第15話 重要人物でした
俺の手の中に現れた黒い板は、見た目だけならスマホによく似ていた。しかし、画面の周囲には見たことのない金属の装飾が施されている。
「……何だこれ」
俺が握り直すと、黒い板から小さな音が鳴った。
——カチッ。
次の瞬間、黒い板の両端から光の刃が伸びた。
——シュインッ!
「剣になった!?」
グレイプが目を見開く。画面を見ると、新しい表示が出ていた。
『神器武装を起動します』
【武装形態:ブレード】
【攻撃力:測定中】
【耐久力:測定不能】
「攻撃力測定中って……測定してから出せよ」
俺が呟いていると、黒い騎士が再び剣を構えた。
「ちょっと待て。今説明を読んでるところなんだ」
しかし、待てと言われて素直に待つ敵はいない。黒い騎士は容赦なく突っ込んでくる。俺も神器を構える。
——ガキィィン!
互いの剣がぶつかる。
「うわっ!」
凄まじい衝撃で俺の身体が後ろへ吹き飛ばされた。
「タロー!」
モモが叫ぶ。
「大丈夫!」
俺は何とか踏みとどまる。
「こいつ……強いな!」
黒い騎士が再び距離を詰める。
「私たちも援護するわ!」
グレイプが杖を掲げる。
「炎よ!」
「火球!」
炎の球が黒い騎士へ飛んでいく。
——ドォン!
「これでどう?」
煙が晴れる。しかし、黒い騎士は無傷だった。
「嘘でしょ……」
グレイプが絶句する。
「この私の魔法が効いてないなんて……!」
「なら、あたしが行く!」
モモが駆け出す。
——シュッ!
モモが一瞬で黒い騎士の懐へ入り込む。
「はあっ!」
——ガキィン!
しかし、黒い騎士は剣で受け止めた。
「っ!」
モモが押し返される。
「モモ!」
俺も走り出す。
「タローさん!」
レモンが叫ぶ。
「気をつけてください!」
黒い騎士がモモを弾き飛ばし、そのまま俺へ向かってくる。
「速い!」
俺は神器を構える。
『攻撃予測を開始します』
スマホの画面に矢印が表示された。
「右か!」
黒い騎士の剣が右から迫る。俺は身体を左へ動かした。
——ブンッ!
当たらなかったが、そのまま神器を振る。
——ザンッ!
黒い騎士の鎧に傷が入った。
『対象へのダメージを確認』
『神器適合率:12%』
画面を見ていると、黒い騎士が再び剣を振り上げた。
「今は考えてる場合じゃない!」
俺は神器を構える。黒い騎士の攻撃を避ける。右、左、上。スマホの攻撃予測が次々と表示される。
「これなら……!」
俺は攻撃を避けながら、黒い騎士へ斬り込んでいく。
——ガキン!
——ザシュッ!
——キィン!
「よし、少しずつ動きがわかってきた!」
黒い騎士の剣を弾く。しかし、その直後――。
『警告』
『対象の戦闘パターンが変化します』
「……え?」
黒い騎士の身体から黒い魔力が溢れ出した。
「何よ、あれ……」
グレイプが後ずさる。
「さっきより魔力が増えてる!」
「タローさん!」
レモンが俺を見る。
「逃げた方がいいんじゃ……」
「いや」
俺は神器を握り締める。
「俺は逃げない」
俺が前へ出る。黒い騎士が剣を構える。
「それに――」
俺はスマホを見る。
「新機能を試してみたい」
「またそれ?」
グレイプが呆れた声を出す。そのときスマホが震えた。
『特殊攻撃を使用できます』
【神器武装:???】
【使用条件:神器適合率50%以上】
現在の適合率は12%。
「全然足りないじゃん!」
「どうするの?」
モモが尋ねる。
「どうするって……」
俺は神器を見る。
「戦って上げるしかないだろ!」
黒い騎士が突っ込んでくる。
「来い!」
俺も走り出した。
——ガキィィィン!
再び剣がぶつかる。黒い騎士の力は強い。しかし、今度は違った。
『神器適合率が上昇しました』
【神器適合率:18%】
「上がった!」
俺は攻撃を避ける。
『神器適合率:24%』
さらに攻撃する。
『神器適合率:31%』
「まだだ!」
黒い騎士の剣を弾く。
『神器適合率:39%』
「あと少し!」
「タロー!」
グレイプが叫ぶ。
「右!」
「わかってる!」
俺は横へ飛ぶ。黒い騎士の剣が空を切る。
「今だ!」
神器を振り下ろす。
——ズバァン!
『神器適合率:50%』
『特殊攻撃が使用可能になりました』
【神器武装:解放】
「よし!」
俺は画面に表示された新しいアイコンをタップした。
『特殊攻撃を実行します』
神器から眩い光が溢れ出す。黒い騎士が初めて後退した。
「……何だ?」
光が神器の刃へ集まっていく。
「これは……もしかして――」
俺は神器を構える。
『攻撃準備完了』
「いくぞ!」
光の刃が大きく伸びる。その姿は、まるで巨大な剣だった。
「うおおおおおっ!」
俺は黒い騎士へ向かって駆け出す。
——ズガァァァン!
巨大な光の斬撃が黒い騎士を飲み込んだ。
「グッ……!」
初めて黒い騎士が声を漏らした。
『対象の防御力を突破しました』
【対象HP:???】
「……HPが表示されない?」
煙の向こうで、黒い騎士がゆっくりと立ち上がる。
「まだ立てるのかよ……」
俺が身構えた、そのときだった。黒い騎士の兜がゆっくりと外れた。
「お前……」
俺は目を見開く。兜が外れて現れたのは、黒髪の少女だった。黒い騎士はゆっくりと口を開いた。
「……やっと来たか」
『重要人物を確認しました』
『対象の情報を解放します』
スマホの画面に、1行だけ表示された。
【名前:???】
その下には、今まで見たことのない文字があった。
【タローとの関係:召喚者】




