↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
34/34

一時間

工事が終わった日の夕方、テシエが馬屋に来た。

 入口に立って、帳面を見たまま言った。

「工事は済みました。明日からは、こちらには参りません」

「うん」

 テシエは、帳面を閉じた。それから、戻っていった。

 次の日、ギヨームが道に沿って生け垣を植えはじめた。苗木を一本植えるたびに、土を足で踏んでいた。

*

 その次の朝は、まだ暗いうちから東の門の脇にいた。

 壁の前の地面に、日が来た。

 生け垣の切れ目のほうから、荷車の音がした。トマの荷車の音である。新しい道の上では、車輪の音が前より低かった。

 荷車は、道の線を通って、こちらへ来た。石の脇を通り、わたしの前を通った。トマが、帽子を取った。

 荷台には、壺と、空き袋が載っていた。

 茶色いのは、いなかった。

 荷車は、東の門を抜けて、町のほうへ行った。

 道の向こうを見た。生け垣の切れ目の近くの石の上に、茶色いものが乗っていた。

 あいつがいた。

 わたしは起きて、そちらへ行った。

 新しい道は、突き固めてあって、足の裏に砂利の角が少し当たった。道の端から、十二歩入った。

 石に乗った。日が当たっていて、あたたかかった。あいつの横に寝た。背中がくっついた。

 朝の鐘が鳴った。つるはしの音は、しなかった。

*

 昼前に、リゼットが来た。杯を一つと、小皿を一枚持っていた。杯をわたしの前に、小皿をあいつの前に置いた。どちらにも、乳が入っていた。

 リゼットは、何も言わずに戻っていった。

 昼になっても、日は石から引かなかった。

 あいつは、ときどき耳を動かした。わたしは、ときどき目を開けた。

 昼すぎに、母が生け垣の切れ目のあたりまで来た。こちらを見て、それから空を見た。戻っていった。

 ギヨームが、少し離れたところで、生け垣の苗を植えていた。こちらは見なかった。

*

 夕方、東の門のほうから荷車の音がした。

 石の上からは、道の線が端まで見える。東の門を入ってくる荷車が、遠くから見えた。だんだん大きくなった。

 荷車は、石の脇まで来て、少し遅くなった。

 ギヨームが、苗を植える手を止めた。

「どうだった」

「一時間だった」とトマが言った。

「そうか」

 ギヨームは、また苗を植えはじめた。

 あいつが、起きた。石を降りて、荷台に飛び乗った。空き袋の上で、丸くなった。

 荷車は、生け垣の切れ目を抜けて、村のほうへ帰っていった。

 わたしは、石の上に残った。

 背中のところが、まだあたたかかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。