工事
石を移して四日目に、工事が始まった。
朝の鐘が鳴ると、生け垣の切れ目のほうで音がしはじめた。つるはしが土に入る音。砂利を積んだ荷車の音。それから、重いもので地面を突く音が、同じ間をおいて続いた。
わたしは、音のしないほうへ歩いた。
東の門の脇まで来ると、音が少し遠くなった。門の脇の壁が、庭のほうの音をいくらか受け止めていた。壁の前の地面には、日が当たっていた。
母が、三日見に来ていたところである。
壁の下で横になった。地面は、もうあたたかかった。
昼前に、母が来た。壁に手のひらを当てて、しばらくそうしていた。それから、戻っていった。
*
東の門の脇からは、道の線が端まで見える。
いちばん向こう、生け垣の切れ目の近くに、石が一つ置いてあった。あの石である。日が当たっていた。そのまわりで、人が動いていた。つるはしの音は、そこからしていた。
わたしは、目を閉じた。
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昼になると、壁の前から日が引いていく。影が、足のほうから上がってくる。
わたしは、母屋の裏を回って、北の馬屋へ行った。
馬屋には、工事の音がほとんど届かない。壁ぎわに、干し草の束が積んである。いちばん上の束が、いちばんあたたかかった。そこに乗った。
マルクが、熊手を持って入ってきた。わたしの乗っている束を見た。熊手を持ったまま、しばらく立っていた。
それから、隣の束から干し草を取りはじめた。
隣の束は、崩されたところがふかふかしていた。わたしは、そちらへ移った。
マルクは、熊手を止めた。わたしを見た。もとの束を見た。
もとの束から、干し草を取った。
*
次の朝は、鐘の前から東の門の脇にいた。
砂利の荷車は、東の門から入ってくる。テシエは、それを見に来た。門の脇にわたしがいるのを見ると、帳面を見たまま言った。
「今日は、切れ目から四十歩のところまでです。昼に一度、止めます」
「うん」
テシエは、荷車のほうへ行った。
それからは、毎朝そうだった。
*
何日かすると、つるはしの音は、道の線の半分あたりまで来ていた。
ある日の昼、壁の前から日が引きかけたところで、音が止まった。昼休みである。
テシエは門のところで、砂利の荷車を見ていた。ベルトが、そこへスープを持ってきた。
音のなくなった庭の向こうで、生け垣の切れ目の近くの石に、何かが乗った。茶色くて、片耳が欠けている。
あいつだった。
ベルトは、スープの椀を持ったまま、そちらを見た。
「乗ってるのは、茶色いほうだね」
テシエは、石のほうを見た。それから、門の脇のわたしを見た。何も言わなかった。
ベルトは、テシエに椀を渡した。
わたしは起きて、母屋の裏を回り、馬屋へ行った。壁の前の日が、もう足のところまで引いていた。
*
馬屋の干し草の上にいると、ピエールが水桶を持って入ってきた。
「新しい石、今朝もいなかったって。ベルトさんが」
「馬屋だよ」とマルクが言った。熊手は止めなかった。
ピエールは、馬屋の中を見回した。干し草の上で目が止まった。
「……ほんとだ」
ピエールは、水桶を置いて出ていった。
*
最後の数日、音は東の門のすぐ手前まで来た。
その前の日の夕方、テシエが馬屋に来た。入口に立って、帳面を見たまま言った。
「明日から、東の門の手前です。三日かかります」
「うん」
テシエは、何も書かずに戻っていった。
次の朝は、東の門の脇には行かなかった。鐘の前から馬屋にいた。朝の干し草は、昼すぎほどはあたたかくなかった。音は遠かった。
マルクが、熊手を持って入ってきた。わたしを見た。それから、黙って隣の束から取りはじめた。
わたしは、そちらへ移った。
崩したばかりの干し草は、日の匂いがした。




