第29話 謎が多すぎます
俺たちは異界門の前に立っていた。巨大な円形の装置は静かに光っている。今すぐ起動できるようだが、銀髪の少女から言われた言葉が気になっていた。
「本当に起動しなくていいの?」
グレイプが装置を見る。
「ああ。さっきの子も戻ってこられなくなるって言ってたしな」
「でも、異界門を使えば異界へ行けるんでしょう?」
「どうなんだろうな」
俺はスマホを見る。
『異界門の詳細解析を開始します』
『解析中……』
画面に次々と情報が表示される。
【名称:異界門】
【状態:休眠】
【接続先:???】
【起動条件:聖女+異界の神器】
【危険度:測定不能】
「やっぱり危険度が測定不能だ」
「それなら使わない方がいいわね」
モモが頷く。
「でも、調べるだけならできるんじゃない?」
「そうだな」
俺は装置の周囲を調べる。
「何か手がかりがあるかもしれない」
俺たちは地下空間を調べ始めた。壁には古い文字が大量に刻まれている。だが、俺には全く読めない。
「これ、何て書いてあるんだ?」
「古代文字ね」
グレイプが壁を見る。
「私も少しなら読めるけど……」
「おっ、さすが天才魔術師」
「こういうところで私の出番が来るのよ!」
グレイプが胸を張る。
「それで何て書いてある?」
「えーっと……」
グレイプが文字を読む。
「門を開く者は――」
「うん」
「聖なる力を持つ者と――」
「うんうん」
「神器を持つ者を必要とする」
「さっきスマホに出てた情報と同じじゃないか!」
「仕方ないでしょう!」
グレイプが怒る。
「そう書いてあるんだから!」
「まあ、わかっただけでもいいか」
そのとき、レモンが壁の別の場所を見つめていた。
「タローさん」
「どうした?」
「ここに何か書いてあります」
俺たちはレモンのところへ集まる。
「これは……」
壁には他とは違う文字が刻まれていた。
「読めるか?」
グレイプが首を傾げる。
「これは古代文字じゃないわね」
俺はスマホを向ける。
『未知の文字を解析します』
『解析中……』
数秒後、画面に翻訳された文字が表示された。
『異界門は世界と世界を繋ぐための門である』
「やっぱり門なんだな」
さらに文字が続いている。
『しかし、門を開けば境界は不安定になる』
『門を使用する場合、必ず世界の安定を確認せよ』
「世界の安定……」
俺はスマホを見る。
【ライトディア:安定】
【異界:不安定】
「地球側が不安定なのか?」
「そうみたいですね」
レモンが答える。
「でも、どうして地球が不安定なんだ?」
「それは……」
クロエが黙り込む。
「知ってるのか?」
「可能性ならある」
「教えてくれ」
クロエはしばらく考えたあと、口を開いた。
「異界門が複数存在しているからだ」
「複数?」
「ああ」
クロエが装置を見る。
「この門だけではない。世界のどこかに、同じような門がいくつも存在している」
「じゃあ、それを全部調べる必要があるってことか」
「そうなる」
俺はスマホを見る。
『新情報を確認しました』
【異界門:複数存在】
『異界門の位置情報を検索します』
地図が表示される。
【確認済み:1】
【未確認:???】
「やっぱり他にもある」
「どこにあるの?」
モモが画面を見る。
「まだ場所までは出てないな」
その瞬間、異界門が突然光った。
——ピィィィン!
「何!?」
グレイプが杖を構える。
『異界門が外部から起動されています』
「誰かが起動してる!?」
俺は装置を見る。中央に黒い光が集まっていく。
「止められないのか?」
『停止処理を開始します』
『失敗』
「おい!」
黒い光が徐々に大きくなる。
「タローさん!」
レモンが俺を見る。
「どうしますか!?」
「とにかく離れろ!」
俺たちは後ろへ下がる。
——ゴゴゴゴゴゴ……。
異界門の中央に、黒い穴が開いた。
「これ……門が開いてるのか?」
「違う」
クロエが剣を構える。
「これは正常な起動じゃない」
「じゃあ何なんだ?」
「向こうから無理矢理開けようとしている」
「向こうから……?」
黒い穴の向こうに、何かが見えた。
「誰かいる!」
モモが叫ぶ。人影がゆっくりと近づいてくる。
「まさか……」
俺が神器を構える。だが、人影は門を抜けることなく、その場で止まった。そして、こちらへ手を伸ばす。
——ピィィィン。
『外部存在との接続を確認』
【対象:???】
【世界:???】
『警告』
『現在、接続を拒否することはできません』
「……!」
黒い穴の向こうから声が聞こえた。
「ようやく見つけた」
俺たちは一斉に身構える。
「誰だ!」
俺が叫ぶ。しかし、返事はなかった。次の瞬間、異界門が激しく震え始める。
——ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
『緊急警告』
『異界門の暴走を確認』
【門の安定度:12%】
「このままだと門が壊れる!」
「タロー!」
モモが叫ぶ。
「どうするの!?」
「俺が閉じる!」
「どうやって!?」
「知らない!」
「知らないの!?」
「スマホが何とかしてくれる!」
「またそれ!?」
俺は神器を異界門へ向ける。
『異界門との接続を開始します』
『神器適合率を確認』
【適合率:50%】
『閉門処理を開始します』
神器が眩しく光る。
「いけぇぇぇ!」
——ズガァァァン!
光が異界門を包み込む。黒い穴が少しずつ小さくなっていく。
「よし……!」
だが、その瞬間。
「タロー」
門の向こうから、誰かの声が聞こえた。俺は動きを止める。
「……?」
聞いたことのない声だった。
「次に会うときは、ちゃんと話をしましょう」
——ブツン。
異界門が完全に閉じた。
「……何だったんだ?」
俺はスマホを見る。
『異界門の閉鎖を確認しました』
『新たな目的地を発見』
【次の目的地:???】
俺は画面を見つめる。
「目的地が表示されてない」
グレイプがため息をつく。
「この世界、謎が多すぎない?」
「俺もそう思うよ」
しかし、今度は画面の下に新しい文字が表示されていた。
『目的地の手がかり:銀髪の少女』
「……」
俺たちは全員、同時に顔を見合わせた。




