第46話 始まろうとしてます
境界神殿の奥へ進んだ俺たちは、長い通路を歩いていた。壁には見たことのない文字が刻まれている。文字の周囲には淡い光が浮かび、まるで俺たちをどこかへ案内しているようだった。
「この文字、読める?」
グレイプが壁を見ながら尋ねる。
「いや、全然わからない」
「私も無理ね」
モモも首を横に振る。
「私にもわかりません」
レモンが答える。
「クロエは?」
俺が聞くと、クロエは壁を見つめた。
「古代文字だな」
「読めるのか?」
「少しだけなら」
クロエが壁に刻まれた文字へ手を触れる。
「ここには、この先にあるものについて書かれている」
「何て?」
「境界を守る者。そして、世界を繋ぐ塔」
「境界の塔か」
俺はスマホを見る。
【目的地:境界の塔】
『現在地からの距離を測定します』
【距離:???】
「距離が表示されないな」
「どうして?」
モモがスマホを覗き込む。
「わからない。でも、目的地はこの先みたいだ」
俺たちはさらに進んでいく。しばらくすると、通路の先に巨大な扉が現れた。扉には、俺の持っている神器と同じ形の紋章が刻まれている。
「神器の紋章か」
俺が近づく。
——ピィィィン!
『異界の神器を確認』
『認証を開始します』
『認証完了』
——ゴゴゴゴゴ……。
巨大な扉がゆっくりと開いていく。
「開いたわ!」
グレイプが目を輝かせる。
「やっぱり神器が鍵だったのね!」
「今回はちゃんと役に立ったな」
「今回も、でしょ!」
扉の向こうには、広大な空間が広がっていた。
「何だ、ここ……」
思わず立ち止まる。そこには巨大な塔があった。地下にあるはずなのに、塔の頂上は見えない。まるで空間そのものが無限に続いているようだった。
「これが……境界の塔」
レモンが呟く。俺はスマホを向ける。
『重要施設を確認しました』
【名称:境界の塔】
【状態:休眠中】
【用途:世界境界の管理】
「本当にあったんだな」
クロエが塔を見上げる。
「ここが、この世界と異界の境界を管理していた場所だ」
「だったら、ここを使えば地球とライトディアを繋げられるのか?」
「可能性はある」
「でも、まだ問題があるんだろ?」
「ああ」
クロエが答える。
「塔を起動するには、5つの鍵が必要だ」
「5つ?」
グレイプが指を立てる。
「まさか私たち5人?」
「違う」
「違うの!?」
「5つの装置だ」
「なんだ……」
グレイプが少し残念そうな顔をする。
「何を期待してたんだよ……」
そのとき、塔の周囲に5つの台座が浮かび上がった。
——ゴォン!
『起動条件を確認しました』
【境界鍵:0/5】
「これを5つ集めるってことか」
「そうみたいね」
モモが台座を見る。
「どこにあるの?」
スマホが震えた。
『境界鍵の位置を検索します』
『検索中……』
数秒後、地図が表示された。
【境界鍵①:王都】
【境界鍵②:北方遺跡】
【境界鍵③:海底神殿】
【境界鍵④:???】
【境界鍵⑤:???】
「3つは場所がわかるのか」
「王都にもあるんだ」
グレイプが驚く。
「王都に戻らないといけないのね」
「いや、まずは近いところから行こう」
俺が地図を見る。
「北方遺跡ならここから行けそうだ」
クロエが頷く。
「そうだな」
レモンが地図を見ながら考える。
「海底神殿という場所も気になりますね」
「海底か……」
少し嫌な予感がした。
「泳ぐのか?」
「そうじゃない?」
モモが笑う。
「俺、泳げるけど異世界の海底まで行ける自信ないぞ」
「そのときは私が魔法で何とかするわ」
グレイプが胸を張る。
「水中でも呼吸できる魔法くらい使えるわよ!」
「本当に?」
「多分!」
「多分なのかよ……」
俺たちが話していると、突然スマホが震えた。
『緊急通知』
『境界鍵への干渉を検出しました』
「干渉?」
画面に新しい表示が現れる。
【境界鍵①:王都】
【状態:移動中】
「移動中……?」
俺は目を疑う。
「鍵が動いてるってこと?」
モモが尋ねる。
「そうみたいだ」
地図上の光が王都から離れていく。
「誰かが持ってるのか?」
「恐らくな」
クロエが答える。
「境界鍵を持っている存在がいる」
「だったら急いだ方がいい」
俺は神器を握る。
「その鍵を先に取られたら困るんだろ?」
「ああ」
クロエが頷く。
「5つの鍵が揃わなければ塔は起動できない」
「じゃあ、最初の目的地は決まりだな」
俺たちは境界の塔を後にする。
「北方遺跡へ向かうぞ」
「了解!」
グレイプが杖を持ち上げる。
「今度こそ私の活躍の場ね!」
「遺跡に行くたびにそれ言ってないか?」
「気のせいよ!」
レモンが笑う。
「ふふっ」
モモも笑いながら歩き出す。
「じゃあ、行きましょう」
クロエは最後に塔を振り返った。
「……」
「どうした?」
「いや」
クロエは首を横に振る。
「何でもない」
俺は少し気になったが、追及することはしなかった。俺たちは北方遺跡へ向かって歩き始める。その頃。遠く離れた場所で、誰かが1つの光る結晶を手にしていた。
「これが境界鍵……」
その人物は結晶を見つめる。
「これがあれば、あの塔を起動できる」
その人物は静かに笑った。
「もうすぐ、世界を変えられる」
境界鍵を巡る新たな戦いが、始まろうとしていた。




