第10話 ダンジョンに来ました
王立図書館を出た俺たちは、王都の冒険者ギルドへ向かった。目的は勿論、ダンジョンへ行くためだ。
「ダンジョンってどんなところなんでしょう?」
レモンが楽しそうに尋ねる。
「私も興味あるわ」
グレイプが胸を張る。
「魔物がいるなら私の凄さを見せる絶好の機会ね!」
そんなやり取りをしていると、冒険者ギルドが見えてきた。中へ入ると、受付の前にたくさんの冒険者が並んでいる。剣士や魔術師らしき人だけでなく獣人の姿もあった。
「あのー、ダンジョンに行きたいんですが」
受付の女性に声をかける。
「ダンジョンですか? でしたら、まずはこちらの申請書に記入してください」
「分かりました」
必要事項を書き終えると受付の女性が俺たちを見る。
「4人パーティですね」
「はい」
「ダンジョンは初めてですか?」
「俺たちは全員初めてです」
「……全員?」
受付の女性が少し驚いた顔をする。
「危険ですので十分に注意してくださいね」
「大丈夫です!」
グレイプが自信満々に言う。
「私がいますから!」
「そ、それなら安心ですね」
受付の女性が苦笑する。
「それでは、こちらがダンジョンの場所です」
地図を受け取った。するとスマホが震えた。
『新しいクエストが発生しました』
『ダンジョンを攻略せよ』
『達成条件:ダンジョン最深部へ到達する』
『報酬:新機能』
「何か表示されたの?」
グレイプが画面を覗き込んだ。
「ダンジョンの最深部へ行けってさ」
「いいじゃない!」
グレイプが嬉しそうに笑う。
「これで私の実力を存分に見せられるわ!」
「そればっかりだな」
「当然でしょう!」
こうして俺たちはダンジョンへ向かった。王都から少し離れた場所に、そのダンジョンはあった。巨大な洞窟の入口。周囲には何人もの冒険者がいる。
「ここがダンジョン……」
俺は入口を見上げる。
「なんだかワクワクしますね!」
レモンが目を輝かせる。
「私は早く魔物と戦いたいわ」
グレイプが杖を握る。
「モモは?」
「あたしも楽しみ」
モモは腰の剣に手を添えた。
「じゃあ、行こう」
俺たちはダンジョンへ足を踏み入れた。中は薄暗く、壁には小さな魔石が埋め込まれている。その光のおかげで周囲を見ることはできた。
「思ったより明るいな」
「魔石の光よ」
グレイプが説明する。
「魔力を込めると光るの」
「へぇ」
少し歩いたところで前方から何かが現れた。緑色の肌。小さな体。そして手には短い剣。
「ゴブリンね」
グレイプが杖を構える。レモンも緊張した様子で杖を握った。俺はスマホを向ける。
『対象を解析します』
【種族:ゴブリン】
【危険度:E】
【魔力:E】
【剣術:E】
【弱点:火】
「弱点は火らしい」
「なら私の出番ね!」
グレイプが一歩前に出る。
「見てなさい!」
杖を掲げる。
「火球!」
炎の球が飛んでいき、ゴブリンの目の前で爆発した。
「ギャッ!」
ゴブリンが吹き飛ぶ。
「どう?」
グレイプが胸を張る。
「お見事です!」
レモンが褒める。
「フフン♪ これくらい当然よ!」
「凄いな」
俺も素直に感心した。
「もっと褒めてもいいのよ?」
「遠慮しとく」
「むぅ」
そのとき、スマホが震えた。
『パーティ戦闘を確認しました』
『戦闘データを収集しています』
「戦闘データ?」
画面を見ると、新しい表示が増えていた。
【パーティ連携率:12%】
「何だこれ?」
「連携率?」
モモが画面を覗き込む。
「4人で戦うほど上がるのかしら」
「かもしれないな」
その直後だった。ダンジョンの奥から、複数の足音が聞こえてきた。
「……来るわよ」
グレイプが杖を構える。
「今度はあたしがやるわ」
モモが剣を抜いた。次の瞬間、3体のゴブリンが一斉に飛び出してきた。
「モモさん!」
レモンが叫ぶ。しかし――モモの姿が消えた。
「え?」
次の瞬間。
——シュッ。
1体のゴブリンが倒れた。さらに一閃。2体目が倒れる。そして最後の1体が攻撃するより早く、モモの剣がその首元で止まった。
「……これで終わり」
ゴブリンが崩れ落ちる。
「……」
俺は呆然とモモを見る。
「今の……見えたか?」
「全っ然」
グレイプも驚いている。
「何よあの速さ……」
「そう?」
モモは剣を鞘に収める。
「あたし、剣を振るのが好きだから」
「好きだからってレベルじゃないだろ……」
スマホに表示されたステータスを見る。
【剣術:A】
改めて見ると、とんでもない数字だった。スマホが震えた。
『パーティ連携率が上昇しました』
【パーティ連携率:24%】
「いい調子だな」
俺はスマホを握り直した。
「よし。先へ行こう」
「ええ!」
「任せて!」
「あたしも頑張るわ」
4人でダンジョンの奥へ進んでいく。しかし――その先から、これまでとは比べ物にならないほど強い魔力が漂っていた。
「……何かいるわね」
グレイプが呟く。俺はスマホを開く。マップの奥に、巨大な赤い点が表示されていた。
『強力な魔力反応を検出』
【推定危険度:B】
「……いきなりBランクかよ」
俺たちは顔を見合わせる。このダンジョン、思っていたより簡単ではなさそうだ。




