……のか?」
「じゃあ、次はそこへ行きましょう!」
レモンが嬉しそうに言う。
「賛成!」
グレイプも頷いた。
「あたしも異論なし」
モモも続く。
こうして次の目的地が決まった。
俺はスマホのマップを開く。すると、王立図書館までの道が自動的に表示された。
『目的地を設定しました』
『王立図書館まで徒歩15分』
「……本当に便利だな」
4人で歩き始める。しかし、少し歩いたところで俺はふと立ち止まった。
「どうしたんですか?」
「いや……何でもない」
スマホの画面を見る。マップには俺たち4人の位置が表示されている。その中で、レモンとモモの位置だけが微妙に点滅していた。そして、そのすぐ下に小さな文字が表示されている。
『解析不能な存在を確認』
「……」
俺は画面を閉じた。レモンが何者なのか。モモが何者なのか。あの銀髪の少女は何者なのか。そして、このスマホは一体何なのか。分からないことだらけだ。ただ1つ分かっているのは、この世界は謎だらけということだけだった。
「きゃっ……ごめんなさい!」
レモンの声が聞こえた。何事かと思い、顔を上げると、前方に男が1人。
「嬢ちゃんさぁ、どこ見て歩いてんの?」
男はニヤニヤ笑う。レモンは後退りするが、背後にいたもう1人の男にぶつかってしまう。
「イッテー。こりゃ骨折れちまったかもなー」
その男はわざとらしい素振りを見せ、ケラケラ笑った。見兼ねたグレイプがレモンの前に出た。
「ちょっとあなたたち! 今の見てたわよ! ぶつかったのはこの子じゃなくてあんたたちの方じゃない!」
モモもそれに続く。
「そうよ、謝るのはあなたたちの方よ」
どうやら面倒な輩に絡まれたらしい。




