20話 もう1人の俺ですか?
スマホの画面に表示された文字を見つめる。
『新たなクエストが発生しました』
『もう1人のタローを探せ』
【目的地:???】
【推奨探索難易度:測定不能】
「……」
「どうしたの?」
モモが俺の顔を覗き込む。
「いや……目的地が……どうやって探せばいいんだろうって」
「確かにそうね」
グレイプがスマホを見る。
「せめて場所くらい表示してほしいわ」
「だよな」
俺がため息をつくと、黒い騎士が口を開いた。
「目的地なら私が知っている」
「え?」
俺たち全員が黒い騎士を見る。
「知ってるのか?」
「ああ」
黒い騎士は頷く。
「どこなんだ?」
「王都だ」
「王都? 王都のどこだ?」
「王都の地下にある場所だ」
黒い騎士は広間の奥を見る。
「このダンジョンはただの魔物が棲む場所ではない」
「じゃあ何なの?」
グレイプが尋ねる。
「世界の境界を監視するための施設だ」
「施設……?」
「かつてこの世界と異界を繋ぐために作られた」
俺はダンジョン・コアを思い出す。
「だからスマホと接続したのか」
「ああ」
黒い騎士が頷く。
「そしてさっきの通信もこのダンジョンを経由していた」
「じゃああいつもここから俺に通信してきたってことか?」
「違う」
黒い騎士は首を横に振る。
「あいつは向こう側からこちらへ干渉してきた」
「向こう側から?」
「異界の反対側だ」
俺は眉をひそめる。
「俺の世界ってことか?」
「それも違う」
「え?」
黒い騎士は俺を見る。
「お前の世界とこの世界。そのどちらでもない場所だ」
「何だよそれ」
スマホが震えた。
『新しい情報を検出しました』
『世界構造を更新します』
【世界:ライトディア】
【異界:地球】
【???:未登録】
俺は画面を見つめる。
「あいつはそこにいるのか?」
「恐らくな」
「だったらそこへ行けばいいじゃないか!」
「簡単にはいかない」
黒い騎士が答える。
「世界の境界を越えるには神器だけでは足りない」
「じゃあ何が必要なんだ?」
「器だ」
「……レモンとモモが?」
2人を見る。レモンは少し驚いた顔をしていた。
「私たちが……?」
「まだ確定ではない」
黒い騎士が言う。
「だが神器がお前たちを候補として選んだ理由もそこにある」
「つまり俺が元の世界へ帰るためにも2人が必要ってことか?」
「そういうことだ」
俺は黙り込む。元の世界へ帰る。それは俺がずっと望んでいたことだ。でも――。
「2人を危険な目に遭わせるのは嫌だな」
「タローさん」
レモンが笑う。
「私は大丈夫ですよ」
「私も」
モモが頷く。
「ここまで一緒に来たんだから」
「でも……」
「それに」
モモが俺を見る。
「タローだけ帰る方法を探すなんて、もう無理でしょう?」
「私も行くわよ!」
グレイプが胸を張る。
「お前は器じゃないけどな」
「それは今言わなくていいでしょう!」
グレイプが怒る。
「ですが、グレイプさんがいると安心します」
レモンが笑う。
「そうでしょう! そうでしょう!」
グレイプが嬉しそうに胸を張る。
「やっぱり私が必要なのよ!」
「切り替え早っ」
黒い騎士がこちらへ歩いてきた。
「話は決まったようだな」
俺は頷く。
「王都へ戻ろう」
その瞬間、スマホが震えた。
『新たなクエストが発生しました』
『王都地下遺跡を探索せよ』
『目的地:王立図書館地下』
『推奨パーティ人数:5』
「王立図書館の……地下……?」
俺は驚く。
「あの図書館に地下なんてあったのか?」
「私も知らないわ」
グレイプが首を傾げる。
「図書館なら何度も行ったことあるけど……地下に行ったことはないわね。どこにあるか知らないし、そもそも存在を知らなかったし」
レモンも考え込む。
「王立図書館の地下なんて聞いたことがありません」
黒い騎士だけが静かに答えた。
「隠されているからな」
「何で隠されてるんだ?」
「……」
黒い騎士はその問いに答えず、歩き出した。
「そこにお前が探している答えの一部がある」
「召喚のことも?」
「そうだ」
「俺のスマホのことも?」
「そうだ」
「もう1人のタローについても?」
黒い騎士は少しだけ振り返る。
「……それもだ」
俺はスマホを見る。
【メインクエスト更新】
『異界の真実を追え』
『目的地:王立図書館地下』
『重要度:極』
「行くしかないな」
「ええ」
モモが頷く。
「行きましょう」
「私も準備はできてるわ!」
グレイプが杖を握る。
「今度こそ私の天才っぷりを――」
「それはもういい」
「何でよ!」
レモンが笑う。
「ふふっ」
俺たちはダンジョンを後にするため、来た道を戻り始めた。しかし、そのときだった。スマホが突然震える。
『警告』
『未知の干渉を検出しました』
「……?」
画面を見る。
【通信元:???】
【メッセージを受信しました】
そして、画面に1行の文字が表示された。
『タロー、次は私から会いに行く』
「……!」
俺は立ち止まる。
「どうしたの?」
モモが尋ねる。
「……いや」
俺はスマホを握り締める。
「何でもない」
そう答えながら、俺は画面を見つめた。もう1人のタロー。あいつは一体何者なのか。そして、なぜ俺を待っているのか。その答えを知るために、俺たちは王都へ戻ることになった。




