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クラスメイトの箱入りお嬢様が、私の百合ラノベのネタになるまで!  作者: 沢谷 暖日
第3章 月江雫という女の子

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第42話 雫ちゃんの言及

 煌々と明かりの灯る廊下。

 雫ちゃんは、淡い桜色のもこもことしたパジャマ姿で、ぺたんと座り込んだまま上目遣いに私を見上げていた。彼女の白い肌は、耳の先から首筋にかけてほんのりと赤い。

 姉の梓さんによく似た、誰もが振り返るような整った顔立ち。

 そんな少女と、互いに時が止まったように見つめ合っていた。


「…………」


 この状況、客観的に見れば多分、どちらも不利な立場。

 扉に張り付いて盗み聞きしていた妹と、友達の部屋でえっちなことをしていた女。

 とはいえ、私から気の利いた言い訳ができる気など全くしない。

 ならばここは、先手必勝で──!


「もしかして、聞き耳立ててたよね?」

「……もしかしなくとも、えっちなことしてましたよね」


 やばい。不利度のレベル差がありすぎる。

 氷のように冷ややかな声に、私は言い合いで勝てないと察す。

 頑張って誤魔化そうと脳を回転させるが、次の一手で完全に詰まされた。


「お姉様の声が漏れてました。あんな……破廉恥な声……っ」


 雫ちゃんはパジャマの胸元をぎゅっと掴み、顔を真っ赤にして私を睨みつける。


「……死ね」

「え、死ね?」


 真っすぐに罵倒されてしまった。

 お上品な雰囲気から放たれるシンプルな罵倒に思わず気圧される。

 次いで雫ちゃんは軽蔑の眼差しを向けて追撃してきた。


「……好きだからって、こんな破廉恥なこと! あり得ないです!」

「いや、私たちは友達で……」

「え? 好きでもない相手と、ああいうことするんですか……」

「いや、そういうことではなくて……」

「え? 好きかも分からないのに、ああいうことするんですか……」

「その、なんだろう。これちょっと難しくて」

「え……え……? えぇ……?」


 ドン引きである。

 完全に汚物を見る目だった。

 小説の取材とも言えないし……ほんとに説明が難しいのだ。

 しかし、これ以上の言及はどうあがいても避けたい。

 ボロが出る前に、ここはひとまず撤退しよう。


「ごめん、ちょっとシャワーだけ借りるね……!」


 と。私は雫ちゃんの冷酷な視線から逃げるように、脱衣所へと駆け込んだ。


 ◆◆◆


 ──のだけど。


「どうしてここまで付いてきてるのでしょうか……」


 正面にある曇った鏡には、私の後方にバスチェアを置いて座る雫ちゃんの姿。

 当然、二人とも生まれたままの姿である。同じ空間で全裸で並んでいるなんて、普通なら羞恥心で死にそうになるシチュだが、梓さんとのあれこれで完全にマヒしている。

 年下なのもあるだろうけど、意外と何も感じないものだった。


「まだ大事なこと何も聞き出してないからです! 正直に話してくれるまで、今夜は絶対に寝かせませんからね!」


 シャワーの音を掻き消すような、トゲのある雫ちゃんの声が響く。

 そして「そもそも!」と、私の耳元で二の句を継いだ。


「お風呂上がりに、なぜ制服を着ていたのでしょうか?」


 ……見逃されてなかった。

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