第26話 新たな旅に出ます
研究施設を出た俺たちは、王立図書館の地上へ戻っていた。外へ出ると、眩しい光が目に入る。長い時間地下にいたせいか、太陽の光がやけに眩しく感じた。
「やっと外に出られたわね!」
グレイプが大きく伸びをする。
「やっぱり地上の方がいいわ! 空気が新鮮だもの!」
「ダンジョンは楽しいって言ってなかったか?」
「ダンジョンと地下施設は別よ!」
「そういうものか?」
今まで起きたことを考えると、俺たちはかなり遠くまで来た気がする。異界の神器、世界の境界、研究施設。そして、これから先に何が待っているのか。俺はスマホを見る。
『メインクエストを更新しました』
【目的:世界に存在する異界の痕跡を調査せよ】
モモが画面を覗き込む。
「また新しいクエストね」
「ああ」
「次はどこへ行くの?」
「それが……」
俺は画面を確認する。
【目的地:王都】
【詳細:異界に関する情報を収集してください】
「王都から出なくていいみたいだな」
「それなら楽じゃない!」
グレイプが嬉しそうに笑う。
「しばらく休めるわね!」
「いや、情報収集だから休めるとは限らないぞ」
俺がそう言った瞬間、黒い騎士が口を開いた。
「まずは王都の教会へ行こう」
「教会?」
レモンが不思議そうな顔で首を傾げる。
「何かあるんですか?」
「ああ」
黒い騎士はレモンを見る。
「君について確認する必要がある」
「私……ですか?」
レモンが不思議そうな顔をする。
「どういうことだ?」
俺が尋ねると、黒い騎士は少し黙ってから答えた。
「レモンの正体についてだ」
「正体?」
スマホを開く。
【名前:レモン】
【職業:???】
「確かに職業が表示されないままだな」
「私も気になっていました」
レモンが自分のステータスを見る。
「ですが、どうして教会なんですか?」
「確認すればわかる」
「確認すればって……相変わらず説明が足りないな……」
俺たちは王都の教会へ向かって歩き始めた。しばらくして教会へ到着すると、入口に見覚えのある銀髪の少女が立っていた。
「あれは……」
俺は足を止める。以前にも何度か見かけた少女だ。銀色の髪に、どこか不思議な雰囲気を纏っている。少女はこちらを見ると、静かに近づいてきた。
「また会ったわね」
「やっぱりお前か」
名前はまだ知らない。だがこの少女には何度も不思議なところで出会っている。
「あなたたちがここへ来ることは知っていたわ」
「知ってた? なぜ?」
俺が聞き返すと、少女は微笑むだけだった。
「中へ入りましょ」
「いや、ちょっと待ってくれ」
俺が呼び止める。
「お前、一体何者なんだ?」
少女は少しだけ首を傾ける。
「それは、もう少し後でいいでしょう。少なくとも今知る必要はないわ」
「どういうことだよ……」
俺が頭を抱える。
「謎を謎にしたまま進むのやめてくれないかな」
「謎は謎だから謎と呼ぶのよ。謎が明かされたらそれは謎じゃなくなるわ」
「確かに謎は謎だから謎と呼ばれるし、謎が明かされたら謎じゃなくなるよな。だから謎を謎じゃなくしてほしいってことだよ。謎がずっと謎だったら困るだろう」
「謎は謎だからいいんじゃない。すぐ明かされてしまう謎なんてつまらないわ」
「どうでもいいよそんなこと!」
そうこうしているうちに教会の扉が開いた。
「お待ちしていました」
神官が俺たちを迎える。
「特に……そちらの2人を」
神官はレモンと黒い騎士を見る。
「私たちを?」
「はい」
神官がレモンを見る。
「あなたは聖女様ですね」
「え……?」
レモンが目を丸くする。
「私が……聖女?」
俺はすぐにスマホを向ける。
『特殊解析を開始します』
『職業情報を更新します』
【名前:レモン】
【職業:聖女】
「聖女だったのか!?」
「私も知りませんでした……」
レモンが驚いている。
「今までずっと表示されなかったのは、隠されていたからでしょうね」
銀髪の少女が静かに言う。
「なるほど……わからん」
俺が懸命に思考を巡らせていると、今度は神官が黒い騎士を見る。
「そして、あなたは――」
黒い騎士が振り返る。
「私の名前はクロエだ」
「え?」
俺たちは全員固まった。
「クロエ?」
「ああ……私の名はクロエだ」
「最初から名前くらい教えてくれよ!」
「聞かれなかったからな」
「普通は自分から名乗るだろ!」
グレイプが笑い出す。
「ふふっ、それはそうね!」
「面白かったか……?」
クロエは俺を見る。
「これから先、私は君たちと共に行く」
「本当か?」
「ああ」
「まあ! それは心強いですね」
レモンも嬉しそうに笑う。
「では、これからもよろしくお願いします。クロエさん」
「ああ。こちらこそ」
その瞬間、スマホが震えた。
『パーティメンバー情報を更新しました』
【メンバー:5人】
【タロー】
【レモン:聖女】
【グレイプ:魔術師】
【モモ:剣士】
【クロエ:黒騎士】
「これで正式に5人か。改めてよろしくな」
「よろしくお願いします」
「よろしくっ」
「よろしくね」
「よろしく頼む」
パーティメンバーは5人に増え、より一層賑やかになった。しかし、銀髪の少女の正体は未だわからないままだ。




