第50話 いよいよです
俺たちは王都の外れにある巨大な遺跡の前に立っていた。ここまで来るまでに、俺たちはいくつもの異界の痕跡を調べてきた。そして、その全てがこの場所へ繋がっていた。
スマホを見る。
『最終地点を確認しました』
【目的地:異界境界遺跡】
【重要度:極】
『警告』
『この先で世界境界の崩壊が予測されます』
「ここが最後の場所ってことか」
「恐らくな」
クロエが遺跡を見上げる。
「ここには、この世界と異界を繋ぐための装置がある」
「それを止めればいいんだな?」
「ああ」
レモンが杖を握る。
「でも、本当にそれだけで終わるのでしょうか?」
「わからない」
クロエが答える。
「だが、やるしかない」
「そうね」
モモが剣を抜く。
「あたしたちはここまで来たんだから」
「私もいるわよ!」
グレイプが杖を掲げる。
「最後くらい私の天才魔術師っぷりを――」
「それはもう十分わかったよ」
「何でよ!」
いつものやり取りに、少しだけ笑ってしまう。ここまでずっと一緒に旅をしてきた。最初は俺が元の世界へ帰るためだけだった。でも今は違う。この5人で、この世界を守りたい。
「行こう」
俺たちは遺跡の中へ入った。内部には巨大な魔法陣がいくつも描かれていた。壁には異界についての記録が刻まれている。そして最深部。そこには巨大な装置があった。
「これが……」
俺はスマホを向ける。
『異界境界装置を確認』
【状態:稼働中】
【境界安定度:12%】
「12%……」
数字を見た瞬間、空気が変わった。
——ゴゴゴゴゴゴ……。
遺跡全体が揺れ始める。
「始まったわ!」
グレイプが叫ぶ。空中に黒い亀裂が次々と現れていく。
『警告』
『世界境界の崩壊を確認』
【境界安定度:10%】
【9%】
【8%】
「どんどん下がってる!」
レモンが叫ぶ。
「装置を止めるぞ!」
俺は中央へ走る。しかし、その瞬間――。
——ドォォォン!!
目の前に巨大な魔法障壁が現れた。
「くっ!」
神器を振るう。
——ガキィィン!
「硬い!」
「私がやる!」
グレイプが杖を構える。
「火炎爆破!」
——ドォォォン!!
魔法が障壁へ直撃する。
「どう!?」
「まだだ!」
「嘘でしょ!?」
モモが前へ出る。
「あたしが道を作る!」
——ズバァン!
剣撃が障壁を斬り裂く。
「今よ!」
「ありがとう!」
俺は装置へ近づく。
『停止処理を開始します』
『管理者権限を確認』
『停止には聖女の認証が必要です』
「聖女……」
俺はレモンを見る。
「レモン!」
「はい!」
レモンが装置へ手を伸ばす。
——ピィィィン!
『聖女の認証を確認しました』
『境界装置の停止処理を開始』
しかし――。
『停止処理を妨害する存在を確認』
【対象:???】
「まだ何かいるのかよ!」
巨大な魔力が遺跡全体を包み込む。クロエが剣を構えた。
「来るぞ!」
黒い影が俺たちの前に現れる。
「これは……」
モモが息を呑む。影は巨大な魔物の姿へ変わっていく。
『最終防衛機構を確認』
【危険度:測定不能】
「最後の敵ってことね」
グレイプが笑う。
「望むところよ!」
「全員、気をつけて!」
俺は神器を構える。
「ここで止める!」
魔物が咆哮する。
——グオオオオオオオオッ!!
巨大な衝撃波が放たれる。
「避けろ!」
俺たちは散開する。クロエが魔物へ斬りかかる。
——ガキィィン!
「硬い……!」
モモも続く。
「なら、あたしも!」
——ズバァッ!
グレイプの魔法が炸裂する。
「これでもくらいなさい!」
レモンが光魔法を放つ。
「光よ!」
4人の攻撃が次々と魔物へ命中する。それでも魔物は倒れない。
「全然効いてない!」
グレイプが叫ぶ。
「タロー!」
モモが俺を見る。
「もう一度、あの連携攻撃を使えない?」
「やってみる!」
俺はスマホを操作する。
『パーティレイドを開始します』
【参加人数:5】
【タロー】
【レモン:聖女】
【グレイプ:魔術師】
【モモ:剣士】
【クロエ:黒騎士】
『連携率:100%』
「いける!」
全員の力が繋がっていく。
『特殊スキルを解放します』
【異界の絆】
神器が眩い光を放つ。
「これで終わらせる!」
俺たちは一斉に走り出した。
——ドォォォォォン!!
5人の攻撃が1つに重なる。魔物の身体が大きく揺れる。
『対象HP:23%』
「あと少し!」
俺はさらに力を込める。
「うおおおおおっ!」
神器を振り抜いた。
——ズガァァァァン!!
巨大な光が遺跡を包み込む。
『対象HP:0%』
『最終防衛機構の停止を確認』
魔物の姿が消えていく。
「やりました……!」
レモンが呟く。しかし、スマホにはまだ警告が表示されていた。
【境界安定度:3%】
「3%?」
俺は装置を見る。停止したはずなのに、黒い亀裂は消えていない。
「何で……」
クロエが装置へ近づく。
「まだ境界そのものが不安定なんだ」
「じゃあどうすればいい?」
「神器が必要だ」
クロエが俺を見る。
「タロー。最後にお前が選ばなければならない」
「俺が?」
「ああ」
俺は神器を見つめる。この神器を使えば、世界の境界を安定させられる。でも、その代わりに――。
『最終選択を開始します』
【世界境界を安定させる】
【元の世界への帰還経路を確保する】
「……」
俺は画面を見つめる。元の世界へ帰る。ずっと望んでいたことだ。でも、俺はもう1人じゃない。レモン、グレイプ、モモ、クロエ。俺は4人を見る。
「みんな……」
「タローさん」
レモンが微笑む。
「大丈夫です」
モモも頷く。
「タローが決めればいい」
グレイプが腕を組む。
「どっちを選んでも、私は文句を言わないわ」
クロエも静かに頷いた。
「お前自身の答えを選べ」
俺はスマホへ手を伸ばす。そして――。画面をタップした。
『選択を確認しました』
世界が大きく揺れ始める。俺は自分が選んだ答えを見つめた。
「これが……俺の答えだ」
そして、スマホに最後の表示が現れる。
『最終クエストを開始します』
【クエスト名:異界の絆】
『世界境界を安定させてください』




