第30話 神樹の塔へ向かいます
教会でレモンが聖女だと判明し、黒い騎士の名前がクロエだということもわかった。これで俺たちのパーティは5人になった。だが俺にはまだ気になることがある。銀髪の少女だ。以前から何度も俺たちの前に現れている。そして、俺たちがここへ来ることまで知っていた。
目的地は表示されないし、とりあえず教会に戻ってきたのだが……。
「なあ」
俺は銀髪の少女を見る。
「お前はここで何をしてるんだ?」
「待っていたのよ」
「誰を?」
「あなたたちを」
「またそれか……」
俺は頭を抱える。
「どうして俺たちのことを知ってるんだ?」
「知っているからよ」
「答えになってないだろ!」
銀髪の少女はクスクスと笑う。
「あなたは面白いわね」
「こっちは全然面白くないんだけど……」
クロエが少女を見る。
「君は相変わらず情報を出さないな」
「あら、クロエじゃない」
「……なぜ私の名前を知っている?」
「さあ?」
「それも教えてくれないのか……」
俺がツッコむと、グレイプが笑う。
「この子、本当に謎だらけね!」
神官が奥の部屋からやってきた。
「皆様、準備ができました」
「えっと、何の準備ですか?」
レモンが尋ねる。
「聖女様の力を確認するための儀式です」
「儀式?」
「はい。教会の地下にある聖堂へご案内します」
「地下……?」
俺はスマホを見る。
『重要施設を検出しました』
【名称:聖女認証聖堂】
【場所:教会地下】
【状態:封印中】
「また地下か……流行ってんのか」
俺たちは神官の案内で教会の奥へ向かう。やがて壁の前で神官が立ち止まった。
「こちらです」
「壁じゃないか」
どう見てもただの壁だ。
「入口はどこだ?」
「聖女様に開いていただきます」
「私が、ですか?」
レモンが驚く。
「はい」
神官が壁の中央を指差す。
「手を触れてください」
レモンが恐る恐る手を伸ばす。
——ピィィィン。
その瞬間、壁に光の紋様が浮かび上がった。
『聖女の適合を確認』
『認証を開始します』
【適合者:レモン】
「……!」
レモンが驚いて手を離す。
「本当に私が開くんですね」
「本当に聖女だったのね!」
グレイプが興味深そうにレモンを見る。
「私もやってみたい!」
「グレイプが触っても開かないと思うぞ」
「やってみなきゃわからないでしょう!」
「やめといた方がいいと思うぞ」
レモンがもう一度壁へ手を触れる。
——ゴゴゴゴゴ……。
壁が左右へ開いていく。その奥には地下へ続く階段が現れた。
「それじゃあ行きましょう」
モモが先に階段を下りる。
「気をつけてね」
「わかってるわ」
俺たちも後に続く。階段を下りていくと、やがて大きな空間へ出た。
「ここが……」
レモンが辺りを見回す。地下には巨大な祭壇があった。祭壇の中央には白い水晶が置かれている。そして、その周囲には見たことのない文字が刻まれていた。俺はスマホを向ける。
『古代文字を検出』
『解析を開始します』
数秒後、画面に文字が表示された。
【異界の門を開く者】
【世界を繋ぐ者】
【聖女の力を持つ者】
「異界の門……」
俺はレモンを見る。
「これって俺たちのことなのか?」
「わかりません……」
レモンが水晶を見る。すると、水晶が突然光り始めた。
——ピカァァァッ!
「うわっ!」
「何!?」
光が部屋中へ広がっていく。
『異界の神器を確認』
『聖女との共鳴を確認』
『世界境界への接続を開始します』
スマホの画面に新しい表示が現れる。
【世界境界安定度:23%】
「23%……」
前に見た数字より上がっている。
「少し安定したのか?」
クロエが頷く。
「恐らく、あの戦いの影響だろう」
「ならよかった」
俺が安心した瞬間だった。
——ドンッ!
地下全体が大きく揺れた。
「きゃっ!」
レモンがよろめく。
「大丈夫!?」
「はい……!」
「何が起きた?」
クロエが剣を抜く。
「魔力反応を感じる」
グレイプも杖を構える。
「敵かしら?」
「いや……」
クロエが首を横に振る。
「これは違う」
水晶の前に、突然1つの映像が浮かび上がった。そこに映っていたのは、見知らぬ場所だった。
「何だここ?」
映像の中には巨大な森が広がっている。その中央には、空へ伸びる巨大な塔が立っていた。
『新たな目的地を確認』
【目的地:神樹の塔】
『異界の痕跡を検出』
『調査を推奨します』
「神樹の塔……?」
グレイプが目を輝かせる。
「面白そうじゃない!」
「お前は本当にこういうの好きだな」
「当然でしょう!」
モモも映像を見る。
「王都の外にあるの?」
「そうみたいだな」
俺はスマホの地図を確認する。しかし、目的地まではかなり遠い。
「結構遠いな……」
「旅になるわね」
モモが笑う。
「新しい場所へ行くのは楽しそう」
「私も行きたいです」
レモンが頷く。
「私も同行する」
クロエも答える。
「決まりだな」
俺はスマホを閉じる。
「次の目的地は神樹の塔だ」
そのとき、後ろから声がした。
「そう。やっとそこへ向かうのね」
「……!」
銀髪の少女がいつの間にか水晶の前に立っていた。
「お前、いつからそこにいたんだ?」
「最初からいたわよ」
「気づかなかった……」
少女は神樹の塔が映った水晶を見る。
「そこへ行けば、あなたたちは1つ目の答えを知ることになるわ」
「1つ目?」
「ええ」
「じゃあ、全部でいくつあるんだ?」
少女は笑う。
「それはあなたたちが自分で見つけることね」
少女はそのまま歩き出す。
「待て!」
俺が呼び止める。
「お前も神樹の塔へ行くのか?」
少女は振り返る。
「もちろん」
「だったら一緒に――」
「それはできないわ」
「何で?」
「私は私の目的があるから」
そう言うと、少女は階段の方へ歩いていく。
「また会いましょう」
そして、銀髪の少女の姿は見えなくなった。
「……結局、何者なんだよ」
もう悩んでいても仕方がない。俺たちには次の目的地ができた。神樹の塔。そこに異界の痕跡があるなら、行くしかない。




