第13話 また会いました
先ほどまでとは違い、道の両側には魔石が埋め込まれていない。周囲は暗く、足音だけが静かな通路に響いている。
「なんだか急に雰囲気が変わったわね」
グレイプが辺りを見回す。
「そうですね……」
レモンも不安そうに頷く。
「魔物の気配もないわ」
モモが呟く。
「それが逆に怖いんだよな」
俺はスマホのマップを確認する。マップ上では、俺たちのいる場所から少し先に大きな空間が表示されている。
「もうすぐ最深部みたいだ」
「やっとね!」
グレイプが嬉しそうに言う。
「これでダンジョン攻略完了よ!」
「まだ何があるかわからないだろ」
「でも、さっきのオーガより強い魔物なんてそうそう――」
グレイプが言葉を止めた。
「……どうした?」
「今、何か聞こえなかった?」
俺たちは足を止める。耳を澄ますと、確かに何かが聞こえた。
——コツ……コツ……。
「足音でしょうか……?」
レモンが小声で言う。
「こっちに近づいてくるわ」
モモが剣に手を添える。しかし、足音は突然止まった。
「……」
「……」
「……何も来ないわね」
グレイプが首を傾げる。その瞬間だった。
——ゴゴゴゴゴゴッ!
「きゃあっ!」
地面が大きく揺れた。
「今度は何!?」
グレイプが杖を構える。目の前の壁が左右に開いていく。その先には、巨大な広間が広がっていた。
「綺麗……」
レモンが呟く。広間の中央には巨大な祭壇があり、その上には青白く輝く結晶が浮かんでいる。
「何だ、あれ?」
俺はスマホを向けた。
『対象を解析します』
【名称:ダンジョン・コア】
【分類:特殊物体】
【魔力:測定不能】
【状態:正常】
【危険度:測定不能】
「ダンジョン・コア?」
「ダンジョンの核……ってことかしら」
グレイプが興味深そうに眺める。
「でも、あれだけじゃないわよ」
モモが言った。
「え?」
モモが祭壇の奥を指差す。そこには巨大な扉があった。扉には複雑な模様が刻まれている。そして、その中央には見覚えのある形が描かれていた。
「……スマホ?」
四角い板のような形。俺のスマホとよく似ている。その瞬間、スマホが震えた。
『重要情報を検出しました』
『ダンジョン・コアとの接続を確認』
『特殊条件を達成しました』
直後、祭壇の上に浮かんでいたダンジョン・コアが強く輝き始めた。
——キィィィン!
「何これ、眩しい!」
グレイプが目を覆う。光が収まると、祭壇の上に人影が立っていた。
「……人?」
長い銀髪。白い服。そして、青く澄んだ瞳。俺は息を呑んだ。
「お前……」
その少女には見覚えがあった。俺がこの世界へ来た直後に出会った、あの銀髪の少女だ。
「また会ったわね」
少女が微笑む。
「……なんでここにいる?」
「それは私の台詞よ」
少女は俺を見る。
「あなたこそ、どうしてここにいるの?」
「俺は元の世界に帰る方法を探してる」
「そう」
少女は俺のスマホを見る。
「やっぱり、それを持っているのね」
「……やっぱり?」
俺は眉をひそめる。
「お前、このスマホを知ってるのか?」
「知っているわ」
少女は答えた。
「それは異界の神器。あなたをこの世界へ導いたものよ」
「俺を……導いた?」
俺はスマホを握る。
「待て。俺は自分からここへ来たわけじゃない。気づいたらこの世界にいたんだ」
「ええ。知っているわ」
「じゃあ誰が俺をここへ?」
少女は答えない。
「それはまだあなたには教えられない」
「何でだよ!」
俺が一歩近づく。するとスマホが激しく震えた。
『警告』
『対象との距離が一定値を超えました』
『これ以上接近することを推奨しません』
「……何だ?」
スマホに表示された文字を見ていると、少女が笑った。
「あなたの神器も、あなたを守ろうとしているみたいね」
「守る?」
「そうよ」
少女は視線を俺の後ろへ向ける。
「でも、今はそれより大事なことがあるでしょう?」
「大事なこと?」
「ええ」
少女が指を上げる。すると、広間全体に魔力が満ち始めた。
「このダンジョンを攻略したことで、あなたたちは資格を得たの」
「資格?」
スマホが震える。
『特殊条件を達成しました』
『パーティスキルの詳細を解放します』
【パーティスキル:???】
【発動条件:パーティメンバー全員の同意】
「全員の同意?」
俺が3人を見る。
「何をするんですか?」
レモンが尋ねる。
「さあ……」
そのとき、少女が言った。
「4人で手を繋いで」
「え?」
「全員の力を合わせるのよ」
「何のために?」
「それは――」
少女が微笑む。
「あなたたち自身で確かめればいいわ」
俺は3人を見る。
「どうする?」
「私はいいわよ」
モモが迷わず答える。
「私も!」
グレイプが手を挙げる。
「もちろんです!」
レモンも頷く。
「……じゃあ、やるか」
4人で手を繋ぐ。その瞬間――。
——バチィィィッ!
「うわっ!」
強烈な光が俺たちを包み込んだ。
『パーティスキルを発動します』
『スキル名を決定してください』
「名前を決めろって……今!?」
俺は光の中で叫ぶ。スマホの画面には、入力欄が表示されている。
【パーティスキル名:???】
「そんなの急に言われても思いつかないぞ!」
「じゃあ『最強魔法団』!」
グレイプが即答する。
「却下」
「何でよ!」
「グレイプさんらしいですね……」
「レモンまで!」
モモが笑う。
「そうねぇ……『4人の絆』とかでいいんじゃない?」
「うーん……」
「じゃあタローが決めてよ」
「俺が?」
俺は少し考える。
「……『異界の絆』」
スマホに文字を入力する。
『スキル名を登録しました』
【パーティスキル:異界の絆】
『発動します』
次の瞬間、ダンジョン全体が大きく揺れた。
——ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
「な、何!?」
グレイプが叫ぶ。……巨大な扉がゆっくりと開いていく。その先には、地下へ続く階段があった。俺はスマホを見る。
『新たな目的地を検出しました』
『目的地:???』
『推奨探索難易度:測定不能』




