第4話:隕石
「すごいなぁ、グランさん」
先頭で魔物を斬りまくるグランさんの孤軍奮闘ぶりに、私ことリーナはそう口にするしかなかった。
騎士、冒険者一斉に戦っている状態で孤軍奮闘はおかしな表現かもしれないが、先頭のグランさんと後続の距離が離れすぎていて、グランさんはもはや一人で戦っているようなものだ。
「正直この数は……って絶望していたけど、あの人がいると何とかなっちゃいそう」
私に襲い掛かる魔物に的確な対処をしながら、呟く。グランさんは騎士たちの手ではてこずりそうな強そうな魔物ばかり積極的に倒している。おかげで私たちは結果的に露払いを務めているような立ち位置になってしまった。
「なんかグランさん、一人で戦ってるみたい」
「そんなことありませんよ」
私の感想に、近くで戦っていた騎士が否定の言葉を投げかける。
「見てください。さりげなくですが、私たちを上空から奇襲してこようとする魔物を、斬撃を飛ばして撃ち落としています。独走しているように見えますが、きちんと周りを見て戦ってくれていますよ。団長は」
「それ、私たち足手まといになってませんか?」
私たちはグランさんをサポートすることもできないのに、グランさんは私たちを気にしながら戦う。これでは足手まといだ。そんなことをするために、私はこの場に立ったわけではないのに。
「以前、これほどの規模ではありませんが、似たような状況になったことがあります。その時、私も同じような感想を抱きました。己の力不足を悔やんでいた時、団長は言ってくれました」
―――お前らが後ろで一生懸命戦ってくれるから、俺は後ろの城下町を気にせず先頭で戦える。お前らは城下町を守って、俺はそんなお前らを守る。そうすりゃ誰も死なねえ。
「我々が城下町まで魔物を通さないと信じてくれているから、団長は前に出ています。貴方も心得てください。これは城下町を守る戦いだ。敵を多く殺すための戦いではない」
「……心得ました」
ミラのこと、勇者と魔王のこと……私情を持ちかむのはやめよう。今は、私にできる精いっぱいのことをやる。
私は、向かってくる魔物を一撃で倒していった。
(すごいな、この冒険者。まだ若いのに。技術がずば抜けている。普通は逆なのに)
その奮闘ぶりを見た騎士は感心していた。多くの魔物を殺す冒険者は、若くてもLvが高く身体能力の高いものは少ないがそこそこいる。だが、リーナは身体能力より、技術が優れていた。
(的確に急所を狙って、打撃斬撃が当たった瞬間に魔力を放出して威力を上げてる。というかこの子エルフだよな?エルフって魔法と弓を使うんじゃないのか?)
急激なLvアップによる身体能力の上昇に、身体操作の技術が追い付かず、暴走してしまうのはこの世界ではよくある話だ。しかし、リーナは真逆。身体能力に技術がではなく、技術に身体能力が追い付いていない。
(この子にもう少し身体能力があったら、グランさんにもついていける戦力になるだろうに)
そのことを少し惜しく思った騎士だった。
(なんか切れば斬るほど刀の切れ味が上がってる気がする。あと騎士さんめっちゃ見てくる。こっちは大丈夫なので、他に苦戦している人を見てあげてください。私は十分強いです)
騎士の内心を知らず、むしろ実力不足を不安に思われているのかと推測するリーナだった。
そんなグランたちの奮闘をよく思わない存在がいた。
「少しはやるようだな人間」
急に、上空から声が聞こえた。声の方向に視線を向ける。そこには、複数の魔族が炎の魔法を一斉に放とうとしていた。
「「「「「喰らえ!カオスフレイム」」」」」
複数の炎弾が融合し、グランさんを直撃する……その寸前だった。
「しゃらくせえ」
グランさんは、魔法を斬った。
「「「「「は?」」」」」
冒険者も魔族も魔物すら、全員が同じ気持ちを共有した。騎士だけは、当たり前の光景のように平常運転のままだったが。
「馬鹿な!鉄をもたやすく溶かす我らの炎を斬っただと!?」
「おう。剣に魔力をまとわせて保護すれば、剣が溶ける心配はないからな。あとは思い切り振れば魔法は斬れる」
(((((そこじゃない!)))))
溶けない剣を持っていても、普通は大規模の炎なんて斬れるはずがない。それとも、この人の剣は魔法より威力が高いというのだろうか。
(そういえば、大剣の一振りで魔法でも届くかわからない距離を攻撃してたな。この人を常識で当てはめるのはやめよう)
リーナは考えるのをやめた。気にするべきなのは、グランさんではなく魔族のほうだ。
「上空で高みの見物きめてる魔族どもよぉ。お前らがこの魔物の群れの原因ってことでいいんだな」
20人ほどいる魔族。その代表的な人物が答えた。
「この魔物を操っているのは魔王様だが、我々もその魔王様の侵略行為に加担しているのは間違いないな」
「じゃあ死ね」
グランさんが剣に纏わせていた魔力を斬撃と一緒に飛ばした。そしてさっきまで話していた魔族の代表は真っ二つになって死んだ。
「おのれ!魔王様に貴様にだけは手を出すなと言われたが、魔王様の手を煩わせずとも俺が……」
激高した魔族の一人がグランさんに向けて魔法を放とうし……なぜか途中でやめて、上を見上げた。他の魔族もだ。私たちも、それにつられて上空を見上げる。
(あれは……もしかして、隕石!?)
上空から大きな岩の塊が、ものすごい勢いで落ちてくる。知識として耳にいていた。しかし、写真で見たことすらないので確信は持てない。だがわかる。あれは脅威だ。
「こんなものが落ちたら、我々だけじゃない。余波で城下町は吹き飛んでしまう!」
騎士の嘆き、冒険者の絶望、そして、魔族すら……
「魔王様、まさか我々事吹き飛ばすおつもりですか!?」
全員が、もう駄目だと諦めていた……はずだった。
一人だけ、絶望に足を止めず……跳んだ。
「グランさん!?」
グランさんは……剣を構え、叫んだ。
「我流剛剣術・粉撃」
たった数舜で何度剣を振ったのだろうか。とにかくそれだけで、隕石は粉々になった。
「できるだけ細かくしたから、あとは自分で何とかしてくれ」
小さい石のつぶて程度ならなんとかできるだろうと、グランさんは語りかけた。そして……
「この隕石をやったのは……てめえかぁあああああ!!!!!」
上空の空気を蹴って、魔物の群れの最奥にたたずむ20mはありそうな象の魔物に向かって突進。
象の魔物は、その鼻をグランさんに向けて標準を合わせたあと、何かを飛ばした。
フンッ!!!
象が飛ばしたのは……人だった。……正確には、魔族とエルフの混血種、魔王ミラ、その人だった。
「我流剛剣術・突牙!」
「赤城流剛拳術・重勁拳」
グランさんの突きと、ミラの正拳が衝突し、その衝撃が離れているはずの私たちのもとまで飛んでくる。ミラは、私が知っていると気とは比べ物にならないほどまで強くなっていた。
新作より圧倒的にこっちを更新する方がPV多くて複雑な気分の作者です。




