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俺はグッと腹に力を込め、気を引き締めた。
この店の皆に被害を出す訳にはいかない。
なにより、こんな美味しい料理が食べられなくなるのは損失過ぎる…!
クラヴィオはリュカのしていたように息を潜めながら謎の犯人が出てくるのを待った。
じわりと汗が滲む。
じっとシンクを見つめる。思いのほか、その時はすぐに来た。
カタリ…。
小さな音と共に戸棚の1番下が開いた。
カサッという音と共にそこから出てきたのは小さな子供だった。
4歳程だろうか、柔らかな赤毛を2つ結びにしたその女の子は足音を立てないよう、そろそろと歩くとシンクに近づき、シンクの前に転がっていた木箱をそっと置いた。
カタン…。
音を立ててしまった事に驚いたのか、肩をびくりと竦め、辺りをキョロキョロと見渡している。
誰も見ていない事に安心したのか、木箱の上にそっと上がると、徐ろに皿を持ち上げ洗い始めた。小さな子供には皿は重たく大きいのだろう。更に洗剤の付いた手では皿は滑るのか、プルプルと皿が揺れている。
「いちまい。にぃまい。丁寧に。丁寧に…。」
少女は慣れない手つきで皿を洗っている。一生懸命力を入れているせいか、唇が少しとんがり、呟きながら、顔を赤らめている。
……何だあれ?!何だあれ…何だアレ!!
可愛すぎる!!!
クラヴィオは思わず口元に手を当てグッと言葉を飲み込んだ。
クラヴィオは一人っ子で祖父と2人で暮らしていたため、小さな子供に耐性がなかった。
そして、願わくば、可愛い妹や弟ににぃちゃん!と呼ばれ慕われるのが夢だったのだ。
…まぁ、現実はすぐに憎まれ口を叩きおちょくってくる、2つ上の友人だけだったのだが。
「さんっまい…よんまい」
真剣な顔をしている慣れない小さな生き物に激しく動揺しながら見つめていると、
「あっ!」
不意に少女が皿を滑らせ手から落ちた。
先程はシンクの中だったが、今回はカタッとシンクの縁に当たりながら床に落ちていく。
「危ないっ!!」
思わず声を出し、魔法を発動させる。
クラヴィオの指先から出た光はくるりと円を描き、少女の足元へ飛んで行くと、丸いクッションの様に皿を受け止めた。
少女は最初何が起きたか分からず口をあんぐりと開けていたが、徐々に皿を落としたこと、それを見られている事に気がつくと口をフルフルとさせ、目に涙を溜め始めた。
そして堰を切ったように、
「ふっ……うあぁぁぁんー!」
「あぁぁぁ、ごめん!大丈夫!大丈夫だから!!」
思わず少女の前に駆け寄りオタオタとしてしまう。
どう声をかけていいか分からず慌てふためいていると、後ろからポンッと頭をはたかれた。
リュカである。
リュカはそっと少女に近づき抱き上げると、優しく背を撫でながら、
「大丈夫。大丈夫。怒ってないよ。皿洗い偉かった。」
と、ゆっくりと普段じゃ考えられない優しげな声であやした。
少女は最初こそ声を出して泣いていたが、徐々に泣きやみ、リュカの首に手を伸ばしギュッとつかまるとヒックヒックと言うものの落ちついてきた。
幼なじみが普段見せない姿に動揺と、自分が出来なかった事をあっさりやってのけた事に嫉妬しながら、クラヴィオはオヤジさんを呼んだ。




