期日
テシエが比べた紙を持ってきた日から、期日までの三日、母は東の門の脇を見に行った。
最初の日は、昼前から曇っていた。
二日目は、朝に行き、昼に行き、昼すぎにも行った。石の上から見ていると、母は門の脇の壁に手のひらを当てて、しばらくそうしていた。それから、地面に落ちた影の端を見て、戻っていった。
三日目も、同じように行った。昼すぎには日傘をたたんで、壁の前に立ったまま長くいた。
三日目の夕方、父の書斎の窓の下で寝ていると、母の声がした。
「東の門の脇は、昼までしか日が当たりません」
「そうか」と父は言った。
母は、それだけ言って書斎を出ていった。
*
次の朝、テシエが書斎に来た。期日の朝だった。
「まっすぐで出してくれ」と父は言った。「石はこちらで移す。移す先も、こちらで決める」
「承知しました」とテシエは言った。「郡には、今日のうちに出します。移す日は、郡から返事が来しだいお知らせします」
「頼む」
テシエは、それで出ていった。
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昼前、南の石の上にいると、ベルトがスープを持って庭に出てきた。テシエの分だった。
父が、書斎のほうから歩いてきた。ベルトの前で止まった。
「ベルト。まっすぐで出した。石は、移す」
ベルトは、スープの椀を持ったまま聞いていた。
「そうかい」
ベルトはそれから、スープをテシエのところへ持っていった。
父は、石のところへ来た。わたしの横に立った。
「オデット」
「うん」
「この石は、動かす」
「うん」
聞いたからである。
父は、少しのあいだそこに立っていた。それから、屋敷のほうへ戻っていった。
昼すぎに、ベルトはテシエに二杯目のスープを持ってきた。夕方には三杯目を持ってきた。
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午後、テシエが石の近くに人を集めた。
「移す日の段取りを決めます。力仕事に、八人要ります」
集まった人は、それぞれ、自分にできることを言った。
リゼットは、助手の足もとに置いてあった綱を、両手で持ち上げた。
「わたし、綱を持ちます」
ベルトは、前掛けで手を拭いた。
「わたしは昼をこしらえるよ。八人分と、見てる人の分」
ジュベールは、テシエの横に立った。
「人の配置は、わたくしが指図いたしましょう」
そう言いながら、ジュベールは上着を脱いでいた。脱いだ上着を、きちんと畳んで腕にかけていた。袖も、もう二つ折りにしてあった。
ギヨームとピエールと馬屋の若いのが、黙って前へ出た。
テシエは、帳面を開いて、名乗り出た人を一人ずつ見た。
「綱を持つ人が、リゼットさん。昼の支度が、ベルトさん。指図が、ジュベールさん。運ぶほうに、ギヨームさん、ピエールさん。それから」
テシエは、馬屋の若いのを見た。
「マルクさん」
馬屋の若いのは、少し間を置いてから、
「……おれです」
と言った。運ぶ者として名を呼ばれるとは、思っていなかったらしい。
テシエは帳面に目を戻した。
「運ぶのは、助手が三人。ギヨームさん、ピエールさん、マルクさんで六人。あとの二人は、南の村から出してもらいます。トマに頼みます」
ベルトが、少し首をかしげた。
「わたしは、数に入ってないね」
「入っていません。ベルトさんは昼の支度です。八人が食べないと、半日もちません」
「そうかい」
ジュベールは、腕にかけた上着を見下ろした。
「ジュベールさんは、指図をお願いします」とテシエは言った。「八人の外から見ている人が、一人要ります」
ジュベールは、上着を腕にかけたまま、うなずいた。袖は、二つ折りのままだった。
リゼットは、まだ綱を持っていた。
「綱は、重いです」とテシエは言った。「リゼットさんには、別のことをお願いします。移す日の朝、作業が始まる前に、お嬢様を別のところへご案内してください」
リゼットは、綱を下ろした。
「……どこへですか」
「それは、わたしより、リゼットさんのほうがご存じです」
リゼットは、しばらく考えていた。それから、わたしのほうを見た。わたしは目を閉じていた。
*
次の朝、トマが乳を届けに来た。マノンが裏口で、まっすぐで決まったこと、石は屋敷が移すこと、移す日に村から二人出してほしいことを伝えた。
その次の朝、マノンが村の話を運んできた。
村では、旦那様がまっすぐに決められて、石はお屋敷のほうで移される、と言われているそうである。人手は、トマと、村の若いのがもう一人出るそうである。
マノンは、それ以上何も付け足さなかった。
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昼、南の石の上で寝た。
動かす、と言われた石は、昨日と同じあたたかさだった。




