第4話:『勇者の種』
「何あれ!?」
ミレイが叫ぶ。だが、気持ちは分かる。
あの黒い熊は異質だ。大きいのもそうだが、熊にしては威圧感がすごすぎる。
「あいつ、魔力がある!魔物だ!!」
!魔物か・・・だとしたら納得だ。魔物化する前から人をたやすく殺せる熊が魔物化でさらに強くなったら、この威圧感もうなづける。
「どうするの?」
レイラが指示をうながす。とりあえず、あの熊は一人で相手するのは無理だな。
「ミレイ・レイラは普通の熊を相手して!私とザックはあの黒熊をやる!」
「「「了解!」」」
ミレイ・レイラの二人はこれで大丈夫だ。動き回って熊を翻弄して魔法で攻撃のヒット&アウェイ。しかも、こちらに熊が寄ってこないように誘導してる。問題は私たちだが・・・
「うぉりゃぁぁ!」
ザックの剣は当たりはするものの、その硬い毛皮に阻まれる。そして、熊がその腕を横なぎに振る。しかも、ものすごく速い!
「グァァ!」
「ザック!」
ザックがぶっとばされた。見たところ、とっさに剣を盾にして防いだようだが、それでもダメージはあるみたいだ。しかも・・・
バキッ
剣が折れている。これでは戦えない。
「クソ!リーナ!少しそいつを足止めしてくれ」
「怪我は!?」
「大丈夫だ!すぐ戦えるようになる」
武器もない状態でどう戦うのかは不明だが、とりあえず言われたことをやるしかない!
「グオォォ」
「土魔法『アースバインド』」
「グヮ!?」
黒熊の足元の土が動いて拘束する。だけど、この調子じゃ長くはもたない。
「サンキューリーナ、行くぜ!ウォリャァァ」
ザックの剣が熊の右腕を切り裂く。
「ザック!その白い剣は何!?」
そう、ザックの剣は折れた部分の先に白い剣が生えていたのだ。
「魔力で作った。この白いのは魔力の塊だ」
思わず言葉を失う。魔力を武器に纏うならともかく、武器を作るなんて芸当、相当難易度が高いはずだ。それを私が熊を足止めしている数十秒に間でやってのけるなんて・・・
「けどこれ結構魔力を消費するんだ。今の技はあと一回ってとこだな」
「一日二回。燃費の悪い技ね」
「ああ、だからリーナはできるだけ熊を追い詰めてくれ、とどめは俺がさす」
「了解」
私は熊の前に立って、新しい技を発動する。
『身体強化・第二段階』
技を発動した瞬間、私の肌が赤くなって髪が少し逆立った。
身体強化・第二段階は、普通に魔力を纏う強化に加えて、水魔法で血液の流れを早くして身体能力を上げる技だ。そんなことをすれば、心臓や血管が破裂するが、その臓器も魔力で強化しているので問題ない。
加えて、雷魔法で脳の電波信号の伝達速度を速めての強化もついている。髪が逆立ったのはこれが原因だ。
そんな便利な技だが、これがメチャクチャ疲れる。あと、普通の『身体強化』は魔力を体内で纏って循環させることで消費魔力をゼロにしているが、これは属性魔法を使うから魔力を消費する。だから、そんなに長時間使える技じゃない。
この状態で『闇魔法』を使って脳のリミッターを100%まで解除した状態を『身体強化・第三段階』にするつもりだが、やったら確実に死ぬのでこの技の使用は永久に封印するつもりだ。
ちなみに、あとで知ったことなのだが、魔力を循環させる身体強化はCランク以上の冒険者になってやっと使えるような技で、ザックがやった魔力を武器にする技はBランクになって習得できるような難易度であるらしい。
この二人の規格がいさがうかがえる話である。
「おい!なんだその技!?」
「あとで教えてあげる」
そう言って黒熊に突っ込む。急な速度の変化に戸惑っているうちに熊に腹パン。
「グボァ」
それでも数メートル後ずさるだけだ。これをカインとかにやったら多分内臓がつぶれて死ぬと思うんだけど。
「ガァァァァァァァァァァ!!!!!」
どうやら怒ったらしい。咆哮が鼓膜に響く。それでひるんでる隙に黒熊は私に突っ込んでくる。しかも、さっきよりも断然速い!
「アアアアァァァァ」
「リーナ!」
黒熊の爪が私の腕を引き裂く。腕が斬られた。
痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイ!!!
とっさに『闇魔法』でアドレナリンの放出量を増加させる。少し痛みが和らいだ。そしてすぐに『炎魔法』で止血した。『水魔法』で止血したら魔力を持続的に消費知るから、節約のためにここは『炎魔法』のほうがいい。もちろん熱いが、今はアドレナリンが大量に放出されているからそれほど辛くはなかった。
「リーナ!腕が!」
「大丈夫・・・じゃないけどあとにして!残りの魔力を使ってあの熊の動きを止めるから、今度はちゃんと首を狙ってよ」
「・・・ああ!」
よし!じゃあ私も頑張りますか!
「氷魔法『アイスニードル』」
黒熊の周囲から何本もの氷の針が現れて、それは黒熊に突き刺さらず、黒熊を挟んで動きを封じている。
「これならそう簡単には抜け出せないはず。ザック」
「行くぜ!ウォラァァァァ!」
ザックの攻撃で黒熊は首を斬られた。そして・・・死んだ。
‹レベルが1から5へ上がりました。ステータス値が上昇しました。・・・条件を満たしました。個体名:リーナに『勇者の種』を植え付けます。・・・成功しました›
(『勇者の種』?何それ?てゆうか・・・もう・・・意識が・・・)
私は謎の脳内アナウンスの声を最後に、意識を失った。
ー????ー
「あは♪この感じ、また『勇者の種』が増えた。いったい今代はどんな勇者なのかな~♪まあ、殺すけど。アハハハハハ♪」
そう嗤うのは、勇者の敵で、魔族を束ねる、伝説の存在・・・・・魔王。
彼女は嗤う。己の願いが叶う日の夢を見て、勇者を殺す時を想像して、その嗤いは、止まらない。
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