第38話 神殿に来ました
暗闇の中から現れたのは、巨大な鎧を身に着けた魔物だった。全身を黒い鎧で覆っていて、その手には巨大な斧が握られている。顔は兜に隠れていて表情は見えない。
「でっか……」
俺は思わず後ずさる。
「こんなの神殿の中にいるのかよ」
「見るからに強そうね」
グレイプが杖を構える。
「でも、倒せば先へ進めるんでしょう?」
「ああ」
俺はスマホを向ける。
『対象を解析します』
【名称:異界神殿守護者】
【種族:???】
【危険度:S】
【状態:正常】
守護者が斧を持ち上げる。
——ズズズズズ……。
床が揺れる。
「来るぞ!」
クロエが叫ぶ。
——ドォォォン!
守護者が地面を踏みつけた。
「うおっ!」
衝撃波が広がる。俺たちはそれぞれ左右へ飛び退いた。
「タローさん!」
レモンが杖を構える。
「大丈夫!」
俺は立ち上がる。
「全員、いつもの連携でいくぞ!」
「任せて!」
グレイプが杖を掲げる。
「まずは私から!」
「グレイプ、無理するなよ!」
「誰に言ってるのよ!」
グレイプの周囲に炎が集まっていく。
「火炎爆破!」
——ドォォォン!
巨大な炎が守護者へ直撃する。
「これは効いたでしょ!」
だが、炎が消えると守護者はその場に立っていた。
「嘘でしょ……」
「全然効いてないな」
「ちょっと! 今のは様子見よ! 本領はここから!」
「本当か?」
「本当よ!」
守護者が斧を振り上げる。
——ブォン!
「危ない!」
モモが俺の腕を引く。
——ズガァァン!
さっきまで俺が立っていた場所の床が砕ける。
「助かった!」
「気をつけて」
モモが剣を構える。
「あたしが隙を作る」
モモが一気に走り出す。
——シュッ!
「はあっ!」
——ガキィン!
剣が鎧に当たる。
「か、硬い!」
守護者がモモへ腕を振る。
「モモ!」
クロエが飛び込む。
——ガキィィン!
クロエの剣が攻撃を受け止めた。
「ここは私が抑える!」
「お願いします!」
レモンが杖を掲げる。
「聖なる光よ!」
——キィィィン!
レモンの光がクロエとモモを包み込む。
「力が戻ってくる……」
クロエが驚く。
「これなら!」
俺はスマホを見る。
『パーティ連携を確認』
『連携率:100%』
「よし!」
画面に新しいアイコンが表示された。
『特殊連携を使用できます』
【聖魔剣撃】
「なんだこれ?」
「名前からして強そうじゃない!」
グレイプが叫ぶ。
「使いなさい!」
「お前、ほんとにこういうときだけ判断早いな!」
「こういう時だからよ!」
俺はアイコンをタップする。
『特殊連携を開始します』
『対象を指定してください』
守護者へ向ける。
『対象をロックしました』
「いくぞ!」
5人が同時に動く。レモンの光がクロエの剣へ集まり、グレイプの炎がモモの剣へ絡みつく。
「はあああっ!」
クロエとモモが同時に斬り込む。
——ズガァァン!
守護者の鎧に大きな亀裂が入った。
「今!」
グレイプが炎を放つ。
——ドォォォン!
炎が亀裂へ入り込む。
「グオオオオッ!」
守護者が初めて声を上げた。そして最後に俺が走る。
「これで終わりだ!」
神器を振り抜く。
——ズガァァァン!!
光の斬撃が守護者を包み込む。数秒後、光が消えた。守護者はその場で膝をつき、ゆっくりと倒れていく。
——ドォン。
『対象の撃破を確認しました』
『経験値を獲得しました』
『特殊報酬を獲得しました』
「勝った……」
俺はその場に座り込む。
「やったわね!」
グレイプが嬉しそうに笑う。
「やっぱり私の魔法が――」
「はいはい」
「最後まで言わせなさいよ!」
レモンとモモが笑う。クロエは倒れた守護者の前へ歩いていった。
「待って」
クロエが守護者の兜へ手を伸ばす。
——カチッ。
兜が外れる。
「……」
俺たちは息を呑んだ。その中にあったのは、人間の顔だった。
「人間……?」
俺が呟く。守護者は目を閉じたまま、静かに口を開いた。
「……神器を……求める者よ」
「喋った!?」
「ここまで……来たか」
守護者が俺を見る。
「神器には……代償がある」
「代償?」
「その力は……世界を救うために作られた」
守護者は苦しそうに息を吐く。
「だが……使えば使うほど……世界の境界を削っていく」
「……!」
俺は神器を見る。
「じゃあ、この神器を使うと……世界が危なくなるってことか?」
「それだけではない」
守護者が答える。
「神器には……もう1つの機能がある」
「もう1つ?」
「世界と世界を……融合させる機能だ」
俺は言葉を失う。守護者の身体から光が消えていく。
「その力を……決して……」
そこで声が途切れた。
「……」
静寂が戻る。
「神器を使うほど世界の境界が弱くなる……」
俺はスマホを見つめる。今まで便利な力だと思っていた。だがその力には知らない代償があった。そのとき、スマホが震える。
『新たな情報を取得しました』
『異界の神器・第1段階情報を解放します』
【神器の目的:世界間干渉】
『次の目的地を設定します』
【目的地:異界神殿・最上階】
「最上階……」
俺は顔を上げる。
「そこに神器の秘密があるのか?」
クロエが頷く。
「ああ。恐らくな」
俺たちは神殿の奥へ進む。そして、その先にあった巨大な階段を見上げた。




