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クラスメイトの箱入りお嬢様が、私の百合ラノベのネタになるまで!  作者: 沢谷 暖日
第2章 御船穂乃果という女の子

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第23話 身バレの危機!

 帰宅し、お風呂も済ませた夜の十一時。

 私は自室のベッドに転がりながら、天井をぼけーっと見つめていた。


「……何も、降ってこない」


 新ヒロインのアイデア出しのため、夕食後からずっとベッドで漫画を読んだりアニメを見漁ったりしていたんだけど結局、いいアイデアは降りてこない。

 まずい。ここでまたスランプなんて笑えない。

 よし、こういう時は──!


「…………」


 私はごろんと寝返って、机上のスマホに手を伸ばす。

 そしてツイッターを開き、検索窓に自分のペンネームや作品名を入力した。

 そう、エゴサである。たまに酷評もされているけど、わざわざ感想を書いてくれる人にはいい人が多い。モチベが上がらない時は、自己肯定感を上げるに限るからね……!


『佐倉わか先生の新作楽しみだな~』

『カナリアの毒って中学生が書いたんだ。心理描写が子供が書いたとは思えなかった』

『落ちこぼれ貧乏貴族、三巻のラストの花火のシーンがアツすぎる!』


 ……ふへへ。

 私の書いた作品は、多からず誰かに刺さっている。

 その事実に頬が緩みながら、私は右下にある通知欄をタップした。

 DM。ダイレクトメッセージが届いているかのチェックである。

 少し前までは変なアカウントからのDMばかりで放置していたのだけれど、もしかしたら純粋なファンからの熱いメッセージが埋もれているかもしれない!

 淡い期待を抱きながら受信箱を開くと──。


「……へ?」


 案の定、変なメッセージが数件。

 だが、普通のメッセージも届いており。

 一番上、数日前に届いていたメッセージに私は目を奪われた。


『あれ、この写真。私の通う学校にそっくり』


 …………ん?

 反射的にそのメッセージを開く。

 と、その下に更にメッセージが続いていた。


『急にすみません! 私、佐倉先生のファンで!』

『この背景に見切れてるレンガの壁と緑の窓枠が、鶴ケ崎高校っぽいなって!』

『いえ、ごめんなさい! こういうDMはあまりよくないと思ってたんですけど、私どうしても気になってしまって!』


 ……な。なな。な──。


「なんだこのDM!」


 思わず声に出た。

 全身の血の気が、ざあっと引いていく音がする。

 鶴ケ崎高校。通称、鶴高。それは……私の通っている高校だった。

 慌てて自分の過去の投稿を遡ると、水族館デート前日に上げた写真に学校の壁が映り込んでいる。私としては空の写真を上げたつもりだったので、これは大やらかし……。

 やばい、私特定されかけてる。しかも同じ学校の生徒に……。

 もしかしなくてもこれ、かなりまずいのでは?


「ど、どうしよ──ってあれ?」


 パニックになりかけた私の目に、ふとそのアカウントのアイコンが飛び込んできた。

 淡い水彩タッチで描かれた、夕焼け空と海のすごく綺麗な風景画のアイコン。

 そしてユーザー名は『美鳥(みとり)』。

 その名前とアイコンは、とても馴染みがあるものだった。


「このひと……」


 間違いない。

 私が前作『落ち込ぼれ貧乏貴族』を連載していた頃から、ずっと熱心にリプライや長文の感想を呟いてくれていた、私のファンのアカウントだった。

 私は、一度感想を呟いてくれた人のことはほとんど認知している。

 認知しているどころか、定期的にプロフィールや投稿を覗きに行って、今の趣味嗜好を把握しているほどだ。足跡は付けずに。(重度のネトスト)

 そのため、この美鳥さんについても、どういう人間なのかは理解していた。

 彼──或いは彼女は、私と同じ高校生であるのは間違いない。

 そして小説投稿サイトに作品を投稿している、私と同じ物書きでもある。

 内容は異世界を舞台にした百合モノで、僭越ながら私の作品から少し影響を受けているような気配も感じていて──って、今はそんなことを考えている場合ではない!

 私にとって大切な読者であるのは間違いないんだけど……こうなってくると話は変わってくる!


「どうしようか……」


 一応、返信した方がいいよね。

 これで無視して、私の個人情報がバラまかれたらたまったもんじゃない!

 ここは波風立てないよう、落ち着いて、冷静に返信を──。


『はじめまして! いつも温かい感想ありがとうございます! えっと鶴ケ崎高校、ですか? いえ、たまたま似たような場所で写真を撮っただけだと思いますよ!(汗)』


 よし、多分これでいけるだろう!

 送信ボタンを押すと、すぐに既読がつき返信がきた。


『わ、返信ありがとうございます!』

『あ、高校の件ですが誤魔化さなくても大丈夫です!』

『実はあの写真だけじゃなくて、過去に先生がアップした執筆中の画像の端に、鶴高指定のノートの表紙が数ミリだけ写っていたりとか……』

『あと「今日の学食のB定食、売り切れるの早すぎ!」って呟いていた日、鶴高のB定食が一番人気のから揚げだった日が完全に一致していたりして……』

『他にもちょっとした写りこみとか、ツイートの言い回しとかで、多分鶴高の生徒さんなんじゃないかなって証拠がいくつかあって……でも!』

『決して脅したいわけじゃないんです!』


 ……くそ。相手もネトストだった。

 震える手でスマホを見つめていると、さらに長文が送られてくる。


『私、本当に佐倉先生の作品が大好きで、大ファンなんです!』

『私も趣味で小説を書いていて……もしよければ、一度オフ会というか、直接お会いしてお話を聞かせてもらえませんか? 失礼なことを言ってるのは承知の上です!』


「お、オフ会!?」


 ベッドの上で変な声が出た。

 ネットのファンと現実で会う?

 いくらなんでも急展開すぎないだろうか……。私が書く小説だったら、ここは絶対にもう一つくらいワンクッションのイベントを挟むぞ。

 いやまぁこの書き方だと、同じ物書きとして私の話を聞きたいだけなのだろうけど。

 確かに作家同士のオフ会はよく耳にする。私が陽キャであれば快諾するのだろうけど、こっちは筋金入りの陰キャ。オフ会をしたとて、まともに話せる気がしない。

 ──というのは半分建前。

 本当の理由は別のところにある。

 なぜなら私は、ツイッターでは陽キャきらきらJK百合作家で運営をしているのだ。

 現実の私を見てみろ! 中学時代はろくに学校にも行かず、修学旅行も、体育祭も、すべて自室のベッドの上で妄想し、ツイッターをぽちぽちしていたような人間だぞ!

 相手はきっと『佐倉わか』を、神々しいものとして思い描いているに違いない。

 現実の来栖若菜に実際に会ったら、百パー幻滅されるに決まっている!

 私は読者の夢を壊さない! 壊してはいけない!


「よし……!」


 私は焦る指先で、爆速でフリック入力をした。


『お気持ちは本当にすっごく嬉しいです! でもごめんなさい!』

『私、まだ高校生なので、あまりそういうオフ会などは一切やらない方針にしていて……! 本当にごめんなさい!』


 送信!

 大切なファンからの誘いを断ってしまった罪悪感はあるけれど、余計なことに巻き込まれないことと、身バレして現実の私を知られるよりかは遥かにマシな選択だろう……!


『分かりました! 無理を言ってしまってすみません! これからも応援してます!』


 数分後、美鳥さんからそんな返信が届いた。

 どうやら納得してくれたらしい。

 私はホッと息を吐いて、枕元にスマホを放り投げた。


「はぁ……今日も、激動の一日だった……」


 朝はなんとなく気まずい月江さんと会って。

 放課後は穂乃果と秘密のカフェを共有し。

 夜は同校のファンに身バレの危機……。


「……ん?」


 って……待てよ?

 文字にすると当たり前のことなんだけど。

 私の通う鶴高に、今やり取りした美鳥さんがリアルに存在している……ってこと!?

 学年は分からない。顔も名前も分からない。分からない……でも。

 私の投稿もかなり細かく見ているほどの観察眼を持っている人間だ。

 私がボロを出せば、正体を暴かれ、平穏な学校生活は終わりを告げるかもしれない。


 明日からマジで気を付けて行動をしていかないと……!

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