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第七話 自己紹介

 勇者学園の教室には、レオンも含め三十名の生徒が集まっていた。

 種族も、年齢も、性別も、身分も多種多様だ。


 レオンのクラスは一組。

 各学年、一組から五組まであり、入試試験の成績が高い者から順にクラス分けされる。


(俺は一組か、まあ首席合格なんだから当然だな)


 クラス分けは学年が上がる度にされるので、成績が悪ければ下がる。

 しかし、他のクラスからすれば、頑張って結果を残せば上に行けるチャンスでもある。

 素行が悪ければ退学もありえるという話だが、世界を救う勇者になりたいとこの学園に入学してきた生徒が、そんなことをするはずがないだろうとレオンは思っていた。


 先生が教室に入ってくる。

 人族の男性で年齢は三十代ぐらい、長い青髪、眼鏡をかけている。


「一組を担任することになった、ユバ・ティーゲンです。よろしくお願いします」


 ユバ先生が一礼すると、生徒一同席を立ち一礼する。


「よろしくお願いします!」


 ユバ先生はニコリと頷く。


「みなさん、元気でよろしいですね。着席して下さい」


 席に座る。


「さて、みなさんご存知の通り、今日から世界を救う勇者になるべく、学問、武術、魔法など幅広く学んでいただくことになります」


 ユバ先生が生徒たちの顔を確認するように見渡す。


「まずは、共に学ぶ学友に自己紹介をいたしましょうか、誰からにしましょう……」


 レオンはすかさず手を挙げた。


「レオン君ですか、それでは前に出て自己紹介して下さい」

「はい!」


 席を立ち、教壇の前に移動する。


「私の名はレオン・サンライト、十三歳です。プロミネンス王国から来ました」


 教室内がざわめく。


「レオン・サンライト、新入生代表で挨拶していたな」

「あれが神童と言われている」

「綺麗……」


 レオンは教室内を見渡す。


「世界各国から、勇者になるべく入学された優秀なみなさんと学べることを誇りに思います。私も立派な勇者になるべく、この学園で多くのことを学ぶ所存です。よろしくお願いします!」


 拍手する生徒の中には、うっとりとした表情でレオンを眺めている女生徒もいる。

 レオンはゆっくりと自分の席へと戻った。


 他の生徒も、次々と前に出て自己紹介をする。

 レオン以外に、特に目立つ生徒は三人いた。


 銀髪縦ロールの少女が、教壇の前に出る。

 レオンに負けず劣らずの美しい顔立ち、立ち居振る舞いは上品で、育ちの良さが伺える。

 男生徒の中からは感嘆のため息が漏れる。


「私の名はミレア・スカーレット、十四歳。出身はファルベール王国です」


(スカーレット、聞いたことがある。たしかファルベール王国の公爵家のはずだ)


 レオンは同学年で家柄は最高位だと思っていたが、公爵家は貴族の中で最高位、レオンの伯爵家は第三位、上には上がいた。

 凛とした所作は気高さを感じられる。

 男女の違いはあるが、レオンが人に愛される親しみやすい美形とするなら、ミレアは畏敬の念を抱かせる美形といったところだ。


 次に気になった生徒は、赤髪の少年だ。

 制服のブレザー越しでも、鍛えられた肉体であることが分かる。

 彼は強い、一目でそう思えた。


「僕の名はカイル、十三歳です。リューネ村から来ました」


(リューネ村、ハルストム王国にある村だな。村の近くの森に魔物が住み着いていて退治されたと聞いたが、まさかこの男が?)


 そう考えかけたところで、思い直す。


(いや、魔物が退治されたのは三年前のはずだ。当時カイル君は俺と同じ十歳、そんなことはないか)


 最後は、背の低い緑髪の幼い容貌の少年、耳が長い。

 初めて見るが、妖精族だろう。


「儂の名はコロロン、五十歳。西大陸にある妖精の国、セントウッドから来ました」


 教室内が凍りついた。

 どう見ても七、八歳ぐらいにしか見えない少年が、自分は五十歳であると言い出したのだ。


(いや、妖精族は長寿だと聞く。ひょっとしたら、五十歳でも若いのかもしれない)


 西大陸は妖精王の結界で外界と閉ざされている。

 会うことができるのは、他の大陸に興味本位でやって来た変わり者だけだ。

 新入生代表挨拶で登壇したときに見渡した限りでは、この学年……いや、この学校で唯一の妖精族だろう。


「特技は魔法だけど、儂に魔法のことを聞きに来ても参考にならないだろうから、聞きに来ないでね」


 少し失礼な物言いだが事実だ、人族と妖精族では魔法の発動条件が違う。

 人族が詠唱して体内の魔力を練り上げ、呪文を唱えて魔法を発動させるのに対し、妖精族は呪文を唱えるだけで魔法が発動する。

 人族が詠唱なしで魔法を発動することが理解できないように、妖精族も魔法の発動に詠唱が必要なことが理解できないだろう。


 生徒全員が自己紹介を終え、席に着く。

 ユバ先生が教壇に立ち、生徒を見回す。


「みなさん自己紹介で理解できたと思いますが、勇者学園は、種族も年齢も様々な方たちが集まっています」


 生徒たちは、真剣な眼差しでユバ先生を見つめる。


「身分の差もあるでしょうが、この学園では皆同じ生徒です。これからの学園生活、楽しいことも、辛いこともあると思いますが、クラス一丸となって勇者となるべく励みましょう」

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