悲しみの懐中時計
ここのところ色々あったな…。
クラヴィオは独りごちた。ここ数日はリュカからの依頼を終わらせて、長年の借金を返し終えたと思ったら糞オヤジがまた借金を押し付けてきたり、その次の日にはまた依頼だったりと立て続けにバタバタしていた。
昨晩は貰った煮込みをつまみにリュカと呑んでいた。
我ながら、酒で失敗した翌日によく飲めたものだと思う。
でも、気分が良かったんだ。仕方ない。
横を見るとリュカは居なくなっていた。
俺が寝ている間に帰ったのだろう。
「片付けるか…。」
出しっぱなしのグラスや皿を片付けながら、クラヴィオはひとあくびした。
「さて、今日は依頼もないし、組紐でもつくるか。」
鼻歌を歌いながら鋏と色とりどりの糸を出す。
「青と緑と…。」
いくつかの色を取り出すと、徐ろにひと房髪を切る。
糸と髪を並べると、手を翳した。
「混ざれ。」
そう呟くと、並べた髪が糸にすぅっと溶けるように重なり、消えた。糸は淡い光を纏い、しばらく蛍の様にゆっくり点滅すると終わりかけの線香花火の様に光を散らす。そして、何事も無かったかのように元の糸に戻った。
「よし。」
クラヴィオはドーナツ状の小さな椅子のような台を置くと、穴に糸を垂らし、糸の先に重りをつけた。
もう一方は木の棒にそれぞれ巻き付け、それぞれの木の棒を動かす事で少しずつ編み込んでいく。編まれた組紐は重りと共に中心へ伸びていく仕組みだ。
今回は護りの組紐にするため、悪いものを祓える様に、軽い浄化魔法を掛けながら編む。そうするとら溶け込んだ髪の力で魔法が定着するのだ。
これを買った人が願いをかけることで、貰った相手が軽い呪いや、悪いものから身を守るお守りになる。ただし組紐の力が尽きると紐がきれるため、旅の前に新調する人が多い。
恋人への贈り物にと買って行く人も多いので、良い稼ぎになるのだ。
……まぁ、絶賛独り身中のクラヴィオが作っているのも皮肉な話だが…。
1本目が編み上がり、ブレスレットに加工する。金具を取り付け留め具を取り付けていると、聞き慣れた足音と共に、入口の戸が勢いよく開いた。




