↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盲目少女の転生記~聖女へと至る道~  作者: 海・海
最終章:最終決戦
PR
49/50

第4話:決着

 「なん……で……」


 私は、自爆したはずだ。自爆して死んだはずなのに、呼吸をしていて、生きている。


 「キキョウ……」


 そんな私の眼には、キキョウの泣き顔が映っていた。精霊にも涙腺はあるのだろうか。そんなどうでもいいような疑問が頭に浮かぶ。


 「あなた私の回復魔法がなかったら死んでたのよ。なんであんな自殺みたいなまねを……もうしないで!死ぬのやだぁ!」


 キキョウは泣いて、喚いて、必死に訴えた。死ぬなと。……どうして私の友人は、私以上に私の命を案じてくれるのだろうか?私なんて、友達を復讐の道から止められず、こうして戦って、どうにもならなくてやけになって自爆するような……そんな人間なのに。


 もういいのに。


 かつての過ち。ミラを止められなかったこと。殺すことでそれを清算できたとは思わないけれど、これでミラの被害者が増えることはなくなる。


 だからもう、死んでもいいのに。


 この世界に転生したばかりの頃は、もっと世界を楽しみたかった。勇者になってからは、背負ったもののために戦わないといけなかった。


 けどもう十分楽しんだし、背負ったものはおろした。ならどうすればいいのか……


 「……自爆しておいて、なんであなたが生きて、私が死ぬのよ」


 声が聞こえた。体は動かないので、首だけでもなんとか動かそうとして、横を向く。ボロボロになったミラが、そこにはいた。


 「精霊……私が一人だったのに対して、そっちは二人……はぁ、はぁ、勝てるわけ……なかったわね」


 呼吸は荒く、なのに小さい。先ほどの戦闘で見せた威圧感はかけらも感じなかった。すぐに分かった。ミラはもうすぐ死ぬ。


 「もう、回復する魔力も残ってない。ゲホッ、ああ……道半ばで死ぬなんて、嫌だな……」


 「どうして……止まらなかったの?」


 そのどうしての答えは、私のとって重要なものだ。ミラが復讐をあきらめてくれたら、私たちは殺し合わずに、笑い合えていた。私と別れた後家族になったという孤児院の人たちとも仲良くなれたかもしれない。


 ミレイと、レイラと、ザックと……みんなで幸せになる未来があったかもしれない。そんな未来を捨ててまで、なんで復讐の道を歩んだのだろう。


 「私は、後ろ向きだから……だから今ある大切なものより、ハァ、過去に……ゲホッ、失ったものの大切さにしか目がいかなかった」


 復讐は、今あるものに目を向ければ実行できない。それは過去に執着するものだけの特権だと、ミラはそう言った。


 「世界が私の大切を奪うだけじゃないってのは分かってる。でも、世界はそんなものだって……ハァ、簡単に妥協できるほど、私の大切は安くないの」


 世界が人に強いる理不尽は、ミラには納得のいくものではなかった。だから、ミラは世界を滅ぼそうとした。


 「意地っ張り」


 その意地がなければ……理不尽を受け入れ幸せを甘受すれば、何もかもうまくいったというのに。


 「死にたくない」

 「私は、死んでもいいよ」


 生きること、否、復讐に執着するミラと違って、私は自分の命はどうでもよかった。勇者の務めを果たし、この世界を生きたのだ。もう、私の人生は終わったのだ。前世を含めたら十分長く生きた気がする。それでも30年ほどだけれど、それだけ生きれば十分だろう。


 「どうして、勝ったあなたが死にたがってるのよ!」


 そういわれても困る。勝手に宿命を背負わされて、友達と殺し合って……もう散々だ。


 「……ねえ、死ぬ前に、聞いてくれる?」


 「なに?」


 「世界は理不尽で、その理不尽は壊す以外どうしようもないと思った」


 「うん」


 「でも私は壊せなかった」


 「私が止めたからね」


 「……私の代わりに、世界を壊してくれる?」


 「それは無理かな……」


 「じゃあせめて……私みたいに理不尽に苦しむ人を……減らしてくれる?」


 ああ……それくらいなら、承諾してもいいかもしれない。


 「いいよ」


 「……じゃあ、生きてね」


 ああ、なんで私の友人は、そろいもそろって私を生かそうとしてくれるのだろう。生きるのに疲れたのに、こんな無理難題を残して……それなら、エルフの無駄に長い寿命を駆使して生き抜かなければ。


 「……ありがとう」


 「…………」


 返事はなかった。……呼吸音もしなかった。


 ……死んだのだと分かった。


 「――――――」


 目頭は熱くて、なのに側頭部には冷たいものが流れ落ちる。必死に止めたいのに、手が動かないので目を抑えることもできない。今はただ、胸の奥からあふれるものを、目から出すしかなかった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。