第37話 第三世界へ行きます
光の道を進んだ俺たちは、しばらくして足を止めた。
「ここが第三世界か?」
俺は周囲を見回す。そこは森だった。だが、ライトディアにある普通の森とは明らかに違う。木々は青白く光っていて、空には巨大な月が2つ浮かんでいる。地面には見たことのない花が咲いていた。
「わぁ……」
レモンが周囲を見渡す。
「こんな場所、見たことありません」
「私もよ」
グレイプが木に近づく。
「植物そのものが魔力を持ってるみたい」
「触って大丈夫なのか?」
「多分大丈夫でしょ」
「多分って……」
俺が呆れていると、グレイプが花へ手を伸ばす。
——パチッ!
「痛っ!」
「大丈夫か!?」
「大丈夫よ!」
グレイプが手を振る。
「ちょっと静電気が来ただけ!」
「魔力を持った植物をいきなり触るなよ」
「だって気になるでしょう!」
モモが笑う。
「相変わらずね」
クロエは周囲を警戒していた。
「ここは危険だ」
「魔物がいるのか?」
「ああ」
クロエが剣へ手をかける。
「この世界の魔力はライトディアより濃い。強力な存在がいてもおかしくない」
その瞬間、スマホが震えた。
『現在地を確認しました』
【世界:???】
【名称:未登録】
【危険度:B】
「世界の名前すらわからないのか」
「名前がない世界なんてあるの?」
グレイプが首を傾げる。
「違う」
クロエが答える。
「名前がわからないだけだ」
「なるほど」
俺はスマホを操作する。
『世界情報を検索します』
『検索中……』
『該当データなし』
「やっぱり登録されてないみたいだ」
「なら、私たちで調べるしかありませんね」
レモンが困ったように笑う。
「それも旅の目的の1つですから」
「そうだな」
俺はマップを開く。
『周辺地図を作成します』
スマホの画面に少しずつ地図が表示されていく。森の中央には俺たちがいる場所。そして、その先に赤い点が1つ表示された。
【異界反応:強】
【距離:3.2km】
「これだ」
「神器に関係する場所かしら?」
「わからない。でも行ってみよう」
俺たちは赤い点へ向かって歩き始めた。しばらく進むと、森の中に古い石造りの道が現れた。
「こんな場所に道があるのか」
「誰かが作ったのかもしれないわね」
モモが周囲を見回す。道に沿って進んでいくと、やがて巨大な建物が見えてきた。
「あれは……城?」
グレイプが目を見開く。そこには、森の奥にそびえ立つ巨大な塔があった。塔の頂上は雲の上まで伸びていて、周囲には無数の魔法陣が浮かんでいる。
「スマホで調べてみよう」
『対象を解析します』
【名称:異界神殿】
【状態:休眠中】
【用途:不明】
【危険度:A】
「異界神殿……? ここか?」
俺は入口を見る。
「ここに神器の秘密があるのか?」
「可能性は高い」
クロエが頷く。
「だが簡単には入れないだろう」
「どうしてですか?」
レモンが尋ねる。その瞬間、神殿の入口に巨大な魔法陣が現れた。
——シュインッ!
『侵入者を確認』
『認証を開始します』
「認証?」
俺は神器を構える。
『異界の神器を確認』
『第1認証を通過しました』
「おっ」
『聖女の力を確認』
『第2認証を通過しました』
「え?」
レモンが驚く。
『黒騎士の力を確認』
『第3認証を通過しました』
クロエも目を見開く。
『剣士の力を確認』
『第4認証を通過しました』
「私も?」
モモが自分を指差す。
『魔術師の力を確認』
『第5認証を通過しました』
「当然よ!」
グレイプが胸を張る。
「私の力が必要なのね!」
「今回は本当に役に立ったな」
「今回はって何よ! まるでいつもは役に立ってないみたいな言い方ね!」
俺たち5人の認証が終わると、魔法陣が大きく輝いた。
『パーティ認証を完了しました』
『5名全員の入場を許可します』
——ゴゴゴゴゴ……。
巨大な扉が開いていく。
「全員で認証する仕組みだったのか」
「神器だけでは入れないようになっていたのね」
モモが扉を見る。
「私たち5人で来た意味があったってことね」
「そうらしいな」
俺は頷く。
「行こう」
俺たちは神殿の中へ入った。内部には巨大な石像が並んでいる。
「……これ、誰の像だ?」
石像には、それぞれ違う武器を持った人物が描かれていた。
「昔の勇者たちかしら?」
グレイプが言う。
「いや」
クロエが石像を見る。
「これは勇者ではない」
「じゃあ誰なんだ?」
「神器を作った者たちだ」
「……!」
俺は石像を見上げる。
「神器を作った?」
「ああ」
その瞬間、スマホが震えた。
『古代記録を検出』
『神器製造記録を発見しました』
「やっと見つけた……!」
俺はスマホを操作する。
『記録を再生します』
目の前に映像が浮かび上がった。そこには、今まで見たことのない人物たちが映っていた。そして中央には――。
「……スマホ?」
そこに映っていたのは、俺が持っている神器と同じ形をした端末だった。
『異界の神器、第一号』
『製造目的――』
映像が一瞬途切れる。
「おい!」
しかし、次の瞬間。
『製造目的:世界を救済するため』
「世界を救済……?」
俺は画面を見つめる。すると、映像の最後に1つの言葉が表示された。
『ただし、神器には重大な欠陥が存在する』
「欠陥……?」
その文字を見た瞬間、神殿全体が揺れ始めた。
——ゴゴゴゴゴゴ……。
「何!?」
グレイプが杖を構える。スマホに新しい通知が表示される。
『警告』
『神殿内部に強力な存在を確認』
【危険度:S】
俺は神器を構える。神殿の奥から、巨大な足音が響いてくる。
——ドン。
——ドン。
——ドン。
「来るぞ」
クロエが剣を抜く。俺たちは5人で並び、神殿の奥を見つめた。そして暗闇の中から、巨大な影が姿を現した。




