第12話 最深部に行きます
俺たちの目の前に現れたのは——巨大な魔物だった。体長は5mを超えている。4本の腕を持ち、その手にはそれぞれ巨大な斧が握られていた。全身を赤黒い皮膚に覆われ、頭には2本の長い角が生えている。
「……何よ、あれ」
グレイプが呟く。
「さっきのオーガより大きいですね……」
レモンも杖を握り締める。俺はすぐにスマホを向けた。
『対象を解析します』
【種族:アビス・オーガ】
【危険度:A】
【魔力:B】
【攻撃力:S】
【防御力:A】
【弱点:炎】
【特殊能力:狂化】
「攻撃力S……?」
「Sって、どれくらい強いの?」
モモが尋ねる。
「さっきの奴より危険なのは間違いない」
その瞬間、アビス・オーガが斧を振り上げた。
「来るわよ!」
グレイプが叫ぶ。
——ドゴォォン!
斧が地面に叩きつけられ、凄まじい衝撃波が発生する。
「きゃあっ!」
「レモン!」
俺はレモンの腕を掴み、後ろへ飛び退く。さっきまで立っていた場所の床が大きく陥没していた。
「……これ、まともに食らったら死ぬぞ」
「だったら食らわなければいいのよ!」
グレイプが杖を掲げる。
「炎よ、我が敵を撃ち抜け!」
「炎弾!」
無数の光弾がアビス・オーガへ飛んでいく。
——ドドドドドッ!
「グオオオオッ!」
直撃した。しかしアビス・オーガは倒れない。
【敵HP:91%】
「嘘でしょ!?」
グレイプが目を見開く。
「私の魔法がほとんど効いてない!」
アビス・オーガがこちらへ向かって走り出した。
「速っ!」
巨体からは想像できない速度だった。
「モモ!」
「任せて!」
モモが飛び出す。
アビス・オーガの斧が振り下ろされる。
——ガキィン!
モモは斧を剣で受け止めた。
「ぐっ……!」
「モモさん!」
「大丈夫!」
しかし、明らかに押されている。俺はスマホを見る。すると、画面に新しい表示が出ていた。
『戦闘支援機能を更新しました』
『対象の攻撃予測精度が上昇します』
『味方への支援が可能になりました』
「味方への支援?」
画面を見ると、モモの位置に新しいアイコンが表示されている。俺は試しにタップした。
『対象を選択してください』
【モモ】
【グレイプ】
【レモン】
「……モモ!」
モモを選択する。
『身体能力を一時強化します』
「え?」
次の瞬間、モモの身体が淡く光った。
「……何これ?」
「わからないけど今ならいける! 多分!」
モモが力を込める。
——ギィン!
アビス・オーガの斧を弾き飛ばした。
「なっ……!」
モモが驚く。
「あたし、こんなに力あったかしら?」
「スマホの支援機能らしい」
「便利ね」
モモが笑った。
「それなら遠慮なく使わせてもらうわ!」
モモが一気に距離を詰める。アビス・オーガが残った3本の腕を振り回す。
「そこ!」
モモは斧をかわしながら懐へ入り込む。
——ザシュッ!
剣が魔物の脇腹を切り裂いた。
「グオオオオオオッ!」
【敵HP:76%】
「まだまだ!」
モモがさらに斬り込む。
「私も負けてられないわ!」
グレイプが杖を掲げた。
「タロー! 私にもその支援とやらを使って!」
「わかった!」
グレイプを選択する。
『魔力を一時強化します』
「これなら……!」
グレイプの杖に、先ほどとは比べ物にならないほどの光が集まる。
「いくわよ!」
「氷槍!」
巨大な氷の槍が放たれる。
——ズガァァン!
「グオオオオオッ!」
アビス・オーガの身体を光の槍が貫いた。
【敵HP:48%】
「効いてる! この調子だ!」
「当然よ!」
グレイプが嬉しそうに笑う。
「私は天才魔術師なんだから!」
「さっきより威力が凄いです……!」
「そうでしょう!?」
そのとき、アビス・オーガの身体が突然赤く染まった。
『警告』
『対象が特殊状態へ移行します』
【状態:狂化】
「……まずいな」
魔物が咆哮する。
「グオオオオオオオオッ!!」
凄まじい魔力が周囲に広がった。
「速くなってる!」
モモが叫ぶ。
アビス・オーガが一瞬でモモの目の前まで迫る。
「モモ!」
斧が振り下ろされる。
——ドゴォン!
モモがいた場所が粉々に砕けた。
「……危なかった」
モモは間一髪で避けていた。しかしアビス・オーガは止まらない。
「このままじゃ押し切られる!」
俺はスマホを見る。すると、敵の身体に無数の赤い点が表示されていた。
『弱点解析を開始します』
『対象の内部魔力に異常を確認』
【弱点部位:胸部】
【推奨攻撃:光属性】
「胸だ!」
「わかった!」
モモが走る。
「レモン!」
「はい!」
レモンが杖を掲げた。
「光弾!」
無数の光弾がアビス・オーガの顔へ集中する。
「グオッ!」
一瞬、魔物の動きが止まった。
「今よ!」
モモが跳躍する。
「はああああっ!」
剣が胸部へ突き刺さった。
——ズブッ!
「グオ……」
アビス・オーガの動きが止まる。
【敵HP:12%】
「まだだ!」
俺が叫ぶ。
「もう1回いける!」
「任せて!」
グレイプが杖を掲げる。
「これで終わりよ!」
「氷槍!」
巨大な氷の槍がアビス・オーガの胸を貫いた。
——ドォォォン!
「グオオオオオオオオッ!!」
魔物は大きく仰け反り、そのまま地面へ倒れた。
——ズゥゥン……。
「やったか!」
スマホを見る。
【敵HP:0%】
『討伐を確認しました』
『経験値を獲得しました』
『パーティ連携率が上昇しました』
【パーティ連携率:100%】
「100%……」
俺は画面を見つめる。
『パーティ連携率が最大値に到達しました』
『新機能の解放条件を達成しました』
直後、スマホが大きく震えた。
『新機能を解放します』
『機能解放:パーティスキル』
「パーティスキル……?」
画面には4人の名前が表示されていた。
【タロー】
【レモン】
【グレイプ】
【モモ】
その下には、まだ詳細の表示されていない項目が1つ。
【???】
「……何だこれ」
俺が画面を見つめていると、ダンジョンの奥から大きな音が響いた。
——ゴゴゴゴゴ……。
「また何か来たの!?」
グレイプが叫ぶ。
「いや……違う」
俺はマップを見る。これまで閉ざされていた場所が、ゆっくりと開いていく。
『ダンジョン攻略進行率:100%』
『最深部への道が解放されました』
「……最深部」
俺たちは顔を見合わせる。どうやらこのダンジョンの本当の目的地はここかららしい。
「行こう」
俺はスマホを握り締める。
「最深部まで行けば、もっと凄いものが待ってるかもしれない」
「はい!」
「望むところよ!」
「ふふっ」
先へ進んでいく。




