第40話 3日しかありません
俺はスマホの画面に表示された数字を見つめていた。
【世界境界崩壊まで:72時間】
「……3日か」
たった3日。今までだって色々なことがあった。異世界に来て、神器を手に入れて、仲間と出会って、ダンジョンを攻略して。そして今度は世界そのものを救わなければならない。
「ちょっと待って」
グレイプが画面を覗き込む。
「72時間ってことは……3日よね?」
「さっきからそう言ってるけど」
「なら急がないと!」
「今気づいたのかよ」
「だって3日しかないのよ!?」
グレイプが慌て始める。
「こういうときはもっと早く教えてほしいわ!」
「早くも何もさっき表示されたばかりだろ……」
俺が呆れていると、クロエが装置へ近づいた。
「この装置なら境界を安定させることができる」
「じゃあ、今すぐ使えばいいんじゃないか?」
「それができればな」
「できないのか?」
「この装置を動かすためには、各地にある制御装置を起動させる必要がある」
「各地って……」
クロエが地図を指差す。
「世界中だ」
「世界中!?」
思わず声が出る。
「3日しかないのに世界中を回るのか? たった3日で?」
「そういうことになる」
「無理だよ! 3日は無理だって!」
俺は頭を抱える。王都から別の町へ行くだけでもかなり時間がかかる。それを世界中なんて、とても間に合うとは思えない。
「それなら、別の方法を探しましょう」
レモンが言う。
「他の方法?」
「はい」
レモンは装置を見つめる。
「全部の制御装置を起動しなくても、この装置だけで何とかできる方法があるかもしれません」
「あー、なるほど。その手があったか」
俺はスマホを装置へ向ける。
「解析してみるか」
『世界境界制御装置を解析します』
『必要条件を確認しています』
「……」
全員が画面を見つめる。
『必要条件を確認しました』
【必要条件:5つの神器反応】
「5つ?」
グレイプが首を傾げる。
「神器って5つもあるの? タローの持ってるもの以外にもあるのかしら」
「俺のスマホ以外にも神器があるってことか?」
クロエが答える。
「ああ」
「知ってるなら先に言ってくれよ!」
「今思い出した」
「今!? 何で今!? もっと早く思い出してくれよ!」
クロエは気にした様子もなく続ける。
「この世界にはかつて5つの神器が存在していた」
「えーっと、つまりその神器を集めればいいのか?」
「そうだ」
スマホが震える。
『新たなクエストが発生しました』
『5つの神器を集めてください』
【現在の神器:1/5】
「あと4つ……か」
モモが地図を見る。
「それ、どこにあるの?」
すると、スマホに世界地図が表示された。
【神器反応:4】
地図上に4つの光が現れる。
「うわぁ……かなり遠いなぁ……」
1つ目は王都から北にある山岳地帯。2つ目は西の砂漠。3つ目は南の海域。そして最後の1つは――。
「……ここ? なのか?」
俺が指を止める。
「東の……森……?」
銀髪の少女が地図を見る。
「そこなら、私が知っているわ」
「知ってるのか?」
「ええ」
少女が頷く。
「そこには古い遺跡がある」
「遺跡が?」
「そして、その遺跡には神器を守る存在がいる」
グレイプが杖を握る。
「つまり、そこへ行けば神器が手に入るのね!」
「簡単にはいかないと思うわ」
「でも行くしかないだろ」
俺はスマホを見る。
【残り時間:71時間48分】
「時間が減ってる……」
ほんの数分話していただけなのに、残り時間は確実に減っていた。もう時間がない。
「なら、急ぎましょう」
モモが立ち上がる。
「まずは近い場所から行くべきね」
「そうだな」
俺も立ち上がる。
「で、最初はどこへ向かうんだ?」
クロエが地図を見る。
「北の山岳地帯だ」
「よし、わかった。そこへ行こう」
レモンが頷く。
「行きましょう」
「行くわよ!」
グレイプが杖を持ち上げる。
「神器がどんなものなのか楽しみね!」
「お前は本当に緊張感がないな……」
「だって未知の魔法道具よ! 気になるじゃない!」
俺たちは装置の部屋を出る。そのとき、銀髪の少女が俺の隣に並んだ。
「あなたたち……これから大変ね」
「お前は来ないのか?」
「勿論行くわ。言うまでもなく」
「やっぱり来るんだな」
「ええ」
少女は微笑む。
「私にも、この旅を見届ける理由があるから」
「その理由も教えてくれないのか?」
「まだ秘密」
「やたら秘密が好きなんだな」
俺たちは研究施設を後にする。目指す場所は北の山岳地帯。残された時間は約71時間。神器はあと4つ。




