第31話 神樹の塔へ向かってます
俺たちは王都を出て、神樹の塔へ向かっていた。王都を離れるのはこれが初めてではないが、今回は今までとは少し違う。神樹の塔まではかなりの距離があり、しばらくは旅をすることになりそうだ。
「神樹の塔って、どんなところなの?」
モモが隣を歩きながら尋ねる。
「俺も詳しくは知らないな」
俺はスマホを取り出して地図を確認する。
『目的地までの距離を確認します』
【神樹の塔まで:87km】
「87kmか……」
「結構遠いわね」
グレイプが地図を覗き込む。
「これ、歩いて行くの?」
「歩きは基本」
「えぇ〜そんなぁ〜」
「お前、ダンジョンではあんなに元気だっただろ」
「ダンジョンと長距離移動は別よ!」
「そう言われてもなぁ」
「でも、途中に村があるみたいですよ」
「村?」
「はい」
レモンがスマホの画面を指差す。画面を見ると、確かに村が表示されていた。
「今日中にそこまで行ければ、宿に泊まれると思います」
「それなら少し安心だな」
俺たちはそのまま街道を歩き続ける。王都から離れるにつれて、周囲の景色も少しずつ変わっていった。大きな建物が並んでいた王都とは違い、街道の周りには広い草原が広がっている。遠くには山々が見え、そのさらに向こうに神樹の塔があるらしい。
「こうして旅をするのも悪くないな」
俺が周囲を見ながら呟く。
「そうね」
モモが笑う。
「最初は王都から出ることになるなんて思ってなかったけど」
「俺もだよ」
異世界に来たばかりの頃はただ元の世界へ帰る方法を探していただけだった。それなのに今では、レモンやグレイプ、モモ、そしてクロエと一緒に旅をしている。最初は自分でも想像していなかった状況だ。
「……不思議だな」
「何がですか?」
レモンが俺を見る。
「いや、何でもないよ」
俺は笑って前を向く。しばらく歩いていると、グレイプが突然足を止めた。
「ねえ」
「どうした?」
「あれ、何かしら?」
グレイプが街道の先を指差す。遠くに小さな建物が見えていた。
「村じゃないか?」
俺はスマホの地図を見る。
『現在地を確認しました』
【目的地まで:12km】
「地図にも村が表示されてる」
「じゃあ、あそこで休めるわね!」
グレイプが元気を取り戻す。
「急に歩く速度が上がったな……」
「宿があるなら当然でしょう! さ、早く行きましょ」
「そ、そうか」
俺たちは村へ向かって歩く。だが、その途中だった。クロエが突然足を止めた。
「待て」
「どうした?」
「前方に何かいる」
クロエは街道の先を見つめている。俺も目を凝らす。しかし、何も見えない。
「本当に? 何もいないように見えるけど?」
グレイプが首を傾げる。
「私にも見えません」
レモンも辺りを見回す。
「魔力を感じる」
クロエが剣に手を添える。
「かなり近い」
「魔力?」
俺はスマホを取り出す。
『周辺スキャンを開始します』
スマホの画面が数秒間点滅する。
『魔力反応を検出』
【対象:???】
【危険度:B】
「Bか……」
「なら、私の出番ね!」
グレイプが杖を構える。
「まだ何も出てきてないけどな」
「準備は大事なのよ!」
「はいはい」
俺も神器を構える。
「全員、気をつけろ」
その瞬間だった。
——ガサガサッ!
街道の脇にある草むらが大きく揺れる。
「来るぞ!」
クロエが叫ぶ。次の瞬間、草むらから巨大な魔物が飛び出してきた。
——ドォン!
「うわっ!」
魔物が地面へ着地すると、周囲の土が大きく跳ねる。
「うわ、結構デカいな」
魔物は俺たちを睨みつけ、大きな口を開く。
「グオオオオオッ!」
「やっぱり戦うしかないわね!」
グレイプが杖を構える。
「私に任せなさい!」
「待ってください!」
レモンが声を上げる。
「この魔物、少し変です!」
「え? 何が?」
「魔力が一定じゃありません」
レモンが魔物を見る。
「まるで……何かに操られているみたいです」
「操られてる?」
俺はスマホを魔物へ向ける。
『対象を解析します』
『解析中……』
画面に表示された情報を見て、俺は眉をひそめた。
【名称:???】
【種族:???】
【状態:異界干渉】
【危険度:B】
「異界干渉……?」
クロエが反応する。
「それは本当か?」
「ああ。スマホにそう表示されてる」
「なら、この魔物も神樹の塔と関係がある可能性が高い」
「いきなり目的地と関係ありそうな奴が出てきたってことか……」
俺は神器を握り締める。
「だったら倒すだけだ!」
「そうね!」
モモが剣を構える。
「5人でいきましょう」
「もちろんよ!」
グレイプが笑う。
「今度こそ私が――」
「はいはい。行くぞ!」
俺たちは一斉に魔物へ向かって走り出した。
——ドドドドドッ!
魔物もこちらへ突っ込んでくる。
その瞬間、スマホが震えた。
『緊急クエストが発生しました』
『異界干渉を受けた魔物を討伐してください』
【報酬:神樹の塔への道標】
「道標って?」
俺は画面を見る。
「この魔物を倒せば、神樹の塔への道がわかるってことか」
クロエが剣を構える。
「ならば倒すぞ」
「よし!」
俺は神器を構えた。
「全員、いくぞ!」
全員武器を構え、戦闘態勢を取った。




