日当たり
郡から返事が来たのは、期日の四日後だった。移す日は十日先、始めるのは朝の鐘のあと、と決まった。
その日の午後、南の石の上で寝ていると、人が集まってきた。父と、母と、テシエと、リゼットだった。ジュベールが、母のための椅子を持ってきた。母は座らなかった。
テシエが、帳面を開いた。
「移す先の条件を申し上げます。決めるのは、旦那様と奥様です」
父がうなずいた。
「荷車が入れるのは、これまでどおり東の門の脇までです。そこから先は、丸太に載せて転がします。道の線の上は、杭のあいだの草を刈ってありますので、線に沿った側なら転がせます。線から離れて庭の奥へ入るほど、手間がかかります」
テシエは、南の生け垣の切れ目から東の門のほうへ、まっすぐに腕を動かした。新しい道は、生け垣の切れ目から庭に入って、いまの石のところを通り、東の門へ抜ける。わたしの寝ているところも、その腕の下にあった。
「道の端からは、十歩離してください。荷車の車輪が、泥をはねます。それから、東の門の手前のあの低いところは、雨のあと水が残ります。石を置くと、石の下に水がたまります」
「十歩か」と父が言った。
「十歩です。十二歩なら、泥は届きません」
*
母が、生け垣のほうを見た。
「生け垣の切れ目の近く、道の西側は、朝から夕方まで日が当たります。梨の木の下は、昼すぎから陰になります」
テシエは、帳面に書いた。
「いつ、確かめられましたか」
「返事を出す前の三日間に」と母は言った。
東の門の脇を見に行っていた三日である。母は、門の脇だけを見ていたのではなかったらしい。
*
テシエは、リゼットを見た。
「道ができると、人が通ります。いま、南の生け垣の外の小道を通るのは、どなたですか」
リゼットは、少し考えてから言った。
「朝いちばんに、トマさんの荷車です。それから、郵便の馬が一頭。昼前に、畑へ行く人が三人。夕方に、同じ三人が帰ってきます。日曜の朝は、教会へ行く人が、だいたい十人です」
テシエは、それも書いた。書くのが追いつかなくて、一度、手を止めた。
「お嬢様は、そのころ、どちらに」
「朝は、厨房の食器棚の上です。昼は、日の当たるところです」
「夕方は」
「日の当たるところです」
テシエは、帳面を見て、それから書いた。
リゼットは、生け垣の切れ目のほうを見た。
「あそこからだと、生け垣の切れ目から帰ってくる人が、遠くから見えます」
テシエは、ペンを止めた。何か言うかと思ったが、言わなかった。
*
「見えるぶん、音もします」と母が言った。「車輪の音も、知らない人の足音も」
「道ができれば、荷車は一日に何台も通ります」とテシエが言った。「いまの、トマの一台ではなくなります」
父は、生け垣の切れ目と、梨の木の下と、いまの石とを、順に見た。
「梨の木の下なら、静かだな」
「昼すぎから陰です」と母が言った。
「切れ目なら、日は長い」
「音がします」
父は、しばらく黙っていた。母も黙っていた。
わたしは、目を閉じていた。石は、背中の下であたたかかった。
「切れ目の近くの、道の端から十二歩内側だ」と父が言った。
「そうしましょう」と母が言った。「道に沿って、生け垣を植え足してもらいましょう。目隠しにもなりますし、音も少しは和らぎます」
「ギヨームに言っておく」
テシエは、帳面を閉じた。
「承知しました。印をつけます」
*
テシエは、道の線の西の端から、庭の内側へ十二歩、歩幅で測った。生け垣の切れ目から、少し入ったあたりだった。そこに、杭を一本打った。
杭を打つ音がした。三回だった。
リゼットが、杭の根元を見に行った。それから戻ってきて、わたしの横に立った。
「お嬢様。あそこに、なるそうです」
「うん」
リゼットは、それ以上は言わなかった。
*
夕方になった。
日が西へ回って、石の西側だけがあたたかくなった。わたしは、そちらへ寄った。
生け垣の切れ目の内側で、杭が一本、まだ日の中に立っていた。
わたしは、石の上で寝ていた。




