第36話 謎だらけです
巨大な扉の向こうには、無数の光の道が広がっていた。どの道も空中へ伸びていて、その先には違う景色が映っている。森、街、海、そして見たことのない世界まである。
「何だよ……これ」
俺は思わず立ち止まる。
「世界が……こんなにあるの?」
グレイプが目を見開く。
「ええ」
銀髪の少女が答える。
「この場所は世界と世界の境界。ここには数え切れないほどの世界が存在しているわ」
「じゃあ地球もあるのか?」
「もちろん」
銀髪の少女が1つの光を指差す。
そこには、見慣れた街の景色が映っていた。
「地球……」
俺は光へ近づく。
「本当に俺の世界だ」
道路を走る車。ビル。そして見慣れた街並み。ほんの少し前まで、俺が当たり前のように暮らしていた世界だった。
「ここから帰れるのか?」
「帰るだけなら、そう難しくないわ」
「本当か!?」
俺は振り返る。
「だったら――」
「でも」
銀髪の少女が遮る。
「今のあなたが地球へ戻ると、ライトディアとの境界が崩れる可能性がある」
「……」
「あなたの神器は、すでにこの世界と深く繋がっているから」
俺はスマホを見る。
【異界の神器】
【現在地:異界境界領域】
【接続世界:ライトディア】
【接続状態:安定】
「俺が帰ったら、この世界が危ないってことか?」
「正確には、あなたが持つ神器だけを地球へ戻すことが危険なの」
クロエが口を開く。
「つまり、神器を持ったまま帰ることはできないということか」
「ええ」
「じゃあ神器を置いていくなら?」
「それも無理よ」
銀髪の少女は首を横に振る。
「その神器はあなたを選んだ。あなたから離れることはできない」
「……やれやれ。本当に面倒な神器だな」
俺はスマホを見る。
「便利ではあるんだけどな」
「便利なのは認めるのね」
「そりゃまあ、スマホだからな」
「この世界では普通のスマホじゃないみたいだけどね」
「それを言われると何も言えない」
俺たちが話していると、レモンが光の道を見つめていた。
「あの」
「どうした?」
「あそこから何か感じます」
レモンが1つの光を指差す。そこは他の世界とは違い、真っ白な光で覆われていた。
「何かいるのか?」
「わかりません。でも……」
レモンが胸元に手を当てる。
「私の中にある何かが、あの場所に反応しています」
スマホが震えた。
『高濃度の聖属性反応を検出』
【反応対象:レモン】
【共鳴率:87%】
「レモンに反応してる?」
俺が画面を見る。銀髪の少女の表情が少し変わった。
「やっぱり……」
「何が?」
「レモン。あなたはただの聖女ではないわ」
「え?」
レモンが驚く。
「どういう意味ですか?」
「それはまだ言えない」
「お前、本当に秘密を小出しにするの好きだな」
「全部話したら、あなたたちは自分で答えを探さなくなるでしょう?」
「いや、普通に全部教えてほしいんだけど」
グレイプも頷く。
「私もそう思うわ!」
「あなたは少し黙っていて」
「何でよ!」
銀髪の少女が笑う。
「でも、1つだけ教えてあげる」
彼女は俺のスマホを見る。
「異界の神器には3つの役割がある」
「3つ?」
「繋ぐこと。守ること。そして――」
少女が俺を見る。
「選ぶこと」
「選ぶ……?」
「ええ」
スマホが震える。
『神器情報を更新します』
【神器機能:異界接続】
【神器機能:境界防護】
【神器機能:???】
「最後のは何だ?」
「今のあなたにはまだ使えない機能よ」
「どうすれば使えるんだ?」
「3つの世界を巡ればいい」
「3つ?」
俺は周囲を見る。
「ライトディアと地球……それからもう1つ?」
「そう」
銀髪の少女が頷く。
「この境界領域に存在する、もう1つの世界」
「そこへ行けば神器の力が完成するのか?」
「その可能性があるわ」
クロエが少女を見る。
「その世界には何がある?」
「神器が作られた理由」
「……!」
俺はスマホを握り締める。神器が作られた理由。それを知れば、俺がこの世界へ召喚された理由もわかるかもしれない。
「行こう」
俺は仲間を見る。
「次の目的地は、その世界だ」
「もちろんよ!」
グレイプが杖を握る。
「未知の世界なんて楽しそうじゃない!」
「私はタローさんについていきます」
レモンが笑う。
「私も」
モモが頷く。クロエも静かに頷いた。
「ああ。私も行こう」
銀髪の少女は少し離れた場所から俺たちを見ている。
「お前は来ないのか?」
「私はここに残るわ」
「そうか」
「でも、また会うことになるでしょうね」
少女が微笑む。
「次に会うときには、あなたも少しはこの世界のことがわかっているはずよ」
「それなら名前くらい教えてくれてもいいんじゃないか?」
俺が尋ねる。少女は少し考えてから答えた。
「今はまだ秘密」
「そこも秘密なのかよ!」
グレイプが笑う。
「本当に謎だらけね!」
スマホが震えた。
『新たなクエストが発生しました』
『第三世界を探索せよ』
【目的地:???】
【推奨パーティ人数:5】
『異界ゲートを開放します』
目の前に新しい光の道が現れる。俺は神器を構えた。
「よし」
俺たちは光の道へ向かって歩き始める。これから何が待っているのかは、まだわからない。でも、俺にはもう1人で進む必要はない。レモン、グレイプ、モモ、クロエ。4人の仲間と一緒なら、どんな世界でも進んでいける気がした。




