第27話 探します
教会を出た俺たちは、王都の大通りを歩いていた。パーティメンバーが5人になったことで、前よりも少しだけ賑やかになった気がする。特にクロエが加わったことで、これまでとは違う安心感がある。
「それで、これからどうするの?」
モモが俺を見る。
「異界の痕跡を探すんでしょ?」
「そうだな」
俺はスマホを取り出す。
『異界の痕跡を検索します』
『王都周辺をスキャン中……』
しばらくすると、地図の上にいくつかの光点が表示された。
【異界反応:3】
「3つもあるのか?」
「どこにあるの?」
グレイプが画面を覗き込む。
【反応1:王立図書館】
【反応2:王都中央広場】
【反応3:王都西門付近】
「全部王都の中じゃない」
「王都って、異界に関係する場所が多すぎないか?」
「それだけ昔から異界について研究していたということでしょうか」
レモンは考え込んでいる。
「まずは一番近い場所へ行こう」
俺たちは地図に表示された反応へ向かう。最初に向かったのは王立図書館だった。
「またここに来るとは思わなかったわね」
グレイプが図書館を見上げる。
「最近地下に行ったばかりなのに」
「まあな」
俺はスマホを取り出す。
『異界反応を確認』
【反応強度:低】
「この辺りだな」
俺たちは図書館の周囲を調べる。しかし、それらしいものは見つからない。
「何もないわね」
モモが周囲を見回す。
「スマホは反応してるんだよな?」
「ああ」
俺が画面を見る。
そのときだった。
『異界反応が上昇しました』
【反応強度:中】
「急に強くなった?」
「何か近づいてきてるんじゃない?」
グレイプが杖を構える。
「魔物とか?」
「いや、反応の種類が違う」
クロエが周囲を見る。
「何かがこちらへ干渉している」
「干渉?」
次の瞬間、図書館の入口付近に小さな光が現れた。
——ピィィィン。
「何だあれ?」
光は徐々に大きくなっていく。
『未知の異界反応を検出』
『解析を開始します』
【対象:???】
「正体不明!? 情報が全然ない!」
俺が叫ぶ。
「せめて名前くらい表示してくれよ……」
「スマホに文句を言っても仕方ないでしょう」
確かにモモの言う通りではある。光の中から、何かが落ちてきた。
——ドサッ。
「何か落ちてきたわよ!」
グレイプが駆け寄る。
「待て!」
クロエが止める。
「不用意に近づかない方がいい。何らかの罠かもしれない」
俺たちは慎重に近づく。地面に落ちていたのは、小さな黒い箱だった。
「箱?」
俺がスマホを向ける。
『対象を解析します』
【名称:異界通信端末】
【状態:破損】
【用途:異界間通信】
「異界通信端末……?」
「昨日使った通信と同じものかしら?」
グレイプが尋ねる。
「多分そうかもな」
俺が箱へ手を伸ばす。
「タローさん、気をつけてください」
レモンが心配そうに言う。
「ああ、気をつけるよ」
俺は箱を拾い上げる。その瞬間――。
——ピッ。
箱の表面に文字が浮かび上がった。
『接続先を確認しました』
【接続先:ライトディア】
『通信記録を再生します』
「え?」
突然、箱から声が聞こえた。
『こちらは異界観測施設です』
「……!」
俺たちは顔を見合わせる。
『現在、世界境界の異常を確認しています』
『これより、緊急警告を――』
そこで音声が途切れた。
『……逃げ……』
——ブツッ。
「何だったんだ?」
俺が箱を見る。
『通信記録の再生が終了しました』
「途中で切れたな」
「何か重大なことを伝えようとしていたみたいね」
グレイプが真剣な顔になる。
「異界の危険についてじゃないかしら?」
クロエが箱を見つめる。
「この端末はかなり古い」
「古い?」
「ああ。おそらく数百年前のものだ」
「数百年も前の……!?」
俺は驚く。
「そんな昔から異界と通信してたのか?」
「この世界では昔から異界について研究されていたのではないでしょうか」
レモンが言う。
そのとき、どこからか声が聞こえてきた。
「違うわ」
振り返ると、さっきの銀髪の少女がいた。
「いつからそこに……」
少女は箱を見つめている。
「これは研究のために作られたものじゃないわ」
「じゃあ何なんだ?」
「逃げるためのものよ」
俺は眉をひそめる。
「逃げる?」
「ええ」
銀髪の少女は静かに答える。
「この端末を使った人たちは、何かから逃げようとしていたの」
「逃げるって何から?」
「それは――」
少女が空を見上げる。
「まだ言わない方がいいわ」
「何でだよ。いい加減もったいぶらずに教えてくれよ」
少女は微笑む。
「そのうちわかるわ」
「絶対そのうちって言うと思ったよ!」
グレイプが笑う。
「タロー、諦めた方がいいわよ。ずっとこんな感じだもの」
「俺は諦めないからな!」
俺がそう言った瞬間、スマホが震えた。
『新たな異界反応を確認しました』
【反応2:王都中央広場】
【反応強度:高】
「次の場所が見つかった」
俺はスマホを見る。
「中央広場だ」
クロエが頷く。
「行こう」
俺たちは再び歩き始める。しかし、俺は気づいていなかった。少し離れた建物の屋上から、誰かが俺たちを見つめていることに。
「やっぱり来た」
小さな声が王都の街に消えていった。




