第35話 異界領域に来ました
眩しい光が消えた。
「……」
俺はゆっくりと目を開ける。目の前に広がっていたのは、見たことのない景色だった。空は黒く、地面には白い亀裂のようなものが走っている。遠くには巨大な建物のようなものが浮かんでいて、その周囲を無数の光が漂っていた。
「ここは……どこだ?」
「わかりません」
レモンも周囲を見回す。
「王都ではないようですね」
「当たり前でしょう!」
グレイプが叫ぶ。
「どう見ても王都じゃないわよ!」
「まあまあ」
俺はスマホを取り出す。
『現在地を解析します』
『解析中……』
『解析完了』
【現在地:異界境界領域】
【座標:不明】
【危険度:A】
俺は周囲を見る。
「ここが異界境界領域……」
「名前からして嫌な場所ね」
モモが剣を抜く。
「何が出てくるかわからないわ」
「そうだな」
俺も神器を構える。そのとき、スマホが震えた。
『異界の痕跡を大量に検出』
【地球由来:多数】
【ライトディア由来:多数】
【未知の世界由来:1】
「未知の世界由来? が1?」
俺は画面を見つめる。
「3つ目の世界があるってことか?」
クロエが周囲を見回す。
「恐らくな」
「前に言ってた、地球とライトディアのどちらでもない場所か?」
「ああ」
クロエが頷く。
「ここは複数の世界の境界が重なっている」
「じゃあ、ここから地球へ行くこともできるのか?」
「可能性はある」
「本当か!?」
思わず声が大きくなる。
「まあ落ち着け」
「落ち着けと言われてもな。だって帰れるかもしれないんだぞ」
俺はスマホを見る。
【異界ゲート:3】
【接続先:地球・ライトディア・???】
「本当にあるな」
俺は地球の表示を見つめる。帰れる。そう思った瞬間、胸の奥が熱くなった。
「タロー……」
モモが心配そうに俺を見る。
「大丈夫だ」
俺は笑う。
「まだ帰れると決まったわけじゃない。それに……」
俺は仲間を見る。
「みんなを置いて帰るつもりもない」
「タローさん……」
レモンが微笑む。
「私たちも一緒に行きますよ」
「そうね」
モモも頷く。
「ここまで来たんだから」
「もちろん私もよ!」
グレイプが胸を張る。
「私がいないと何かあったとき困るでしょう?」
「それ、自分で言うのか」
「事実でしょう!」
「まあ、確かに助かってるけど」
「でしょう!」
グレイプが嬉しそうに笑う。
「私もいる」
クロエが静かに言う。
「だから安心しろ」
「クロエ……」
「ありがとう」
そのときだった。
——ズズズズズ……。
地面が揺れ始める。
「何!?」
グレイプが杖を構える。地面に走っていた亀裂から、黒い霧が溢れ出してくる。
『警告』
『高濃度の異界魔力を検出』
【危険度:S】
「S!?」
俺は思わず声を上げる。
「さっきより危険度が上がってるじゃないか!」
「来るぞ!」
クロエが剣を抜く。黒い霧の中から、巨大な影が姿を現した。しかし、それは魔物ではなかった。人のような姿をしている。
「……人?」
モモが呟く。影はゆっくりとこちらへ歩いてくる。
「誰だ?」
尋ねても影は答えようとしない。ただ、こちらを見つめている。するとスマホが震えた。
『未知の存在を確認』
【名称:???】
【種族:???】
【所属世界:???】
「全部わからん……このスマホの解析機能、肝心なところで役に立たないな!」
「タロー、今はそれどころじゃないでしょう!」
グレイプが叫ぶ。影が手を上げた。
——ズンッ!
凄まじい魔力が周囲へ広がる。
「くっ……!」
俺たちは一斉に身構える。しかし、影は攻撃してこなかった。
「こんにちは。異界の神器を持つ者たち」
少女の声だった。
「え?」
俺は目を見開く。黒い霧が晴れていく。そこに立っていたのは――銀髪の少女だった。
「お前……!」
王都の教会で会った少女。そして、これまで何度も俺たちの前に現れていた少女だった。
「どうしてここに……?」
モモが驚く。銀髪の少女は静かに微笑んだ。
「あなたたちをここへ呼んだのは私よ」
「……は?」
俺は固まる。
「お前が?」
「ええ」
「じゃあ、あの転送装置も……」
「私が起動させたわ」
「待て待て待て!」
俺は頭を抱える。
「勝手に人をよくわからん場所へ飛ばすなよ! 拒否権なしかよ!」
「でも、ここへ来なければ知ることのできない真実があるもの」
「真実?」
銀髪の少女は俺を見る。
「ええ」
そして、ゆっくりと口を開いた。
「あなたが持っている異界の神器。その本当の役割についてよ」
スマホが震える。
『重要情報を検出』
『異界の神器に関する情報を更新します』
【神器の本来の役割:???】
「また謎?」
俺は画面を見ながらため息をつく。
「このスマホ、本当に謎を増やすの好きなんだな……」
銀髪の少女は小さく笑った。
「その謎を、これからあなたたちは知ることになるわ」
そして、彼女の背後に巨大な扉が現れた。
——ゴゴゴゴゴ……。
「この先に、答えがある」
俺たちは巨大な扉を見つめる。
「行くしかないな」
俺はスマホを握り締めた。
「この世界の秘密を全部調べてやる」
扉がゆっくりと開いていく。その先には、無数の世界へ繋がる光の道が広がっていた。




