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無能力者の人生オールベット  作者: 織田マコト
幼少期編

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12/14

【領域支配VS木刀】

教会から数キロ離れた荒野。

風もなく、音すら沈んだ静寂の中で、フレヤとオスカーは向かい合っていた。


オスカーが静かに口を開く。

「そのまま木刀で戦うおつもりですか?」


フレヤは肩に木刀を担いだまま答える。

「お前にはそれで十分だ」


「後悔しても知りませんよ。私のユニティー——剣界展開ブレード・ドメインは回避不可能です」


「なら試せ」


瞬間、視界そのものに無数の刃が重ねられる。

それは“動作が成立する前に刃が生じる世界”。


だがフレヤは動かない。

彼女は0.1秒を切り取り、その中の一点だけを潰す。

最小限の踏み込みと同時に身体を捻る。

木刀が振り抜かれ、刃は消える。


「遅い」

オスカーの目が細まる。

次の刃が死角から走る。


しかしフレヤは見ていない。

見ているのは“成立する直前”だけだ。

それを潰す。

回転と同時に木刀が走り、剣は消える。


「……攻撃ではない。成立そのものが消えているのか」

オスカーは踏み込む。


刃と木が交差する。

本来なら折れるはずの木刀は、成立した瞬間だけ軌道を外す。


「時間ではない……存在の否定か」

オスカーは逆手に持ち替え、切り上げる。


同時に視界全域へ刃を展開する。

剣域千重けんいきせんえ

それは“観測されたあらゆる可能な動作に刃が発生する領域”。


動けば死ぬ。

考えた時点で死ぬ。


フレヤは初めて深く構える。

そして——

踏み込みと同時に、成立しようとする無数の可能性を切り取る。

剣はそこに追従できない。


「……なぜ届かない」


オスカーが踏み込む。

最後の一撃。


だがその瞬間、フレヤはほんのわずかに“成立の0.1秒先”から外れた。

その一歩で、攻撃は消える。


拳は空白に沈む。

その瞬間、オスカーの領域は完全に崩壊した。

“成立する可能性がすべて消えた世界”。


そこにはもう、攻撃は存在しない。

だから最後に残ったのは、ただ一つの動作だけだった。

フレヤの木刀が、静かに振り抜かれる。

乾いた音が荒野に落ちる。


勝敗は、その一撃で確定した。

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