第44話 神器を探してます
俺たちは北の山岳地帯へ向かっていた。王都を出てからしばらく経ったが、目的地まではまだ距離がある。スマホに表示された残り時間を見るたびに、嫌な焦りが込み上げてくる。
【世界境界崩壊まで:64時間】
「あと64時間か……」
「まだ2日以上あるじゃない」
グレイプが隣を歩きながら言う。
「そう考えると余裕があるように思えるわね」
「そうか?」
「ええ。私たちは強いもの」
「その自信はどこから来るんだよ……」
「天才だから!」
「そーですか」
いつものやり取りをしていると、モモが前方を指差した。
「あれを見て」
山道の先に、大きな岩が転がっている。その岩には、不自然な紋様が刻まれていた。
「これ……」
クロエが岩へ近づく。
「古代文字だ」
「読めるのか?」
「ああ」
クロエが文字を確認する。
「この先、神器を求める者は試練を受けよ、と書いてある」
「試練か……」
「神器を守っているなら仕方ないでしょう」
グレイプが杖を肩に乗せる。
「むしろ簡単に手に入る方がおかしいわ」
「それもそうか」
俺はスマホを岩へ向ける。
『古代遺跡への入口を確認』
『認証条件を確認します』
【必要条件:神器所持者の意思】
「意思、ですか」
レモンが首を傾げる。
「さっきの守護者と同じなのかもしれませんね」
「なら、俺たちが神器を何のために使うのか答えればいいのか?」
『回答を入力してください』
「入力式ね」
俺は少し考える。
「世界を救うため」
画面を確認する。
『回答を受理しました』
『認証完了』
——ゴゴゴゴゴ……。
目の前の岩が左右へ割れていく。
「開いた!」
グレイプが嬉しそうに叫ぶ。
「さすが私たちね!」
「俺が答えたんだけど……」
「パーティの力よ!」
「まあ、そういうことにしておくか」
岩の奥には、地下へ続く階段があった。俺たちは階段を下りていく。しばらく進むと、巨大な空間へ出た。
「広い……」
そこには古代の建造物が並んでいた。壁には大量の文字が刻まれている。
「何の施設なんでしょう?」
レモンが辺りを見回す。
「神器を保管するための場所だろう」
クロエが答える。俺はスマホを向ける。
『古代神器保管施設を確認』
【状態:一部稼働中】
「一部稼働中?」
その瞬間、奥から機械音が響いた。
——ガシャッ。
「何か動いたぞ!」
モモが剣を抜く。
「来るわよ!」
グレイプも杖を構える。奥から現れたのは、巨大な人型の魔道具だった。
『守護装置を確認』
【名称:古代守護兵】
【危険度:A】
「魔物じゃなくて魔道具か」
俺は神器を構える。
「なら壊せばいい!」
「待って!」
レモンが叫ぶ。
「何か様子がおかしいです!」
「え?」
守護兵は攻撃してこない。ただ、俺たちを見つめるように立っている。そして――。
——ピィィィン。
『神器所有者を確認』
『戦闘モードを解除します』
「……え?」
守護兵の身体から武器が消えた。
「どういうこと?」
モモが驚く。
『神器探索者へ情報を提示します』
守護兵の前に光が浮かび上がった。
【神器はこの先に存在する】
【ただし、神器を手にするには5人全員の力が必要】
「5人全員……」
俺は仲間を見る。
「俺たち5人なら問題ないな」
「ええ」
モモが頷く。
「やりましょう」
レモンも頷く。
「私も頑張ります」
「私も当然参加するわ!」
グレイプが胸を張る。クロエは静かに頷いた。
「ああ」
守護兵が道を開ける。俺たちはその先へ進んだ。しばらく歩くと、巨大な祭壇が見えてきた。その中央には、青白い光を放つ結晶が浮かんでいる。
「これが……神器?」
俺が近づく。
『神器反応を確認』
【神器:氷晶の神器】
【状態:封印中】
「氷晶の神器……」
グレイプが目を輝かせる。
「綺麗ね」
「どうやって封印を解除するんだ?」
俺が祭壇を見る。すると、5つの手形が刻まれていた。
「ここに手を置くみたいですね」
レモンが気づく。
「5人で同時に触れるのか」
「やりましょう」
俺たちは5つの手形へ手を置く。
——ピィィィン!
『神器認証を開始します』
『タロー:確認』
『レモン:確認』
『グレイプ:確認』
『モモ:確認』
『クロエ:確認』
『全員の認証を確認しました』
氷晶の神器が強く輝く。
——パキィィン!
封印が砕け散った。
「やったわ!」
グレイプが叫ぶ。俺が神器へ手を伸ばした、その瞬間だった。
——ズンッ!
地面が大きく揺れた。
「な!?」
天井から砂埃が落ちてくる。スマホが激しく震える。
『緊急警告』
『世界境界に異常発生』
【世界境界安定度:29%】
「29%!?」
クロエが険しい表情になる。
「崩壊が始まった」
「まだ神器を1つ手に入れただけだぞ!」
「だから急ぐ必要がある」
俺は氷晶の神器を手に取る。
その瞬間、スマホに新しい表示が現れた。
『神器を取得しました』
【神器:2/5】
『新たな目的地を設定します』
【次の神器:西部砂漠】
『残り時間:63時間』
「次は砂漠か……」
俺たちは顔を見合わせる。
「行きましょう」
モモが言う。
「ああ」
俺は頷く。
「次の神器を取りに行こう」
しかし、俺たちが祭壇を離れようとしたとき――氷晶の神器から、突然声が聞こえた。
『――砂漠へ行ってはいけない』
「……え?」
全員が足を止める。そして神器は、もう一度だけ言った。
『そこには、世界を壊そうとしている者がいる』




