第47話 そこに鍵はありますか
俺たちは北へ向かって歩いていた。王都を出てからかなりの距離を進んだが、目的地まではまだ遠い。周囲の景色も少しずつ変わり、草原だった道には雪が見え始めていた。
「寒くなってきたわね……」
グレイプが腕を抱える。
「北だからな」
「そういう問題じゃないわよ! 寒いものは寒いの!」
「魔法で何とかできないのか?」
「できるけど、そんなことに魔力を使いたくないわ」
「天才魔術師なのに……」
「魔力は大切なの!」
そんな話をしながら歩いていると、スマホが震えた。
『目的地が近づいています』
【北方遺跡まで残り1km】
「もうすぐだな」
俺は地図を見る。
「境界鍵もこの近くにあるみたいだ」
モモが周囲を見回す。
「でも、人の姿がないわね」
「確かに」
辺りには誰もいない。雪が積もった大地がどこまでも続いている。そのときだった。
——ドン!
「何だ!?」
地面が大きく揺れる。
「魔物かしら!」
グレイプが杖を構える。
「待て!」
クロエが手を上げる。
「魔物ではない」
「じゃあ何だ?」
「遺跡が動いている」
「遺跡が?」
俺たちの前に巨大な建物が姿を現した。雪の下に隠れていた遺跡が、地面からゆっくりと浮かび上がってくる。
「まぁ……」
レモンが目を見開く。
「こんな仕組みがあったんですね」
「古代文明って凄いな……」
俺はスマホを向ける。
『重要施設を確認』
【名称:北方境界遺跡】
【状態:起動】
【境界鍵:存在】
「境界鍵はここにある!」
「なら早く行きましょう!」
俺たちは遺跡の中へ入る。内部には巨大な通路が続いていた。壁には青白い光が灯り、足元を照らしている。
「明かりまで自動なのね」
グレイプが感心する。
「便利だな」
しばらく進むと、広い部屋へ出た。部屋の中央には台座があり、その上に青い結晶が浮かんでいる。
「これが境界鍵?」
モモが近づく。
『境界鍵を確認』
【境界鍵①】
【状態:正常】
「これだ!」
俺が台座へ近づいた瞬間だった。
——ザッ!
「止まれ」
クロエが剣を抜く。部屋の奥から、誰かが歩いてくる。
「やっぱり来たか」
「誰だ?」
現れたのは、黒いローブを着た男だった。
「その鍵を渡してもらおう」
「嫌だ」
即答すると、男が手を上げた。
「ならば力ずくで奪う」
——ドォン!
巨大な魔法が放たれる。
「危ない!」
レモンが杖を構える。
「聖壁!」
——バァン!
光の壁が現れ、魔法を防ぐ。
「レモン、今の魔法は……」
「ええ……自分でも驚きました」
レモンが自分の手を見る。
「以前より強くなってるみたいです」
スマホが震える。
『聖女スキルの成長を確認』
【レモン:聖女】
【固有スキル:聖域】
「聖域……?」
「新しい力か」
クロエが頷く。
「聖女として覚醒し始めているな」
「わ、私が……」
レモンは少し戸惑っている。
「これなら皆さんを守れますね」
「頼りにしてるぞ」
「はい!」
俺は神器を構える。
「グレイプ、モモ、いくぞ!」
「任せて!」
「ええ!」
グレイプの魔法とモモの剣撃が男へ迫る。
——ドォォン!
——ズバァッ!
「ぐっ……!」
男が後退する。
「この人数を相手にするのは分が悪いか」
男が懐から何かを取り出す。
「ならば今回は退く」
「待て!」
俺が追いかけようとした瞬間、男の姿が消える。
「逃げたか……」
クロエが台座へ歩いていく。
「鍵を確保しよう」
「ああ」
俺は境界鍵へ手を伸ばす。
——ピィィィン!
『境界鍵との接続を開始します』
『神器との適合を確認』
『パーティメンバーとの接続を確認』
『境界鍵を取得しました』
【境界鍵:1/5】
「1個目!」
グレイプが喜ぶ。
「あと4個ね!」
しかし、その直後。
『緊急通知』
『境界鍵②に異常を確認』
【境界鍵②:破壊寸前】
「……え?」
俺は画面を見る。
「破壊寸前ってどういうことだ?」
クロエの表情が険しくなる。
「誰かが別の境界鍵を狙っている」
「じゃあ、急がないと」
モモが剣を握る。
「次はどこ?」
スマホに地図が表示される。
【境界鍵②:海底神殿】
「海底神殿か……」
俺は海の方向を見る。
「今度は海か」
グレイプが笑う。
「楽しそうじゃない!」
「お前はどこでも楽しそうだな……」
俺たちは境界鍵を手に入れた。しかし、まだ始まったばかりだ。残された鍵は4つ。そして、誰かが俺たちより先に鍵を集めようとしている。
「急ごう。次は海底神殿だ」
「はい!」
レモンが頷く。
「行きましょう!」
俺たちは北方遺跡を後にした。次の目的地へ向かうために。




