第2話:決戦1
「じゃあ、殺し合おうか」
再開早々、ミラはなんの躊躇もなく、その言葉を口にした。
「……久しぶりの対面だよ。積もる話とかないの?」
少なくとも、私はもっと話がしたかった。
「ないよ。いくら話しても、結末は変わらない。どちらかが死ぬ。それだけよ」
「……私は、殺したいなんて想ってないよ」
「でも殺すでしょ?あなたの私情を通すには、私はあまりに殺しすぎた」
……そのとおりだ。もしミラが殺したのが赤の他人なら、私はなんとか生かそうと苦心したかもしれない。
けど、ミラが殺した人の中には、恩人も、母と呼べる人もいる。そして、その死を私以上に悲しんでいる人が、私の隣りにいる。
……もう、殺したくないから殺さないと言える段階はとうに過ぎた。
殺したくないと思えるほどにミラは友達で、それでも殺さなければと思えるくらいにミラが殺し、悲しませた人は大切で……ただ、それだけの話だ。
「「……」」
数秒の静寂……その終わりは、拳の衝突によって訪れた。
ドン!
拳によって発せられたものとは思えない音が響く。その衝撃波は空気を揺らし、伝播していく。それほどの威力を持つ攻撃でさえ、私たちにとっては小手調べにすぎない。
ミラの拳の連撃、最初の拳をはるかに上回る威力だ。私はそれを完璧に受け流す。流して、流して、カウンターをみぞおちに。……しかし受け止められる。即座に空いた手を顔面に。今度は当たった。
(近接戦闘は分が悪いか……なら!)
己の不利を悟ったミラはリーナから距離をとり、戦法を切り替える。
「炎魔法・熱閃」
3000℃を超える熱の閃光がリーナに迫る。それに対し導き出されたリーナの対処法は、
「居合・一閃」
腰に差していた妖刀の抜刀。その一閃は、魔法をも裂く。
「魔法を斬るなんて、ありえない……とは言わないわ。けど、複数の魔法だと対処しづらいでしょ?刀は一本しかないんだから!」
ミラの背後から、炎、水、風、雷、さまざまな魔法が展開される。なら私は……
「『精人一体』」
キキョウと合体する。この技により、私の魔力は大幅に上昇した。
そして、私の魔法とミラの魔法、さまざまな属性の魔法の打ち合いが行われ、そのすべてが相殺された。
「魔法すらも……なら!」
ミラは『憎悪者』を発動した。これにより、ミラの身体能力、魔力は憎悪に比例して上昇。
「炎魔法・インフェルノ」
ミラの手中から煌々と輝く炎の球が生まれる。その球が発する熱エネルギーは、拠点を燃やし、それだけでは飽き足らず、大地すらも溶かした。球は、リーナに向かって繰り出され……
「ファイア」
そして、爆発。
……ただし、はるか上空で。
「あの熱エネルギーの塊を、蹴り上げた?」
見当違いの方向で爆発が起こった理由を推測したミラは、さすがにおののいた。衝撃の事実に、身体が震えるのを抑えられなかった。
(私が、リーナちゃんに……劣ってる?)
今の炎魔法は、まぎれもなくミラの全力だった。それが蹴りで対処されるということは、つまりそういうことなのだろう。それは……
「許せない」
それは、ミラの憎悪がリーナの力に負けるということだ。それは、それだけは許してはいけない。己の憎悪が負けるなど、あってはならない。
生みの親を殺した魔族を憎み、己を虐げるエルフを憎み、第二の父を殺した人間を憎み、そんな悲劇を許す世界を憎んだ。
これ以上憎むものなどない。それでもなお憎しみが負けるというのなら、一体何を憎めばいいのか。それとも、憎しみを糧に得た力そのものが、間違いだとでもいうのか。世界を憎む己の想いが、間違っているとでもいうのか。
「それだけはあり得ない。あっちゃいけない」
さらに憎しみを募らせる。さらに憎しみをさらけ出す。憎しみこそが我が力。この想いは……この想いだけは誰にも否定させない。
(……威圧感が増した)
私はミラの変化を感じ取っていた。今のミラは、先ほどまでのミラじゃない。油断したら一瞬でやられる。
「場所を変えようか」
私はキキョウと合体したことで得た羽で空を飛んだ。地上で今のミラと魔法戦を繰り広げたら、ザックたちまで巻き込まれる。
「第二ラウンドは空中でってことね」
ミラもそれについていった。




