第17話 最深部の魔物です
巨大な扉の向こうから現れたのは、これまで見たことのないほど巨大な魔物だった。体長は10m近くあり、全身を白い鱗に覆われている。背中からは巨大な翼が伸び、頭には3本の角が生えていた。
「ドラゴンでしょうか……?」
レモンが呟く。
「いや……普通のドラゴンじゃない」
黒い騎士が剣を構える。
「こいつはこのダンジョンが作り出した守護者だ」
俺はスマホを向ける。
『対象を解析します』
『解析中……』
『解析に失敗しました』
【種族:???】
【危険度:測定不能】
【魔力:測定不能】
【攻撃力:測定不能】
【防御力:測定不能】
【弱点:解析不能】
「全部わかんねーじゃん! こんなのどうやって戦えっていうんだよ!」
「だから攻略不可能って表示されたんでしょうね」
グレイプが苦笑する。
「でも、私たちはここまで来たのよ」
グレイプは杖を握り直す。
「だったら、やるしかないわ!」
「グレイプさん……」
「それに私がいるんだから大丈夫よ!」
魔物が咆哮した。
——グオオオオオオオオッ!!
凄まじい衝撃波が広間を駆け抜ける。
「うわっ!」
俺たちは一斉に吹き飛ばされた。
——ドゴォン!
「痛てて……」
俺は床に転がりながらスマホを見る。
『警告』
『対象の攻撃を確認』
『通常防御では耐えられません』
「通常防御では……? それってつまり」
俺は神器を握る。
「何か方法があるんだな?」
スマホが震えた。
『パーティスキル《異界の絆》を使用できます』
『使用条件を確認』
『4人の意識共有が必要です』
3人を見る。
「どうすればいいんだ?」
黒い騎士が口を開く。
「4人が同じ目的を思い浮かべろ」
「同じ目的?」
「ああ。力を合わせるだけでは足りない。意思を1つにする必要がある」
「そんな急に言われても……」
魔物が翼を広げる。
——バサァッ!
「来るぞ!」
黒い騎士が叫ぶ。
「タロー!」
「わかってる!」
魔物が突っ込んでくる。俺は神器を構えた。
「右!」
モモが叫ぶ。俺は身体を横へ動かす。
——ドォン!
魔物の爪が床を砕いた。
「私が止める!」
グレイプが杖を掲げる。
「炎よ! 火球!」
巨大な炎が魔物へ飛んでいく。
——ドォォン!
「やったか!?」
煙が晴れる。しかし、魔物には傷1つ付いていなかった。
「……やっぱり無理ね」
グレイプが青ざめる。
「私の魔法が全く通じないだなんて……」
「ここはあたしが!」
モモが駆け出す。
——シュッ!
モモが魔物の足元へ入り込む。
「はあっ!」
——ザンッ!
剣が鱗に当たる。
「硬い……!」
モモが後退する。その直後、魔物の尻尾が振り払われた。
——ブォン!
「モモ!」
黒い騎士が飛び出し、剣で尻尾を受け止める。
——ガキィィン!
「ぐっ……!」
「大丈夫か!?」
「問題ない!」
黒い騎士が魔物を睨む。
「だがこのままでは勝てない」
「……だったら」
俺は神器を見て、それから3人を見る。
「みんな! 頼みがある!」
「何?」
「何をすればいいの?」
「私にできることならやります!」
俺は深呼吸する。
「俺たちの目的は1つだ」
3人が俺を見る。
「この魔物を倒して、先へ進む」
その瞬間、スマホが震えた。
『パーティメンバーの意思を確認』
『目標の一致を確認』
『パーティスキル《異界の絆》を発動します』
「来た!」
4人の身体が淡い光に包まれる。
『パーティスキル《異界の絆》』
『効果を選択してください』
【攻撃強化】
【防御強化】
【能力共有】
【???】
「4つ目は!?」
画面を見る。
「タロー、時間がないわ!」
「わかってる!」
魔物が口を大きく開く。その奥に凄まじい魔力が集まり始めた。
『高密度魔力反応を検出』
『ブレス攻撃と推定』
「ブレス!?」
「避けるわよ!」
グレイプが叫ぶ。
「いや……」
俺は画面を見る。
「ここで《異界の絆》を使う」
「どれを選ぶの?」
モモが尋ねる。
「決まってる」
俺は最後の項目をタップした。
【???】
『特殊効果を解放します』
『名称:異界共鳴』
「……異界共鳴?」
次の瞬間、神器から眩い光が溢れ出した。
——キィィィン!
俺だけじゃない。レモン、グレイプ、モモ。そして黒い騎士までもが光に包まれる。
「何だ……これ」
身体の奥から力が湧いてくる。そしてスマホの画面に、新たな表示が現れた。
『パーティ構成を再解析します』
『特殊対象を追加します』
【タロー】
【レモン】
【グレイプ】
【モモ】
【???】
「……5人目?」
俺が黒い騎士を見る。黒い騎士は驚いたように目を見開いていた。
「まさか……私までパーティに入れるつもりか?」
スマホが震える。
『加入条件を満たしました』
『新規メンバーを登録します』
【名前:???】
【職業:???】
【状態:召喚者】
「お前、本当に何者なんだよ……」
黒い騎士は答えない。その代わり、魔物が大きく息を吸い込んだ。
「話は後だ!」
黒い騎士が剣を構える。
「来るぞ!」
次の瞬間――。
——ゴオオオオオオオオッ!!
巨大な炎が広間を埋め尽くした。俺たちは5人で魔物を見据える。そしてスマホに、最後の通知が表示された。
『新たな戦闘モードを解放します』
『パーティレイドを開始します』




