第28話 王都には門があります
俺たちは王都中央広場へ向かって歩いていた。さっき見つけた異界反応は、王立図書館にあったものよりもかなり強い。スマホを見るたびに、画面に表示された反応値が上昇している。
「タロー、まだ反応はあるの?」
モモが尋ねる。
「ああ。むしろさっきより強くなってる」
【異界反応:高】
【距離:500m】
「500mか……」
「もうすぐね」
グレイプが周囲を見る。
「でも、中央広場に異界と繋がる場所なんてあったかしら?」
「さあ……」
王都には何度も来ているが、異界のことを気にして街を歩いたことなんてない。もしかすると、今まで普通の街だと思っていた場所に、異界に関係するものが隠されているのかもしれない。中央広場へ到着すると、そこには大勢の人が集まっていた。
「凄い人だな」
「今日は何かあるのかしら?」
グレイプが辺りを見回す。
「祭りでもやってるの?」
「そういう感じではないですね」
レモンが周りを見渡す。俺はスマホを見る。
『異界反応を確認』
【反応強度:S】
「S!?」
これは驚いた。
「今まで見た中で一番強いぞ!」
「そんなに?」
モモが驚く。
「じゃあ、この広場のどこかにあるってことね」
「探してみよう」
俺たちは広場を歩き回る。しかし、何も見つからない。
「反応はこの辺りなんだけどな……」
俺がスマホを見る。すると、画面の表示が突然変わった。
『地下構造を検出しました』
【異界反応:地下】
「地下?」
俺は地面を見る。
「この下に何かあるみたいだ」
「また地下なの?」
グレイプが嫌そうな顔をする。
「前も地下だったじゃない!」
「俺に言われてもなぁ……」
クロエが周囲を見る。
「入口を探そう」
俺たちは広場の周辺を調べる。すると、中央にある噴水の近くでスマホが反応した。
『隠し装置を検出』
【認証条件:異界の神器】
「ここだ」
俺は神器を噴水へ近づける。
——ピッ。
噴水が突然止まった。
「え?」
次の瞬間、噴水の中央に魔法陣が浮かび上がった。
——ゴゴゴゴゴ……。
「ちょっと待って!」
グレイプが慌てる。
「これ、また地下へ行くんじゃないでしょうね!?」
「多分……」
「嫌な予感しかしないわ!」
地面がゆっくりと開いていく。その下には、階段があった。
「やっぱり地下か」
「そんなあ! たまには上でも良くない!?」
俺たちは周囲を確認する。
「人に見られてないよな?」
事情を知らない人に見られたらいろいろ面倒だからな。
「大丈夫みたいです」
レモンが頷く。
「よし、行こう」
俺たちは階段を下りていく。しばらくすると、地下に巨大な空間が広がっていた。
「広いな……」
そこには巨大な円形の装置が置かれていた。壁には古い文字が刻まれている。
「これも異界研究施設の一部なのか?」
クロエが装置へ近づく。
「いや、違う」
「違うのか?」
「これはもっと古い」
クロエが装置を見つめる。
「研究施設が作られる前から存在していたものだ」
「じゃあ何のために?」
「わからない」
クロエが即答した。
「クロエでもわからないのか」
「ああ」
俺はスマホを向ける。
『古代装置を解析します』
『解析中……』
『解析完了』
【名称:異界門】
【状態:休眠中】
【接続先:???】
「異界門……」
レモンが呟く。
「ここから異界へ行けるということですか?」
「そうかもしれないな」
俺が装置を見る。
「でも接続先がわからないな」
すると、装置の中央に小さな光が灯った。
——ピィィィン。
『異界門を起動できます』
『起動条件を確認します』
【必要条件:聖女】
【必要条件:異界の神器】
【必要人数:2】
「聖女……」
レモンが自分を指差す。
「私ですか?」
「そうじゃないかな」
スマホには、レモンの名前が表示されている。
【起動候補:レモン】
「つまり、レモンと俺がいれば起動できるってことか」
「でも、どこへ繋がるの?」
モモが尋ねる。
「それが問題だな」
俺は装置を見る。そのとき、後ろから声が聞こえた。
「起動しない方がいいわ」
「……!」
振り返る。そこには銀髪の少女が立っていた。
「お前……また! というか俺たちをつけてるのか?」
「この門はまだ使うべきじゃない」
少女は問いには答えず、装置を見る。
「何でだ?」
クロエが尋ねる。
「今のあなたたちでは、戻ってこられなくなるから」
「戻ってこられない?」
俺は眉をひそめる。
「それってどういう意味だよ?」
「そのままの意味よ」
少女は俺を見る。
「この門の先にはあなたたちが知らない世界がある」
「異界ってことか?」
「ええ」
少女は頷く。
「そして、その世界には――」
そこで言葉を止める。
「何がいるんだ?」
「今はまだ知らなくていいわ」
「少しくらい教えてくれよ!」
少女はそっと意味深な笑みを浮かべた。
「あなたたちの準備ができたら教えてあげてもいいわ」
そう言うと、少女は踵を返した。
「待て!」
俺が追いかけようとした瞬間、少女の姿が光に包まれる。
——ピィィィン。
「消えた……」
モモが驚く。
「一体何者なのよ、あの子……」
グレイプも呆然としている。俺は少女が消えた場所を見る。
「絶対何か知ってるだろ……」
そのとき、スマホが震えた。
『新たなクエストが発生しました』
『異界門を調査せよ』
【目的:異界門の起動条件を確認する】
【報酬:新機能解放】
「新機能か……」
俺は異界門を見る。
「だったら調べるしかないな」




