第33話 村に到着しました
俺たちは神樹の塔へ向かって街道を進んでいた。さっきの戦闘で少し疲れはしたが、目的地までの道がわかったことで気持ちはかなり楽になっている。
「それにしても、あと75kmか……。長いなぁ」
俺はスマホの地図を見る。
「今日中に着くのは無理そうね」
モモが空を見る。空の一部がオレンジ色に染まりかかっている。
「もう少しで夕方になるわ」
「だったら、今日は近くの村で休みましょう」
レモンが提案する。
「さっき地図に村が表示されてたよな?」
「はい。ここから少し歩けばあります」
「よし。今日はそこで休もう」
「賛成!」
グレイプがすぐに反応する。
「私、もうお腹空いたわ! お腹ペコペコ!」
「お前、さっき魔物と戦ったばかりだろ」
「だからお腹が空いたのよ!」
「あー、なるほど……。疲れたら逆に空かない気がするけどな」
俺たちはそのまま歩き続ける。しばらくすると、遠くに小さな村が見えてきた。木で作られた柵に囲まれていて、入口には小さな門がある。
「見えてきたな」
「やっと休めるわ!」
グレイプが走り出す。
「ちょっと待て!」
「元気だなぁ。全然疲れてないだろ」
俺たちも慌てて後を追う。村の入口へ到着すると、門番らしき男が俺たちに気づいた。
「冒険者か?」
「はい」
俺が答える。
「神樹の塔へ向かって旅をしてるんです」
「神樹の塔だと?」
門番の表情が変わる。
「そうですけど……何か問題でもあるんですか?」
「いや……」
門番が少し迷ったあと、口を開く。
「最近、神樹の塔へ向かった冒険者が戻ってきていないんだ」
「戻ってきてない?」
モモが眉をひそめる。
「そうだ」
門番が頷く。
「この村から神樹の塔へ向かう者は昔から多くてな。だがここ最近は誰も戻ってこない」
「それって……」
レモンが不安そうにする。
「塔で何か起きてるんですか?」
俺が尋ねる。
「さあ、俺にはわからん。ただ、最近は森の方から妙な音が聞こえる」
「妙な音?」
「夜になると聞こえるんだ。低い唸り声みたいな音がな」
クロエが口を開く。
「森に魔物がいる可能性があるな」
「それだけならいいんだが……」
門番が森を見る。
「最近は魔物の数も増えている」
俺はスマホを取り出す。
『周辺情報を更新します』
『神樹の塔周辺に異常を確認』
【魔力濃度:通常の2.7倍】
「この濃度……やっぱり何かあるみたいだな」
「どうする?」
モモが俺を見る。
「今日は村で休む。そして明日、森を抜けて神樹の塔へ向かう」
「決まりね」
グレイプが頷く。
「まずは宿を探しましょう!」
「そうだな。泊まる宿がないと」
村の中へ入ると、小さな宿が1軒だけあった。
「ここしかないみたいだな」
俺たちは宿へ入る。
「いらっしゃい」
宿の女将が笑顔で迎えてくれる。
「5人なんですが、部屋は空いてますか?」
「5人ね。ちょうど5つ部屋が空いてるよ」
「そうですか。ありがとうございます。助かった……」
俺たちは一旦、それぞれの部屋へ荷物を置き、それから1つの部屋に集まった。
「ふぅ……今日は色々あったな」
「魔物とも戦ったしね」
モモが椅子に座る。
「でも、神樹の塔までの道がわかったのは大きいわ」
「そうだな。道がわかればなんとか辿り着けるはずだ」
レモンは神妙な面持ちになった。
「明日は森を越えないといけませんね」
「森か……」
俺はスマホに表示された地図を見る。
『明日の推奨ルートを表示します』
【神樹の森】
【危険度:A】
「危険度Aってかなり危険だな」
「楽しそうね!」
グレイプが楽しそうに笑う。
「何でグレイプは危険度が上がると楽しそうになるんだよ」
「強い魔物がいるってことでしょう? 私の実力を示すいい機会じゃない!」
「まあ、そうだけどさ」
クロエが窓の外を見る。
「何かいる」
「え?」
俺も他のみんなも窓へ近づく。村の外——暗くなった森の奥から、何かがこちらを見ている。
——ギラッ。
「今、目が光った?」
モモが剣に手を添える。
「魔物でしょうか?」
「いや……」
クロエが首を横に振る。
「魔力を感じない」
「じゃあ一体何なんだ?」
俺が目を凝らす。森の中から、白い影がゆっくりと現れた。
「……!」
銀色の髪。
「またお前か!」
銀髪の少女だった。少女はこちらを見上げる。
「こんばんは」
「何でここにいるんだ?」
「あなたたちと同じよ」
「同じ?」
「神樹の塔へ行くの」
「だったら一緒に行った方が——」
「それはできないわ」
「どうしてだよ!」
少女は笑う。
「明日の朝、森へ入るのでしょう?」
「ああ」
「そう。なら気をつけて」
「何か知ってるのか?」
少女は森の奥を見る。
「森の中にはあなたたちを待っているものがいるわ」
「待っているもの?」
「ええ」
少女はそれだけ言うと、森の中へ戻っていく。
「ちょっと待て!」
俺が追いかけようとした瞬間、スマホが震えた。
『未知の存在を検出』
【対象:銀髪の少女】
【危険度:測定不能】
「測定不能ねぇ」
俺はスマホを見つめる。そして翌朝。俺たちは神樹の森へ向かうことになった。そこで何が待っているのか。今の俺には、まだわからなかった。




