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「……なるほど。」
クラヴィオはメモを閉じた。
「何かわかったんですか?」
エリックが身を乗り出す。
「まだ断言はできません。」
クラヴィオは正直に答えた。
「ですが、故障ではないと思います。」
エリックの顔に期待が浮かぶ。
「本当ですか?」
「ええ。ただ、少し調べる時間を下さい。」
そう言うとクラヴィオは机の上の懐中時計へ視線を落とした。
やはり妙だった。壊れているようには感じない。
それどころか、まるで時計自身に意志かある様な気さえする。
「一週間ほど預からせて頂いても?」
「もちろんです。」
エリックは安心したように胸を撫で下ろした。
「よろしくお願いします。」
「お任せ下さい。」
そう言って時計を木箱へ戻そうとした時だった。
カチ。
三人の視線が一斉に時計へ向く。
止まっていたはずの秒針が、一つだけ進んでいた。
「え……?」
エリックが呟く。しかし皆で覗き込むと、やはり時計は止まっており、動いている様子は無い。
部屋が静まり返る。
「今……動きましたよね?」
「ああ。」
リュカが短く答える。
クラヴィオは懐中時計を見つめたまま動かなかった。
ほんの一瞬だった。
だが確かに感じた。
寂しさ。
懐かしさ。
そして。
誰かを見守るような優しい気配を。
その夜、クラヴィオは食事を終えると、早速作業に取り掛かった。この部屋全体にそっと魔力を流し、幕を張るようにする。
部屋の空気が静かに変わる。
外から聞こえていた風の音や、木々ざわめき、鳥や動物の声がまるで薄い膜を一枚隔てたように遠ざかってゆき、やがて静寂が訪れた。
「よし。」
クラヴィオは懐中時計を机の中央へ置く。
これは精霊や呪いを調べる時に使う簡易結界だった。
外からの干渉を防ぎ、中にある魔力の痕跡を浮かび上がらせる。
「さて…いるんでしょう?」
当然返事はない。
クラヴィオは時計へ手を伸ばし、そっと触れた。
微かな魔力を流し込む。
すると――
カチ。
秒針がまた一つ進む。
「!」
だが今度は見間違いではなかった。
時計の表面に淡い光が滲み、蓋の内側へ小さな文字が浮かび上がる。
『願わくば、この子の人生が幸多からんことを…』




